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第一話 何時もとは違う日

 十二月も中盤に差し掛かろうという頃。私は市ヶ谷駅でちょうど手に入った1:32震電のプラモデルの入った袋を持って中央線の普通電車を待っていた。

 高校に入ってから忙しくて作れなかったプラモデル。市ヶ谷にある模型店に一つだけあり、速攻購入した。限定生産品で、改造パーツも多岐にわたり、ミサイルやロケットエンジンなどのパーツも存在している。これを手に入れられたのは本当に奇跡だ。

 そんなことを考えながら、ここ十年の日本を振り返る。

 少し前では地球温暖化などと騒いでいたが、日本では原子力エネルギーと太陽光発電の比率を増やし、二酸化炭素の排出量が大幅に減少した。さらに、輸出国家であった日本は藻による石油の代替燃料の高効率、低コスト化を実現。ほぼ完全に等しいリサイクル技術の確立などその他、様々な出来事による内需の拡大で、今日本は空前の好景気に恵まれていた。


「ん?雪が降り始めたな……」


 だが、様々な要因による地球寒冷化によってこの東京のど真ん中でも雪が降るようになっていた。一昔前では見ることのなかった光景だ。

 幸い、ここは首都だけあってこういった降雪に対しても万全の対策が布いてあり、普通や特級はリニアモーターと通常動力によって動くことが多くなってきた。無用と言われたリニアモーターは改良に改良を重ねた結果、様々な技術を組み合わせることによって当初予測されていた高速鉄道ではなく、一般輸送と言う分野での活躍を担った。

 そんなことを考えていると列車到着のアナウンスが流れる。鉄路に従って滑り込んでくる車体、そして、


「ごめんなさい。」

「え?」


 気づいた時にはその言葉を言った女性に腕をとられ、私は鉄道の前の空間に共に踊りだされていた。


 そこから先の記憶はない。












「……え?」


 気が付くと、私は森の中で倒れていた。あたりを見渡してみるが、近くにある小池以外は木々に覆われていた。と言っても写真で見た青木ヶ原樹海のようなものではなく、ところどころの木の間から日光が射しており、明るい。


「いったいどうなっているんだ……?」


 私の弱い知識では確かなことは言えないが、この様な森は日本国内に存在しているとは考えにくい。見たところ多少の高低差はあるものの、おおむね平地と呼んでもよいだろう。そして、日本の平野はコンクリートジャングルか田んぼで埋まっているはずだ。北海道でも畑になっているだろう。こんな良い平野、今の日本が黙って見過ごしているはずがない。見たところ、かなり大きい。一つの都市が建つだろう。


「ん?」


 スマホが震えている。何かと思い見てみると、メールや電話ではなく、一つのアプリが追加されていた。アイコンは大きな木で、異世界にようこそ!と書かれている。絶対に何か関係している。開いてみると、


[『震電』さん、ようこそ異世界へ!]


 と書かれていた。


「は?」


 ……いや、なに言ってんだこいつ。そう思ってしまう。私の名前は震電などではなく……なぜだろう、一切思い出せない。だが、そのはずなのに、私は妙に落ち着いていた。どんどん、アプリを読み進めていく。


 アプリが説明したアプリの機能。

・アイテムボックスの機能を搭載

・自身のステータス(と言っても能力(スキル)の確認と説明だけだが)の鑑定能力

・その他、スマホに取り付けられている機能の拡張(例:マップの現代世界と異世界の両者を切り替えられる)

・スマホそのものの強化(呼び出せば戻ってくる、充電無限、壊れても元に戻る)


「ふぅん」


 アイテムボックスとか理論とかそういうのはおいておこう。どうせ、異世界補正か何かだ。わからないことは考えない。今の疑問は頭から消す。さて、まず私が確認したのはステータス鑑定の方だ。


ーーーーーーーーーー

名称:震電

種族:半人(日本人:70% 戦闘機:20% 不明:10%)

役職:陸軍大尉


固有能力(ユニークスキル)【九条護憲】

上級能力:《変化(J7W2『震電改』)》

中級能力:『機動行軍 lv.1』『柔術 lv.3』『装甲 lv.1』『戦闘技術:歩兵 lv.1』『医学 lv.3』『操縦 lv.2』『機械 lv.2』『アイデア lv.3』『心理学 lv.2』

下級能力:〈調理 lv.7〉〈言いくるめ lv.3〉〈回避 lv.8〉〈隠れる lv.2〉〈登攀 lv.2〉

ーーーーーーーーーー


 ……いや、おかしいだろう。なんだ半人って。戦闘機20%?しかも不明なんてものもある。正直に言って怖い。私は、人間のはずだ。恐る恐るタップしてみる……何も反応がない。正直に言って助かった。私はまだ人間をやめるつもりはない。固有能力(ユニークスキル)については嫌な予感しかしない。……後回しにしようそうしよう。


《変化(J7W2『震電改』)》

J7W2『震電改』に変化することができる。


震電改

武装

30mm航空機関銃2門(640発)

04式空対空誘導弾4発

99式空対空誘導弾4発

レーダー類

ーーーーーーーーーー


 はい?これはあれか。獣化とかそういうタイプなのか?……まあ、ここで考えていてもしょうがない。ここで使ったとして、滑走路がないと何もできないだろう。このスキルは使えないな。他のものも調べよう。


『機動行軍 lv.1』

移動に補正がかかる。環境に対してその環境下での体調を補正する。補正はlv.1につき1%。移動の際、必要な水分や栄養を効率よく消費、吸収する。効率はlv.1につき3%。疲れを感じる物質の排出を抑制する。抑制度はlv.1につき5%。

ーーーーーーーーーー


 これは、なかなか良いスキルではないか?今現在私は明日の安全すら保障されていないのだ。特に疲れを抑制するのは素晴らしい。たぶんこれから一番頼りになるスキルだろう。


『柔術 lv.3』

柔術が扱える事の証。レベルアップにより能力が強化されることがない。実績系スキル。

ーーーーーーーーーー


 実績系スキルと書いてある……これは、出来ることをスキルで表示している、と言うことなのだろうか。つまり、使い道がないと言うことか。少しだけ残念だ。


『装甲 lv.1』

保持者に一定のエネルギー装甲を施す。装甲は自身の許容限界を超過した場合破壊される。lv.1につき、許容限界の100%向上、装甲の自動回復速度の10%向上、再展開速度の5%向上が行われる。保持者は残許容、再展開速度が知覚できる。保有者の認識によって使用される。[状態:OFF]

ーーーーーーーーーー


 エネルギーシールドかな?この状態と言うのはなんだ?保有者の認識によって使用されるとはいったい?と、ONと念じてみると私の周りに青色の結界?が張られた。これが守ってくれるのだろうか?許容限界もよくわからないし、これは要検証だろう。










 さて、一通り確認し終わった。で、この地雷臭漂う固有能力(ユニークスキル)、【九条護憲】。正直見たくない。……えーい男は度胸。覚悟を決めて……そぉい!


【九条護憲】

この能力の保持者は日本国憲法第九条を順守する。この能力によって保持者は行動の制限及び、その対価として、高精度精密機器を製作することができる。行動の制限は以下のとおりである。


・能力保持者は、正義と秩序を基調とする平和を誠実に希求し、非人道的行為の象徴である戦闘行為と、武力による威嚇又は武力の行使は、民事紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

・前項の目的を達するため。戦力は、これを保持してはならない。保持者の交戦権は、これを認めない。

・捕縛行動は攻撃とみなさない。

・対象が宣戦を布告したとき、自衛の為の実力行使において、殺害行為、致傷行為を認める。

・対象が休戦、停戦又は講和したとき、前項の制限解除は停止する。

・対象が休戦又は停戦中に宣戦なく攻撃してきた場合は前項の限りではない。

・攻撃とは、自身に対して致傷となりうる傷を受けることである。

ーーーーーーーーーー


 ……はぁ?え?ちょっと待って。これつまり先制攻撃禁止?宣戦されなきゃ何もできない?

 もしかして、私、詰んだ?



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