出かける前の朝ご飯
「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
私の第一声がこれだった……
母親から取り出され、
普通なら産声を上げて泣くはずなのだが、
そこへ来たのがこの言葉である。
5年たった今でもはっきりと覚えている。
私はこの時この世界に生まれ変わったのだった。
そう、私はいま5歳なのである。
しかも転生前は普通のどこにでもいる
冴えないおっさんだったはずなのだが、
残業から帰ってきて、
普通に食事をして、
いつものようにオンラインゲームで寝るまでプレイし、
そして布団に入って寝て、
気が付いたら女児として産まれた。
すぐには見えないはずの目が見えたのは、
予想を180度超えた奇声を上げた赤子に驚いた、
助産師の顔と、笑顔の引きつった助産師、
そして、
「げん…… かわいい女の子ですよ……」
言葉を取り繕っているのが丸わかりのセリフ、
私はここで自分が女の子として産まれたことを悟った。
いやまて……
普通異世界物といえば、体そのままで転移魔法による異世界転移と、
現実世界の何らかの影響で違う体へと変わる異世界転生があるけど、
あらゆる異世界物に関していえば、
性別は変わらず、比較的若い男性が飛ばされたはずなのだけど、
なんで寄りにもよって40近くのおっさんが、
女の子として産まれるんだ?
まぁ、記憶の継承は健在で全く何一つ忘れてはいないんだけど、
体が新生児のため、ほとんど動かせない……
寝て起きての繰り返しだったあの時は、
意識がはっきりしてる分、起きてるときは本当に暇だった!
出生が謎めいていたけど、
その後は普通に育てられ5年、
まったくの問題もなく平和そのものだった。
私の名前は”カナタ・オ・ゼレファス”
名前を決めるとき私がカナタがいいなーって言ったのが採用された。
いや、産まれたての新生児がしゃべるのっておかしいだろ?
と思いつつこの名前結構気にっている。
「カナタ、さっさと朝ご飯たべちゃいなさい。
今日はパパとお出かけなんでしょ?」
『はぁい、ママ』
ママ、母親の名前はイセリア・ノ・ラブア・ル・ゼレファス、
長い名前で覚えるのに苦労した。
パパの名前はブラス・ロ・ラブア・デ・ゼレファス
二人は幼馴染だったらしい。
驚いたことに二人とも異世界転移者だという。
もともとは日本に住んでいたらしく、
突然二人してこの世界に召喚されたらしい。
二人ともこの世界の危機を救ったことから、
国家レベルの土地を報酬として授与され、
名前も与えられたらしい。
ゼレファス国が誕生したのはこの時だったとのこと。
私はまだ産まれてさえいないのでわかるはずもないんだけど、
初めての政治でいろいろと苦労したとか、
私は美味しいママの手料理を綺麗に食べ終わると、
外出用の服に着替えて、
パパのまつ場所に急いだ。
余談だけど、なぜ私がお父さんお母さんではなく、
パパママで呼ぶかとういうと、
今までずっとそのように呼んでいたからというのもあるんだけど、
パパママのほうが可愛く映るんじゃないかという、
ただの自己満足である。
最初は結構抵抗があったんだけど、
さすがにもう慣れてきた。
待ち合わせ場所に行くとそこには大きな背中が見えた、
パパである。
『パパ、おまたせ~』
私は思いっきり背中に抱き着いた。
「おお、カナタ、今日も元気だな。」
私は背中をよじよじ登って肩に乗り、赤髪を掴む。
パパはもともと黒髪だったのだけど、
旅の最中の何かの影響で赤くなったらしい。
ちなみにママの髪は真っ白だ。
私は母親似らしい、成長したら美人になるとはよく言われる。
「よし、行くか。」
『うん!』
私はパパに肩車されながら屋敷を出た。