ウレリアの砦
僕の身に板金鎧、手には竜剣ジオグリシェル。
ウイプル王国最大規模の砦、ウレリアの砦に、僕らはいる。
マッドク王国は本土、またはセケメント地域を拠点としての進軍をするとしても、このウレリアの砦付近を経由しなければ、ウイプル王国本拠地へは侵入できない。
砦の真ん中の見張り台に、旗を掲げている。
ウイプルは、小国だ。
だけど、幾多の戦いをかつての翼竜と共に勝利に導いた、脅威がある。
竜と炎の紋章が描かれた赤い旗。
リガード竜騎士団が、ここに居る事を示している。
マッドク王国は、精鋭部隊がいないと訊く。
数で勝負するしかないはずだ。
だけど。
この戦は、厳しいものになるだろう。
サビィエルの15日
ウレリアの砦にて
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偵察兵が、帰ってきた。
マッドク王国軍は、進軍を開始していない。
そのかわり、セケメント地域にある、アルタイ岩頭院管轄の軍に動きがある。
先の遠征での成功により、セケメント地域にはすでにウイプル王国の部隊が幾らか配備され、アルタイ岩頭院単独では、下手には動けないはずだ。
もし、アルタイ岩頭院の軍が勝てば、僕らのあの遠征は、意味のないものになる。
僕らが、セケメント地域に加勢に向かえば、マッドク王国軍は、手薄になったウイプル王国への進軍を開始するだろうか。
そうなれば、僕らは終わる。
僕らは、マッドク王国へ自ら進軍するのか。
そう。
有り難みを知ればいいさ。
竜がいなくなった。
その報いを。
受ければいい。
そして、この僕も。
サヴィエルの16日
ウレリアの砦にて
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同じ、リガード竜騎士団にいる、少しばかり年上の男に、言われた。
笑ったところを見た事がない、と。
戦では、笑わないでしょう。
でも、戦以外でも、そうだ、と。
知らないさ。
そんなに、笑顔が必要か?
ただ。
お母様は。
笑顔を見せていたな。
幼馴染のミスルタも、同じだ。
それを見ていた僕は。
安らいだ。
僕は、
笑顔の才能がないんだ。
サヴィエルの17日
ウレリアの砦にて
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セケメント地域にて、アルタイ岩頭院の軍とウイプル王国軍配備兵が戦闘に入った。
ウイプルから国王軍200兵が、ウレリアの砦に到着。
この合流した200兵は、そのまま留まる。
そして今夜、すでに砦で構えていたリガード竜騎士団率いるウイプル王国軍が、マッドク王国への進軍を開始する。
この戦いを、貴女へ捧げましょう。
お母様の大好きな、ウイプルのため、勝利へと導く。
そして。
僕は、あの言葉を、言われ続けるんだ。
いつまでも。
そう。
いつまでも。
サヴィエルの18日
ウレリアの砦にて
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