ライド・シュナウダー①
俺様はライド、ギルドで活躍中の金髪のイケメンの魔法使いだ。
今日は仲間たちと無限の塔の最上階のドラゴンを倒しに来た。
ここのドラゴンは誰も倒せないだろうといわれている。
体の中に多数の呪いがあり、ブレスの攻撃を一度でも食らうと何かしらの呪いにかかってしまうという強すぎる攻撃も持っていた。
しかし、それも今日まで。
俺たちが倒すからだ。
俺たちは最上階まで来た。
この扉の先にドラゴンがいる。
「行くぜ!」
俺が扉に手をかけるとみんながうなずく。
扉を開くとそこにはドラゴンがいた。
「ギャオオオオ!!」
そうドラゴンが咆哮していた。
「ロック! レイ! 行くぞ!」
「おう!」
「うん!」
そう言ってロックは突っ込んでいき、俺は最大攻撃呪文の詠唱を始める。
レイはロックに速度強化の呪文をかけた。
そして、ロックはドラゴンを斬りつけながら、軽やかに攻撃を避けてドラゴンを翻弄していた。
俺は詠唱を進める。
レイは、ロックに強化する呪文を絶やさない。
そうしているうちに詠唱が終わる。
「ロック! 下がれ!」
俺がそう叫ぶとロックが下がる。
「メテオフレイム!」
大きな火球が現れドラゴンに向かって飛んでいく。
ドラゴンは「グギャアアア!!」と燃えながら叫び苦しみ倒れた。
「やったな! レイ! ライド!」
とロックが走ってくる。
その時、「グルルル!」と声が聞こえた。
そっちを見るとドラゴンが顔を上げて、レイの方へ黒いブレスをしようとしていた。
俺はとっさに
「レイ!」
とかばっていた。
黒いブレスが直撃した俺は、壁まで吹き飛び、気を失った。
次に目を覚ますとそこは病院だった。
レイが、横に暗い表情で座りうつむいていた。
「レイ?」
「ライド!」
泣きながらレイは抱きしめてくる。
「ごめん! ごめんなさい!」
とレイは謝ってくる。
「大丈夫だ。俺無事だったんだし」
そう言うとレイは複雑な表情をする。
「どうした?」
「……」
レイは黙って手鏡を渡してきた。
そこには、金髪の少女が映っていた。
どうやらブレスの影響で俺は呪いで姿が変わってしまったらしい。
「きょ、教会行けば戻れるはずだし、大丈夫さ」
と俺は震える声で強がったが、レイは暗い表情で下を向き首を振る。
「寝てる間に神父さんに来てもらったけど、それは絶望的だって……」
俺は声が出なかった。
まさか、そんな……
と頭が真っ白になっていると、レイの泣いてる姿が目に入る。
そうかこいつそれで、
…………。
「だ、大丈夫だ! ずいぶん可愛くなっちまったけどさ! 魔力はそのままだし、可愛いことで得することあるかもだ!」
俺は、無理やり笑いそう言った。
「ライド……」
「あんま気にすんなって」
そう言ってレイの肩に手を置く。
そんな時、扉が開いた。
「レイ、飯買ってきたぞって、ライド目が覚めたのか!」
ロックだった。
「おう! 心配かけたなロック!」
仲間たちと再会した後はすぐにギルドには復帰できた。
ギルドに戻るとみんなに驚かれた。
本当にライドかよ!?とか
話には聞いてたけどマジで美少女じゃん!
とか言われて大騒ぎだった。
そんな風にしながらもまたいつもの日常に戻っていく。
小さな体でマントを羽織り二人と一緒にギルドの仕事をこなしていた。
いつも通り。
前と変わらず。
そう何も変わらないと思っていた。
ギルドに帰ると、男たちから、「ギルドのアイドルが帰ってきたぞ!」と言われた。
俺は笑顔を浮かべて、「ただいま♪」という。
これをいつもやっていた。
最初は、かわいこぶってみてくれよ!と酒の席でノリで言われたものだった。
俺は少し嫌だったのだが断り切れずにやったのが最初だった。
しかし、その日からギルドの奴と会うとそれを求められて今となってはかわいこぶるのは日常と化してしまった
この姿でも笑えるということをレイに見せて苦しめないためでもあったので無理に断れなかった。
男たちは「さすがアイドル!」とか「これこそライド!やっぱりライドは美少女!」とか言っていた。
しかしその行動は俺の心を徐々に蝕んでいくものだった。
こいつらの中では男の俺は消えていた。
こいつらにとってはこれがライドなんだ。
俺はふるまい続けた。
アイドルなライドを。
「ただいま~♪」
「おう!帰ったか!ライド!」「相変わらずだな!」
そんな風に言われるたびに心が欠けていく。
しかし笑顔の仮面は外せない。
気持ち悪い。吐き気がする。
そして、そんなことを続けて、人知れず吐いてしまう。
しかし、続ける。
「おはよう~♪」
「相変わらずかわいいな!」「さすがアイドル!」
見るな。
見ないでくれ。
俺じゃない。こんなのは俺じゃないんだ。
アイドルとして俺を見てくる視線を感じるたびに吐き気がしていた。
そんな時だった。
「劇?」
「そう。劇の監督がぜひ出て欲しいって言ってきてるんだ。どうだ?」
ギルドマスターにそう聞かれた。
「いいよ♪」
無理して笑顔を作り、オーケーした。
正直、断りたかったが、断れなかった。
今の俺には。
「いってきます♪」
「ギルドのアイドルとして頑張って来いよ!」
そう言われて、クエスト終わりに劇の稽古に行ったり、劇の稽古のためにクエストに行かない日もあったりした。
役はメインの姫役だった。
ギルドではアイドルの仮面をつけて、稽古場では姫という違う仮面をつける日々。
心の器が容量を超えて壊れかけていた。
しかし、壊れるわけにはいかない。
私は明るいアイドルなライドを演じ続けないと。
稽古の後は
「お疲れ様でした~♪」
「お疲れ!ライドちゃん!どう?ご飯でも!」
「すみません。明日も仕事があるので……」
「そっかぁ。残念だなぁ」
そう言って足早に稽古場を後にしてトイレに向かう。
そして個室に入って吐く。
荒い息切れをしながらも呼吸を落ち着ける。
それがいつもの流れになっていた。
そして本番当日、私は姫として出る。
「王子様。あなた様をお待ちしておりました」
「姫よ……。」
クライマックスのシーン。
王子が跪き。私の手の甲にキスをする。
…………。
?
私?
いつから心の中で自分のことを私と言っていた?
観客席の方を見る。
こちらを見ている。
誰を見ている?
姫?俺?私?
私は、俺は、
いったい、
誰だ?
「うっ」
その瞬間、俺は吐いた。
しばらくうずくまり動けなくなった。
観客は大騒ぎだった。
演者たちも大丈夫か?と急いで駆け寄ってくる。
そんな大騒ぎの中、劇は中止された。
俺は誰かに背負ってもらって控室に横にされた。
いろんな人に何か言われたが覚えていない。
その後誰かにまた背負われて家に帰った。
そして死んだように眠った。
ただ眠った。
泥のように。
その日から、俺は人の視線が怖くなり、部屋から出られなくなった。




