エレイル・ラーテス③
旅を続けていたある日、ある街で、
「今、女の子がいなくっていて君の顔を確認させてもらってもいいかい?」
そう街の騎士に声をかけられる。
「いえ、私じゃないですよ」
そう言ってローブを深くかぶりそそくさ行こうとする。
「君!ちょっと!」
そう言って、ローブをつかまれて角があらわになった。
「な、魔物!?衛兵!」
そう言って人が集まってきた。
剣に一回手をかけかけるが、この数を倒すのは無理か、と素直にあきらめ連行される。
そして、一時牢屋に入れられる。
私は、見張りに
「私は人間なんです! 入れ替わってしまってこの姿になっているだけで人間なんです!」
と事情を何回も説明するが、笑って相手にされず、またか、と呆れらていた。
そして、ある日、ある男が牢屋の前に来る。
衛兵に
「これか?」
と聞く。
「はい」
「じゃあ、これで」
と言って衛兵に金を渡している。
そして私はその男に首輪をつけられる。
「これで、いい」
この首輪は、
確か、
人間に危害を加えられないようにするための、首輪、か。
魔物を飼うために使われると聞いたことがある。
牢屋が開けられる。
「出ろ」
男にそう言われて、私は牢屋から出て、その男に街の裏の方に連れていかれる。
歩いているとテントが見えてくる。
その中では、多くの人間がひしめき合っていた。
「1万!」
「1万5千!」
「10万!」
と言いあっている。
オークション、か。
しかも商品は……
目を舞台に移すと、そこには、魔族の少女がいた。
「趣味が悪いな」
私はそうつぶやいた。
「ふん。言ってろ。お前も商品の一つだ」
男はそう吐き捨てて、私を裏に引っ張って行く。
そして、私の番が来る。
「今宵お越しの皆様! 次の魔物は、なんと! 剣士の魔族だ! ではどうぞ!」
そう言われて、オークションが始まるが誰も手を上げない。
ぼそぼそ声が聞こえる。
「なんだあの魔族羽がボロボロじゃねえか」
「尻尾も。角も片方欠けてやがるし」
「いらねえよ。次々」
そう声が聞こえてくる。
横の司会者が小さい声で
「くそっ。こんな魔物仕入れてきやがって。こいつは殺処分か」
そうつぶやく。
殺処分?
そうか。
私は
死ぬのか。
こんなところで。
私は、今までの旅の記憶がよぎる。
いろいろあったな。
死ぬのは当然怖い。
恐怖で腕が振るえる。
呼吸も荒くなる。
でも
うん
いろんな人を救えてよかった。
今は、ただ、そう思った。
その時だった。
「500……」
そう小さな声が聞こえた。
そちらの方向を見ると小さな少女がいた。
ボロボロの服を着た小さな少女が。
「は? どこから迷い込んだんだガキ」
そう横の司会の男が言い放つ。
「500……」
少女はそれだけを返す。
私は、その少女の方に舞台から歩いていく。
「あ、おい!」
司会の男が呼び止めるが知らない。
少女の手には汚れた小銭がたくさんあった。
拾って集めたのだろう。
小銭とボロボロの服を見ればわかる。
私は優しく微笑んで
「どうして私を?」
と聞く。
「私、もう、一人は、嫌だから……」
「……そうか」
「お姉さんは私と一緒にいてくれるんだよね? お金を払えば」
……この少女は
魔物の姿である私にそう言ってきた。
今魔物である私にすがるほど
孤独で一人苦しんできたのだろう。
この少女を連れて旅はできない。
この少女と一緒にいるということは、自分の体を探せなくなるということだ。
私が選ぶべき選択は決まっていた。
私は少女の手を両手で優しく包み込み
「ああ。一緒にいる」
優しくそう告げた。
「ちょっと待て! そんなはした金で――」
と言いかける、私は司会をにらみつけて黙らせる。
確かに500ゴールドなんてパンが一個買えるかどうかだ。
だが、
「誰も手を上げないのなら、私は、この少女の物となる!いいな!」
と私はテント中に聞こえるように叫ぶ。
誰も何も言わず、手を上げない。
私は少女を連れて、舞台に上がる。
そして、少女の小銭を司会に渡す。
「行こう」
そう言って少女を促し、テントを後にした。
もう外は暗くなっていて、その中私たちは歩く。
「君の名前はなんていうんだ?」
歩きながら少女に聞く。
少女は小さい声で
「ルル……」
「ルル、か。私はエレイルだ。よろしくな、ルル」
私は握手を求める。
ルルは少し驚いたようだったが、
「うん」
と握り返した。
少しルルが微笑んでいたように見えた。
少し歩いた後、
「ここが家」
そこは、ボロボロの建物があった。
こんな女の子が一人でこんなところに?
……。
私は気づいたらルルの頭を撫でていた。
ルルは
「?」
という疑問を持った表情で私を見ていた。
私は、
「入ってもいいか?」
と聞くと
「? 当たり前」
と何を当然のことを聞いてるのかという表情で見られた。
扉を開けて、一緒に入る。
聞きにくかったが、
「君のことをいろいろ聞いてもいいか?」
と聞いた。
「うん」
「答えづらかったら答えなくてもいい。親はいるのかい?」
「……いない」
「理由を聞いても?」
「……」
「わかった。もうこのことは聞かない。食べ物とかはどうしている?」
「拾ったお金とかでたまに買えたりする。
でもほとんどは捨てられてる残飯」
「……そうか」
「私も一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「……」
「? どうした?」
「……お姉ちゃんって呼んでもいい?」
私は予想外のことに少し衝撃を受けたが、微笑み
「ああ」
と静かに答えた。
「今日はもう寝よう」
そう私はルルに提案する。
「うん」
私は部屋を見渡す。
ベットは一つ、か。
「私は床で眠るよ。おやすみ」
そう言って寝ようとすると、
「なんで?」
と聞かれた。
「え? いや……」
とベットを見つめる。
「一緒に寝てくれないの?」
ルルは私をまっすぐ見つめてくる。
「……そうか。そうだな。一緒に寝よう」
「うん」
そう言って私達は一緒に寝た。




