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剣士アスカ・グリーンディの日記  作者: sayure
第1章 ドラゴンバスター
6/14

望むもの

ウレリアの砦にある大砲は、他国同様、精度が低く、時間がかかる。


ただ、牽制するには、効果的だ。


マッドク王国軍は、躊躇ためらいもなく、突撃してきた。


敵軍は、大隊列を3つに割いている。その真ん中に、敵軍の大将ブドルガ率いる第一軍がいる。


僕らリガード竜騎士団率いる大部隊を第一軍として、短期決戦、そのまま敵軍の第一軍と相対する。


竜騎士団騎士長アーマンが、僕に声を掛けた。


そのあだ名を口にされると、僕は死ねはしない。


心臓を失くしても、戦えというかの様に。


そうだ。


それは、僕の逃れようもない、罪。


そして、重責。




ドラゴンバスター。



___________________


左翼の隊列が大きく崩れた。


僕らの第三軍は、間も無く崩壊する。


そう感じた。


この砦は、険しい岩山に囲まれているため、砦を経由して抜けなければ、ウイプル王国本拠地への侵攻はできない。


すぐに砦を突破される事はない。


ただ、第三軍が崩壊すれば、その相対していた敵軍が、僕ら第一軍の横または背後等の死角から、挟み撃ちで攻撃できる様になる。




竜の国、ウイプルは。


領土を減らされながらも、残された場所で、平和に暮らしていた方が、幸せだったのかも知れない。


お母様の大好きな、ウイプルが。


壊され、ない様に。


___________________


僕は、時間を失くしている。


あの時から、時間は止まったまま。




あんな事は、余計だったんだ。




そうだ。


みんなと同じ様に、生きていくなんて、それは、望んではいない。


それは、お母様の、望みだ。


望みは、ない。


残されたものは、絶望。




戦いの最中、そんな思いが頭を回った。




戦いは、僕の心を慰めてくれるかの様だ。


何故だろう?



僕が抱えた、絶望を、


斬り殺した相手に、なすりつけられるからか?




もう、いいだろう。


周りに合わせながら、戦わなくても、いい。




失うものは、


もう残っていない。




さあ、




僕の奥底に眠る、



この冷酷で、獰猛(どうもう)なもの。




マッドク兵のお前達に、見せてやろう。




そして、




逝け。


___________________


僕が我に返った時には、周りは、敵兵の死体の山が築かれていた。


錆臭いと思ったら、


返り血を多く浴びていた。


鮮血に染まる僕に、恐怖し、隊列を崩す敵兵がいる。


敵将ブドルガは、僕らの騎士長アーマンにより深手を負い、マッドク王国軍は撤退していった。


ウイプル兵も、僕を見て、引き攣る顔を見せる。


誰も、近寄らない。




まるで。




僕が、敵と同じ、




とでも、言うかの様に。




フフフ。




そう、僕は笑っていたんだ。


この時。


僕でも、笑う時が、あったか。




お母様、まだ、ウイプルは、滅びなくて、すみそうだよ。




そう。


よかったでしょう?




そう。




よかった、よね。




サヴィエルの30日

ウレリアの砦にて


___________________


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