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モルペウスの手記  作者: プロ大学生
第一章 泰国編
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3.「有閑階級の女達」

折れた足を引きずりながらやっとのことで王門に達したと思ったのだが、何故か目の前に鳥が見える。

正確に言えば細かい細工の施された鳳凰らしき鳥の天井画だ。

辺りを見回してみれば窓のもうけられていない広い部屋があり、緑の格子でできた扉が開いている。

そこからは桜の木々が蕾が溢れんばかりに咲こうとしていることが伺える。

上ってきたときは結構暑いなと感じていたが今は春だったらしい。

ここは標高がかなり高いので涼しく感じるのだろう。


それはいい。

問題はここがどこで、自分がどうなったかということだ。

そう考えていると新緑の着物を羽織った狐っぽい雰囲気の女性が入ってきたのでぎょっと驚いた。


「目覚めたのね。昨日は骨折で熱が出てたみたいだけど、気分はどうかしら?」


女性はそういって糸目を三日月形にさせて笑った。


「あ...えっと、まだ痛いですけど大丈夫です。」

「疲労骨折だもの、早々治るものじゃないわ。医師に見せたけど全治2ヵ月らしいわよ。

まぁそれまで面倒見てあげる。貴方面白そうだし?」


そういたずらっぽく笑う女性に礼を言った。

この人の名前は鶯姫というらしい。

ここは宮殿内の鶯姫さんのお宅で、門で倒れていたのをたまたま見かけて門番に運ばせたとか...色々な話を聞いた。

どうやら服装の豪華さや宮殿住まいのところからしてかなり身分が高い人のようだ。

ちなみに一緒にいた啓烹は一足先に右回りで商売をしに行ってしまったようだ。


「お腹が空いたでしょう?侍女になにか持って来させるわね。

菊蘭、お客人に点心を準備してあげてちょうだい。」

「承知いたしました、殿下。」


...殿下?

今"殿下"って言ったよな...?


「あぁ、私はこの国の王様の側室なのよ。」

驚いて非礼を詫びると、

「いいわよ気にしなくて。私の使っていない寝所だから。陛下にも拾いものをしたから暫らく面倒を見るっていってあるわ。」

という答えが返ってきた。王族ってもっと堅苦しそうで気難しそうなイメージなのだがこの人は実にカラッとした気性の持ち主らしい。


「お礼になにかできることとか、ありますか?」

「そうねぇ」

少し考える素振りを見せた後、

「じゃあ貴方には私の話し相手になってもらおうかしら。」

と結んだ。


自分のしている格好が珍しかったためにこの周辺の国から来たのではないことは容易に分かったらしい。

それからというものの住んでいた日本の文化や産業、慣習などを色々話した。

特に日本の技術力や生まれてすぐに埋め込まれるDREAMCONVERTERについての話には花が咲いた。

そして早一週間が過ぎたごろに部屋にこもっていては退屈だろう、丁度桜も満開だから花見をしようと鶯姫さんが木製の車椅子を用意してくれた。

啓烹が話していた例の芭梓豪というチート人間の発明だとかなんとか。

この人の発明は車椅子にとどまらず、今の生活の基盤になっている耕作機械や機織り機なども作ったと鶯姫さんは言っていた。

芭梓豪様の話にはうんざりしていたが、実は伝説に違わぬ凄い人なのかもしれない。



鶯姫さんと侍女の菊蘭さんと花見をしていた所に、180cmは優に超えるだろうという背の高い女性が来た。

なんというか、クールビューティ系の鶯姫さんとは対照的な桜みたいな雰囲気の柔らかい可愛らしい人だ。

二人が礼をしたので自分も車椅子に座ったまま真似をする。

「殿下、わざわざこちらまで足を運んでいただきありがとうございます。


この者が話していた"藤岡 要"という者です。」


殿下ということは多分この人が正室、王妃なのだろう。

王妃はしゃがみこんで自分の顔をじっと見ると打ち付けに吹きだして笑った。


「お前が左回りを上ってきて疲労骨折をしたという伝説を作った者か!

全く軟弱だな。あのぐらい武官でない女子供でも軽々と上ってくるのになぁ。」


と、出会い頭にけちょんけちょんに馬鹿にされた。

前言撤回、この人全然可愛くねえ。


「私がこの国の王妃、優露だ。それにしても要という名とは...陛下と同じ名なのだな。

陛下は要王であらせられる。」

要王って...自分が王にでもなった気分だな。

というかあまりにも意外だった。

後宮は常に確執があるのかと思ったらこの二人の妃はお互いに気を使いあっているのだから。


「今日は龍珠茶をご用意しました。」

菊蘭が龍珠茶の説明をしてくれたが蛾の幼虫の糞を乾燥させたお茶らしい。

甘くていい香りなのにそう聞くとあまり飲みたいと思えなくなった...。


点心と茶を楽しんで会話をしていると、やはり王の話になる。

当たり前のことだが、すこし興味があった。




なにせ、二人の男を妃にするなんてイカレた王なのだから。

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