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004



食堂を後にしたのは良いが、さすがに陽も落ち始めてきていたので、各自に宛てがわれた部屋に入り、休憩することになった。

ミツネも暫く待っていると扉をノックする音が聞こえて扉を開けるとシノヅキが立っていた。


「ミツネ様、情報が集まりましたので報告に来ました」

「そっか、じゃ、中で聞こう」


紅茶を準備し、ソファーに対面する様に座るとシノヅキはメモ用紙を出し報告を始めた。


「賊の詳しい外見は定かではありませんが、騎士との戦闘を目撃した者によると髪は長髪、眼は赤と青のオッドアイだそうです。 そしてここからが気になるところなんですが……」


そう言ってシノヅキは一度区切りを入れ、大きく息を吸った。


「その者は瞬間移動を使うと噂になっています」

「瞬間移動?」


瞬間移動があり得ないとは言わないが、瞬間移動とは魔力を大量に消費する魔法である。

当然ながら自分の体に関して作用をもたらす魔法は魔力の消費が極端に大きいのが現実だ。


「もしそれが本当で何回も使えるのなら、魔力の量は無限なのかもしれないな」

「にわかに信じ難い話ですが」


確かに信じられない事だ。

ミツネの空間支配をもってしても自分の身体能力向上などは出来ない。

出来たら出来たで最強すぎるのだが。


「この話が本当ならミツネ様一人でも勝てない事になります」

「本当ならな……。 接触してみない事というか、圧倒的に情報が少なすぎる。 もう少し時を待った方が良いのか、それとも急いだ方が良いのか判断に困るな」


しかし、一つ相手が瞬間移動の使い手ならば八剣士に匹敵する程の力の持ち主だという事は証明された事になる。


「兎に角、動き出すのは明日から。 シノヅキも今日は休んで良いぞ」

「ではお言葉に甘えて」


そう言ってシノヅキは立ち上がると俺のベッドに倒れるように横になった。


「シノヅキ? お前の部屋はちゃんとあるだろう?」

「近くにベッドがあるならば、そこで休みます」

「シノヅキも女だよな? 少しは恥じらいを持った方が良いんじゃないか?」

「何を言いますか。 ミツネ様とは小さき頃からの関係。 今更何を恥じらう事がありますか」


全くもって動こうとしないシノヅキにミツネは溜息を出すと席を立ち外に向かって歩を進める。


「どちらに?」

「少し外を散策してくる。 先に休んでると良い」

「わかりました」


外に出て城の庭園を静かに歩いていく。 暫く花を観賞しながら歩いていると前に見慣れた者が居た。


「レオ……。 そんな憂い顔をしてどうした?」

「ミツネか……。 そんな顔していたか?」


声を掛けるとゆっくりと此方に向き、苦しそうな笑みをミツネに向けた。


「あぁ、していたな。 何か悩みか? 王子ともなればそりゃ悩みは多いだろうけど」

「悩みと言うよりは不安だな。 ミツネは死ぬと思った事はないか?」


レオの質問に対してミツネは何時も適当に返している答えでは無く、真剣に考え始める。


「死ぬって思った事なら何度も在るが、どう足掻いても死ぬって感じた事は無いな」


一見同じ様に聞こえるが、実際の意味は違う。

今までは剣を突き立てられても仲間がフォローして死ななかった。

だが、レオが言いたいのは絶体絶命のピンチに遭遇した事があるかどうかだ。


「そうだろうな。 そんな事があったらお前はもうここには居ない」

「レオどうした? まさか誰か死ぬとでも言いたいのか?」


レオの顔は何かを物語っていた。

ミツネには到底わかる事では無いが、レオはゆっくりと首を横に降る。


「何でもない。 少し心に乱れが起きただけだ。 ミツネ今回の依頼無理はするなよ? 何かを裏がありそうな気がする」

「裏?」

「そうだ。 お前なら直ぐに気付くとは思うけどな」

「それが何なのかハッキリ言ってくれよ」


ミツネの言葉にレオは反応しない。 空に浮かび上がる月を見ているだけで決してその口を開けようとはしない。


「ミツネ……。 俺はシノヅキが好きだ」

「何をいきなり」


突然の告白にミツネは不機嫌な顔になる。 別にシノヅキに好意を寄せてる事に怒ってる訳では無い。 含みを付けた言葉に答えを言わないからだ。


「しかし、俺では守る力は無い。 だからミツネ……。 シノヅキを死なせるな」


意思の入った言葉にミツネは毒気を抜かれる様にレオを凝視した。


「俺には好きな人を守る為に訓練をしてこなかったし、ミツネと勝負したって100戦100敗するだろうな」


いきなり自分を卑下する言葉を並べ始めた事にミツネは怒るわけでも慰めるわけでも無く無言を貫いた。


「しかし、ミツネは100勝する事になる。 ならば見栄を張るわけでも無く、素直にミツネに任せてしまいたい。 頼めるか?」


レオの言葉にミツネは漸くクスリと笑みを溢した。

そして、目の色を変えレオを睨み付けた。


「シノヅキは3席の副隊長だ。 自分の事は自分で守れるし、俺が部下を殺す訳無いだろ」

「そうか……。 そうだよな」


納得した様に頷くレオにミツネはすっかり先程のはぐらかされた内容を忘れてしまっている。


「無事、賊を倒す事を祈っているぞ。 3席隊長ミツネ」

「はっ!」


ミツネは胸に手を当てる事で忠誠を露わにし、同時に覚悟を引き締めるのだった。




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