表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣士アスカ・グリーンディの日記  作者: sayure
第1章 ドラゴンバスター
2/14

マッドク王国

マッドク王国からの使者が、僕らの国へやって来た。


ウイプル兵の誰もが、険しい表情をしていた。


当然だ。


先の遠征で、かつてウイプル王国領だったセケメント地域の奪還作戦を行い、半ば成功している状況。


ただ、今のセケメント地域を領土としているのは、マッドクだ。


マッドク王国は、セケメント地域に対して、現地組織のアルタイ岩頭院に統治を任せ、その組織をマッドクが管理するという、間接的なやり方をしている。


マッドク国王の耳に入るのに、時間がかかっただろう。


リガード竜騎士団のハルガルド副騎士長が、僕の目を見て、そして逸らしていた。


不安だろうか。


そうだろうな。


残念だが、竜は死んだ。


この騎士団についた竜という名は、飾りに成り果てたのだから。



サビィエルの8日

ウイプル王城にて


___________________


幼馴染のミスルタが、この間一緒に食べた物は何か知っているかと、訊いてきた。


木の実。


いや、あれは僕が見つけて、1人で食べたのか。


渋くて、まずかったな。


一緒に食べたのは、パンか。


いや、パンじゃないな。


思い出そうとしたけど。


わからない。


コメコロだと、言った彼女。


ふっくら柔らかくて何かほんのり甘い、口の中で溶けてなくなる様な食べ物。


コメコロっていうのか。


そうか、と。


また、食べたいな。


サビィエルの9日

サイダルの集会場にて


___________________


マッドク王国からの使者が、またやって来た。


この間は3人、


今回は、10人。


その内、軽装兵が7人。


リガード竜騎士団の副騎士長と僕が、彼らの後から続いて、国王謁見の間へ入った。


謁見の間にいる国王の横には、リガード竜騎士団騎士長アーマンが備えている。


僕と副騎士長は、使者等の少し離れた後方で、控えた。


領土奪還へ動いたウイプルに対して、2度目の来訪。


先日にウイプル国王が使者に返した言葉に対しての、マッドク国王の何らかの回答を持ってきているのは、疑いようもなかった。


マッドク国王回答は、意外なものだった。


ウイプルへのセケメント地域の領土を返還、その条件として、このアルガレット地域全て放棄せよ、というものだった。


ウイプル民族発祥のこの地を、明け渡す訳がない。


これは、ウイプルにとって、屈辱的な発言だった。


馬鹿な事を。


マッドク王国は、小国のくせにと、見くびってきたのだ。


本当は、セケメント地域も、重要じゃないだろうに。


態度が、気に入らないんだろう。


マイクリーハ国王は、僕の名前を呼んだ。


こんな事。


卑怯だと思うだろう。


恨むなら、マッドクの国王を恨め。


僕は、使者等に背後から近づいた。


そして、腰にある長剣を鞘から引き抜く。


使者等の軽装兵に、剣を構える暇は与えなかった。


1人は背後から斬りつけ、2人目は、振り返ったところを、胸に突き刺した。3人目は、正面から十字斬りにした。


マッドクへの返答が、これだ。


国王は、僕の事を、伝えた。


そうだ。


そうだよ。


僕だよ。


サビィエルの10日

王城見張り台にて


___________________


残りの使者は、逃げる様にマッドクへ帰っていった。


これでまた、戦が始まる。


これで、いいのだろう。


少なくとも、僕にとって。


外の訓練場でウイプル兵が、僕に期待していると言った。


そして、付け加えて僕の事を、、、そう呼んだ。


そう。


悪気はないだろうな。


だけど、苛立ちを抑えられず、僕はその兵を殴り飛ばした。


同じ騎士達に止められたが。


そうだよ。


僕が、やったんだ。


竜は、


僕が殺した。


サビィエルの11日

王城見張り台にて


___________________


今日は、満月だ。


いつもより、月の明かりが多く、部屋に入り込んでいる。


僕が幼い頃、明かりが多く入ったおかげか、満月の時は、少し長めに話をしてくれた。


お母様。


日記は、書き続けているよ。


毎日ではないかも知れないけど。


そう言えば。


お父様に、生まれてから一度も会った事がないけれど。


あまり、話してはくれなかったね。


僕が幼かったから、気を使ったのかな。


今は、どうだろう。


今なら、話してくれたかな。


ねぇ、お母様。


やっぱり、


一人じゃ淋しいよ。


サビィエルの12日

自分の部屋にて


___________________

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ