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男装令嬢の専属従者、リーヴァイの苦悩。  作者: 日夏


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6/6

第6話 これからです

「……?!」


食事が終わり、席を立たれる際、ブルーノ様はクリス様へと自然にエスコートされました。

無事、お見合いが済んだところでほっとし、こちらもすぐに立ち上がり───


「バートン殿?」


なんとバートン殿は、息を呑み目を見開いて固まっている様子。

ふと視線を奥へとずらすと、公爵閣下とご夫人までもが、口をあんぐりと開けられて、まるで、信じられないものでも見たかのような表情をされています。

それだけではありません。

店中の客や店員たちが動きをとめ、お二人に注目されていました。


クリス様が男装とは言え、客たちも店員も全て仕込みです。

クリス様が女性というのは、皆お分かりでいらっしゃるはず。



「バートン殿、私はこれで」


もう一度小さく目の前の彼に声をかけると、はっと気が付いた彼もすぐさま席を立ちます。

私たちの様子に、店内の止まっていた時間も動き始めました。


よかった。

私と、ブルーノ様とクリス様のお二人以外、時が止まっているんじゃないかと本気で思ってしまいました。


「ああ、重ね重ね申し訳ない。女性をエスコートされるブルーノ様を初めて目にしたものですから」

「え……」

「非常に驚きと共に感動にも似た感慨深い気持ちで……っ」

「出られそうですか?」

「はい……、っ本当に、なんとお礼をいえば、ああ、ブルーノ様に悟られるわけにはいきませんね、しっかりしなくては」



バートン殿が涙ぐんでいるのを目にし、付添うようにクリス様とブルーノ様の後を追います。

途中、支配人だろう店員に、『こちらへ』と案内され、裏口から先回りできるよう手配いただきました。

出来た店員です。


「本日は誠にありがとうございました。お代は全てオースティン公爵家からお支払いいただいております」

「え……私の分もですか?」

「はい、なんの問題もございません。公爵閣下から、後のことはお気になさらずと承っております」

「───それでは、今日は、お言葉に甘えまして。ご馳走になります、と」

「はい、必ずお伝えいたします。また是非ご来店をお待ちしております」


このまま私が躊躇してしまえば、折角裏口から通していただいたのに、何の意味もなくなってしまう。

クリス様をお待たせしてしまうことになりかねません。

ここは、お言葉に甘えて、先回りさせていただきましょう。


「リーヴァイ殿、今日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそ。では、また───」

「はい」


バートン殿も先に馬車に戻っていなければなりませんから、ここでお別れです。

ブルーノ様の専属従者が、バートン殿で良かった。

とてもお優しく、情に脆い方でした。

彼もまた、ブルーノ様が幼い時から傍にいるのかも知れませんね。


さて、クリス様ですが。

楽しい時間を過ごせたようで、すがすがしいほどの笑顔でいらっしゃいます。


刹那、ブルーノ様がクリス様の腕を引くように引き留められ。

次の瞬間、なんとも希う、熱烈な愛の言葉をブルーノ様が仰いました。



「クリスティーナ嬢、どうか私と婚約……いえ、結婚してほしい。今、すぐにでも」


まるで神に縋るようにすらも見えるその有り様です。

流石にクリス様もとても驚かれたご様子です。


私すら、驚いて声を掛けるタイミングを忘れてしまった。

ああ、クリス様は、びっくりしすぎて、本気かどうかを伺っていますね。

頷き肯定する姿に、クリス様は辛うじて『家を通してもらえれば』と、少々困った様子で言葉にされました。

そのクリス様のご表情は、なんともまあ可愛らしい。

恥じ入る様に少し視線を外し、伏せた長い睫毛と少し赤みが増した頬。

これでは、『是非』と言っているのと変わりません。

ブルーノ様も、つられるように恥じらいを見せた後、とても晴れやかな笑顔になられ優雅に礼をされました。



クリス様が馬車に乗り込み、それを見計らってから、バートン殿がブルーノ様に声をかけられ。

バートン殿にしてみれば、またお説教の内容が増えたことでしょう。

ですが、嬉しさの方が勝ってしまうかもしれませんね。



「マジか……」


現実味がまだ帯びていないのでしょう。

ぼーっと窓の外を眺めていたクリス様が、ぼそっと一言呟きました。

そろそろ夢から戻って頂きましょう。


「夢ではなさそうですよ、クリス様」

「レヴ。あー……うん」

「良かったではないですか。気に入られて」


「や、それこそまさかっつーか、あり得ないっつーか……公爵家だぞ?」


ああ、やっといつものクリス様に戻られたようですね。

なんだか安心してしまいました。

まだ信じられないご様子ですが、本当のことですからどうか現実を受け入れていただかねばなりません。


「ですが、普段の、ありのままの格好で、さらに、人目のあるこのレストランをご指定されたことをお察しするに、女性嫌悪というより、恐怖に近かいのではないかと。お父上の言いつけであり無視できずに足を運ばれたことと思いますが、ご自身もお相手にそうとうお困りでいらっしゃったのでは?」

「かもなあ」


まさかご自分たちの会話まで届いているとは思っていなかったのでしょう。

本日ブルーノ様とお話になった内容を、いくつか楽し気に報告されてきました。

そして、合間合間に、『あのブルーノ様が』だとか『姉上の攻略対象者がまさか私に』だとか『ありえちゃう?』だとかを呟かれ。


公爵家からで、この外堀が全て埋まっている状態で断れない状況だとはいえ、ああ、クリス様は店でのことには気が付かれていないご様子。

ですが、ご自身や家の立場につかれましては、よくよく理解されておいでです。

そこへの重圧感は感じていなさそうですし、非常に驚いてはいるものの、嬉しそうにされておいでです。

ブルーノ様のことを、既にお好きなのでしょう。

初めてお会いになったとはいえ、転生の記憶がおありになる今のクリス様にとってみれば、全く知らないお相手でもなかったわけです。



「まさか、一日で攻略しちゃうとは」


攻略とは、随分本質を貫いていらっしゃる物言いであられます。

ですが、私に言わせてもらうと、これが始まりです。


「これからでございましょう」



さあ、これから忙しくなりそうです。

「……?!」


食事が終わり、席を立たれる際、ブルーノ様はクリス様へと自然にエスコートされました。

無事、お見合いが済んだところでほっとし、こちらもすぐに立ち上がり───


「バートン殿?」


なんとバートン殿は、息を呑み目を見開いて固まっている様子。

ふと視線を奥へとずらすと、公爵閣下とご夫人までもが、口をあんぐりと開けられて、まるで、信じられないものでも見たかのような表情をされています。

それだけではありません。

店中の客や店員たちが動きをとめ、お二人に注目されていました。


クリス様が男装とは言え、客たちも店員も全て仕込みです。

クリス様が女性というのは、皆お分かりでいらっしゃるはず。



「バートン殿、私はこれで」


もう一度小さく目の前の彼に声をかけると、はっと気が付いた彼もすぐさま席を立ちます。

私たちの様子に、店内の止まっていた時間も動き始めました。


よかった。

私と、ブルーノ様とクリス様のお二人以外、時が止まっているんじゃないかと本気で思ってしまいました。


「ああ、重ね重ね申し訳ない。女性をエスコートされるブルーノ様を初めて目にしたものですから」

「え……」

「非常に驚きと共に感動にも似た感慨深い気持ちで……っ」

「出られそうですか?」

「はい……、っ本当に、なんとお礼をいえば、ああ、ブルーノ様に悟られるわけにはいきませんね、しっかりしなくては」



バートン殿が涙ぐんでいるのを目にし、付添うようにクリス様とブルーノ様の後を追います。

途中、支配人だろう店員に、『こちらへ』と案内され、裏口から先回りできるよう手配いただきました。

出来た店員です。


「本日は誠にありがとうございました。お代は全てオースティン公爵家からお支払いいただいております」

「え……私の分もですか?」

「はい、なんの問題もございません。公爵閣下から、後のことはお気になさらずと承っております」

「───それでは、今日は、お言葉に甘えまして。ご馳走になります、と」

「はい、必ずお伝えいたします。また是非ご来店をお待ちしております」


このまま私が躊躇してしまえば、折角裏口から通していただいたのに、何の意味もなくなってしまう。

クリス様をお待たせしてしまうことになりかねません。

ここは、お言葉に甘えて、先回りさせていただきましょう。


「リーヴァイ殿、今日はありがとうございました」

「いえ、こちらこそ。では、また───」

「はい」


バートン殿も先に馬車に戻っていなければなりませんから、ここでお別れです。

ブルーノ様の専属従者が、バートン殿で良かった。

とてもお優しく、情に脆い方でした。

彼もまた、ブルーノ様が幼い時から傍にいるのかも知れませんね。


さて、クリス様ですが。

楽しい時間を過ごせたようで、すがすがしいほどの笑顔でいらっしゃいます。


刹那、ブルーノ様がクリス様の腕を引くように引き留められ。

次の瞬間、なんとも希う、熱烈な愛の言葉をブルーノ様が仰いました。



「クリスティーナ嬢、どうか私と婚約……いえ、結婚してほしい。今、すぐにでも」


まるで神に縋るようにすらも見えるその有り様です。

流石にクリス様もとても驚かれたご様子です。


私すら、驚いて声を掛けるタイミングを忘れてしまった。

ああ、クリス様は、びっくりしすぎて、本気かどうかを伺っていますね。

頷き肯定する姿に、クリス様は辛うじて『家を通してもらえれば』と、少々困った様子で言葉にされました。

そのクリス様のご表情は、なんともまあ可愛らしい。

恥じ入る様に少し視線を外し、伏せた長い睫毛と少し赤みが増した頬。

これでは、『是非』と言っているのと変わりません。

ブルーノ様も、つられるように恥じらいを見せた後、とても晴れやかな笑顔になられ優雅に礼をされました。



クリス様が馬車に乗り込み、それを見計らってから、バートン殿がブルーノ様に声をかけられ。

バートン殿にしてみれば、またお説教の内容が増えたことでしょう。

ですが、嬉しさの方が勝ってしまうかもしれませんね。



「マジか……」


現実味がまだ帯びていないのでしょう。

ぼーっと窓の外を眺めていたクリス様が、ぼそっと一言呟きました。

そろそろ夢から戻って頂きましょう。


「夢ではなさそうですよ、クリス様」

「レヴ。あー……うん」

「良かったではないですか。気に入られて」


「や、それこそまさかっつーか、あり得ないっつーか……公爵家だぞ?」


ああ、やっといつものクリス様に戻られたようですね。

なんだか安心してしまいました。

まだ信じられないご様子ですが、本当のことですからどうか現実を受け入れていただかねばなりません。


「ですが、普段の、ありのままの格好で、さらに、人目のあるこのレストランをご指定されたことをお察しするに、女性嫌悪というより、恐怖に近かいのではないかと。お父上の言いつけであり無視できずに足を運ばれたことと思いますが、ご自身もお相手にそうとうお困りでいらっしゃったのでは?」

「かもなあ」


まさかご自分たちの会話まで届いているとは思っていなかったのでしょう。

本日ブルーノ様とお話になった内容を、いくつか楽し気に報告されてきました。

そして、合間合間に、『あのブルーノ様が』だとか『姉上の攻略対象者がまさか私に』だとか『ありえちゃう?』だとかを呟かれ。


公爵家からで、この外堀が全て埋まっている状態で断れない状況だとはいえ、ああ、クリス様は店でのことには気が付かれていないご様子。

ですが、ご自身や家の立場につかれましては、よくよく理解されておいでです。

そこへの重圧感は感じていなさそうですし、非常に驚いてはいるものの、嬉しそうにされておいでです。

ブルーノ様のことを、既にお好きなのでしょう。

初めてお会いになったとはいえ、転生の記憶がおありになる今のクリス様にとってみれば、全く知らないお相手でもなかったわけです。



「まさか、一日で攻略しちゃうとは」


攻略とは、随分本質を貫いていらっしゃる物言いであられます。

ですが、私に言わせてもらうと、これが始まりです。


「これからでございましょう」



さあ、これから忙しくなりそうです。



◇◆◇  ◇◆◇  ◇◆◇  ◇◆◇ 



<あとがき>

ここまでお読みいただきありがとうございました。

リーヴァイ視点はこれでおしましです^^。

次回、ブルーノ視点を更新します♪






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