遊び仲間
私はいつもみんなと遊ぶ広場にきた。
「カナタ、今日はちょっと遅かったな。」
幼馴染のアルス、
金髪で同じ5歳。
『ごめんねー、ラルフおじさんにつかまってたし、
メアリおばさんが来てたから。』
「そうだよ、カナタのお家は忙しいんだから。」
私の肩を持って後ろから顔を出したのは、
私とアルスの一個お姉さんのシナモン
聖女の家系でちょっとした回復魔法なら扱える
私たちの頼もしいおねえちゃん。
大体私達は何をするにしてもこの三人でつるんでいる。
この二人は、私が冒険者をやりたいというのを、
笑い飛ばさずに真剣に聞いてくれる数少ない理解者だったりする。
大抵は、女が何いってるんだーとか、
まだガキじゃねーかとかで相手にさえしてくれない。
それでも私にとってはいい友達なのだ。
今日はみんなで固まって何かをカチャカチャ動かしている。
色のついた9マスで一面のキューブ型のパズル、
あれはルービックキューブか。
「おー カナタ来たか。」
『うん、来た来た。で、なんでルービックキューブ?』
ルービックキューブは一人一人あるらしい、
私達三人にも持たされた。
もうすでに崩されている。
「誰が一番早く揃えられるか勝負な!」
このルービックキューブは一面は簡単、
二面もそこそこなんだけど、
三面、四面、五面は無理でしょう。
六面はここにいる皆には難しくて無理じゃないかな?
私はこういうの得意だけどね。
「何面そろえるんだ?」
「一面だよ。」
やっぱ一面なんだ……
ま、そうだよね……
「じゃぁ、始めるぜ!
よーい…… どん!」
みんなカチャカチャ回し始める。
私は一生懸命そろえようと頑張る
みんなの邪魔をしないように静かにまわす。
そして六面そろえて静かにテーブルに置く。
「よっしゃ! いちばーん!」
勢いよくバンとキューブをおく、
私はぱちぱちと手を叩く。
「さすが俺、どんなもんだ いーーーーーーーーー!」
そこで私が六面そろえてすでに終わってることに気づく
「おいちょっとカナタ、お前なにかズルしただろ?」
私は首を横にふる。
何という言いがかりなんだろう?
今に始まったことじゃないんだけど。
「だったら今からやって見せろよ。」
『いいよ。』
私はキューブを受け取る、
さっき揃えられてた一面はきっちり崩されている。
「じゃぁ、よーい…… どん!」
私はさっきと同じように
カチャカチャと素早くくみ上げる。
そして直ぐに六面を完成させて、
目の前に置く。
「ぐぬぅ……」
この子は自分が一番でありたいと考える、
男の子の中では典型的なガキ大将タイプ。
喧嘩っ早くて乱暴者だし、
よく男の子同士で喧嘩しては泣かせている。
が、いろいろと面倒見がいい、
いいお兄ちゃんもやれている。
「ま、まぁ、俺にかかればこんなの朝飯前だな。」
『一面そろえるのに結構じかんかかったよね?』
「いいんだよ!」
何がいいのかわからないけどいいことにしとこう……
もし私が男の子だったら一発殴られてただろうなぁ……
いつものメンバーでいつものようにつるんでいる、
ほのぼのとした日常、
何も代り映えしないはずなのに、
ふと市街地の方が気になった。
「どうしたんだ? カナタ?」
いつもと違う私の雰囲気に気づいたのか
アルスが心配して声をかけてくれた。
『なんていうか、妙な胸騒ぎがするんだよね……』
じーっと見つめていても何もおきない、
気のせいだったかも?
『ごめん、なんていうか…… 気のせい……』
言葉が終わらないうちに、
さっき見ていた市街地の方から爆音が響いてきた。
私たちは驚いて市街地の方を見てみると、
土煙がもうもうと立ち上がっていた。
気のせいなんかじゃなかった……
『みんな、屋敷に避難して!
そしてこのことをラルフおじさんとメアリおばさんに伝えて!』
「おい、お前はどうするんだよ!」
『私は時間稼ぎをする。
どこまでできるかわからないけど……』
みんなが動揺する。
『さ、早く避難を!』
「俺も一緒にいく!」
そういったのはアルスだった。
『何を行ってるの! 危ないよ!』
「そんなのカナタだって同じだろ?
カナタを危ない目に合わせて
自分だけのうのうと安全なところに避難できるかよ!」
『…………』
「痛いのはジェインに殴られてて慣れている!」
私は市街地で何かが暴れていると直感で思った。
だから屋敷にいる勇者パーティーだった二人に、
このことを伝えるべきだと思って、
男の子達に伝言を頼んだ。
そして、自分が何とかして時間稼ぎをして、
街への被害を抑えようと考えていたんだけど。
アルスは私のそんな考えを感じ取ったのか、
いつも以上の真剣な目でこちらを見てくる。
『わかったよ…… でも、危ないと思ったら逃げてね。』
「ちょっと二人ともなに言ってるのかわかってる?」
『わかってるよ。私はパパとママの娘だもん。
この街を守るとまではできなくても、
せめて今いるラルフおじさんとメアリおばさんが、
駆け付けるまでの時間は稼げると思う!』
「俺はカナタを守ると決めたんだ!」
どこの少年雑誌のセリフだよ!
って突っ込みたくなった。
ただ、ど直球で言われるとなんか恥ずかしい。
「なんで熱血してるのかわからないんだけど……
はぁ…… 私も行くわよ……」
『そんな! 危ないよ!』
「そんなこと百も承知だよ。
あくまでも私はあんた達が突っ走らないように
見守るお守役よ。」
もうここで言い争ってる時間がもったいない。
『わかった。一緒にいこ!』
私達は騒ぎの中心地に向かって走り出した。