サレン・シュヴァリエ&リナ・カヴァリエ⑥
あれから数か月が経った。
レンドから聞いた話では、イクスは騎士団に戻ったらしい。
少し戻るかどうか迷っていたようだが、レンドが背中を押したらしい。
しかし、イクスが自分から下からやり直すということで平の隊員からになったらしい。
イクスも色々体験して思うところがあったのだろう。
そして、店長とレンドのおかげで騎士は前を通るが店に入ってこなくなり、リナは笑顔でお客と接する。
「隊長ちゃんとリナちゃんおはよう」
とお客が入ってくる。
数か月も経つと完全に客に私達は覚えられていた。
おばあさんが店に来て
「また来てくれてありがとうございます!そう言えばお孫さんの誕生日はどうでした?喜んでもらえました?」
「ええ。孫の誕生日相談に乗ってくれてありがとう。喜んでもらえたわ」
「それは良かったです!喜んでもらえてるかずっと気になってたんです!」
という会話をしたり、おじいさんが来て
「リナちゃん今日のおすすめは何だい?」
「このメロンパンです!これ新作ですごくおいしいんですよ!」
「リナちゃんのおすすめはいつも美味しいから買っちゃうよ!」
という会話をしてり、近所の子供が来て
「リナちゃん!お買い物に来たよ!」
「偉いね!今日もこのパンで大丈夫?」
「うん!次の休みまた遊んでくれる?」
「いいよ。遊ぼう」
そんな会話をしていて、笑顔が絶える日はなかった。
リナは、パン屋で笑顔で過ごしていた。
私にはそれがとても嬉しかった。
リナは家でも私に
「この姿にされて騎士でなくなったときは絶望して、苦しかったんです。
私はこれからどうすればいいのかって。でも今は幸せです。パン屋さんを通じて、いろんな人の笑顔が見れて、それで私も笑顔になれる」
私は嬉しくて
「にゃあ」
と頭をこすりつけた。
そんなある日、パン屋に一人の客が来た。
金髪のマントを着た少女だった。
「いらっしゃいませ!ごめんなさい、まだ開店前で……。」
そう言うと
「悪い。客じゃねえんだ。話があってさ。」
そう少女に似つかわしくない口調で言った。
「あんたら呪いにかかってるだろ」
少女は唐突にそう聞いてきた。
「な」
「あー、何も言わなくていい。言えないんだろ。知ってる。ただこっちの言うことに、はい、か、いいえで答えてくれ」
「ブラックシープって呪いを受けたやつの居場所になってくれるギルドがある。はいるか?」
そうぶっきらぼうに突然聞いてくる。
リナは私を見てくる。
私はリナの手の上に前足を置き
「にゃあ」
と言う。
お前が決めていいんだ。
それに従う。
それが伝わったのか。
リナは目を伏せて
「わかりました」
とつぶやいた。
「えっと、魔法使いさん?かな。申し訳ないけど、断ります。私たちの居場所はここです」
そう微笑んで言った。
魔法使いの少女は、それを聞くと、
「そっか。邪魔して悪かったな。居場所、大事にしろよ。じゃあな」
そう言って帰っていった。
パン屋の店長が奥から焼きあがったパンをトレーに乗せて出てくる。
「今のやつ初めて見たな。なんか話してたけど大事な話か?」
そう聞いてきた。
リナは
「いえ。それよりそろそろ開店の時間ですね!パンを並べますよ!」
そう言ってトレーを受け取る。
朝、パンを並べてるのを眺めながらパンのにおいを感じる。
今日も私たちのいつもの一日が始まった。




