第7話 時計台のアルベルト一家
足取りも軽く歩くジョーじいさんが「これはいったい何が起きているんだ?夢を見ているのか?それにしてはあまりに現実的だ」と自分の体をパチパチたたいて言いました。
トムはジョーじいさんの方を振り返ると「おじいさん、いえジョーさん、これまで何も言わずに、あちらこちらに連れ回ったご無礼をお許し下さい。とにかく時間がないので歩きながらご説明させていただきます」と言い歩きながら話しを続けました。
トムの生まれたアルベルト一家は遠い昔から時計台を住みかとしています。ジョーじいさんが時計台で仕事をするようになった時、世の中は不景気のどん底で人間はもちろん動物達も食料を手に入れることが難しい時代です。わずかな食料を手に入れることも難しく大人も子供も空腹を我慢しなければいけませんでした。
もちろんジョーじいさんもネズミのアルベルト家もそうでした。ジョーじいさんはようやく手に入れたパンを食べていると、いつものようにネズミが足元で見ています。
「パンがほしいのかい?」と大切なパンをちぎるとネズミの前に置きました。そのネズミはトムの祖父ミッチェルでした。ミッチェルには五人の子供がいました。何かを食べさせなければ子供たちは死んでしまいます。何年かが過ぎ、ミッチェルの子供達も大きくなりました。
やがてミッチェルは歳をとり自分の寿命が尽きようとしていることを感じました。そこで五人の子供たちのうち一番上の子供であるロベルトを呼んで「いいかい?よく聞いてくれ。お前が子供の頃に飢饉があった。ジョーさんは自分の命を繋ぐ大切なパンを私たち家族に与えてくれた。もしジョーさんがパンを分けてくれなかったら私たち家族は飢え死にしていたのだ。そのジョーさんが可愛く優しい恋人を亡くして絶望のどん底にいる。命を助けてくれたジョーさんの苦しむ様子を見て、私は毎日神さまに祈っていた。すると私に語りかける声が聞こえたのだ」と言うと大きなため息をつきました。ミッチェルは息子のロベルトに「明日また話しをしよう、少し疲れたからな」と言いました。




