僕の本心
マッドク王国は、動きがない。
不気味なほどに。
どうした?
竜がいないのは、知っているんじゃないのか?
こんな小国に、マッドク王国は、怖気づいたのか。
そうか。
まぁ、いいか。
サヴィエルの26日
ウレリアの砦にて
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一度、僕らリガード竜騎士団は、ウイプルの城に戻された。
久し振りに会った、幼馴染のミスルタは、とても悲しそうな顔をしていた。
マッドク王国は、腰抜けだったよ。
でも、戦っていない街のみんなは、待つしかない。
僕ら以上に、状況もはっきりわからないから。
恐いんだ。
だから、
大丈夫だよ、と声をかけたんだけど。
身構えられた。
もしかして、
僕が、竜を殺したから。
恨んでいるのか。
そうだろうね。
大いなる翼竜の力は、ウイプル王国の力の象徴だっただろう。
君なんかには、わからないだろう。
僕が、好きで殺した、とでも?
いいさ、誰にもわからない。
君を信用したつもりもないから。
もう二度と、話しかけないでくれ。
サヴィエルの27日
自分の部屋にて
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マッドク王国が、兵力を整え、ウイプル王国への進軍を開始した。
城に残す兵は限りなく少ない。民から男達を一時的に兵と化し、城下町を守らせる。
進軍している敵兵は、1000位と聞く。
僕らは、800位。
マッドク王国は、進軍していない兵もそれなりの数がいるはず。
こちらには、それがほぼない。
圧倒しなければ、ウイプル王国の未来はないだろう。
幼馴染の、ミスルタが会いにきた。
これが最後の別れだとしたら、
淋しい、かな。
二度と会うつもりは、ないだろうと。
思っていたのは、見当違いだった、か。
僕に気を遣っているのは、伝わるけど。
お元気で。
僕の顔を見て、ミスルタは涙を流していた。
どうして、戦に行く前は、そんな顔をするのか、って。
君は、気づいていたのか。
そうだよ。
強がっていても、
本当は。
死に場所を、探している。
サヴィエルの28日
ウレリアの砦にて
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