プロローグ
私の名前は、エレナ。私は世界で最強の魔法使いだった。
ある時、私は、呪いの魔本の研究に着手した。
世界のだれにも読み解けない魔本。狐の表紙が描かれているため、狐の妖怪が作ったとかいう噂がある。
その魔本を調べたものは一人の例外なく狐に変えるという噂があったため厳重に封印されて、調べるものはいなかった。
自惚れていた。
自分ならできると。
国に掛け合い封印を解いてもらい触れないように厳重に注意し、防御魔法を何重にも張って調べ始めた。
しかし、いくら研究をしても何もわからない。
そして、ある時だった。
バキン!と音がした。
呪いの一部が防御魔法を突き破った。
しまった
そう思い、私はその瞬間、本をすぐさま封印した。
しかし間に合わず呪いの一部を受けてしまった。
気を失い、目が覚めたときには、狐耳と尻尾が生えた少女になっており、魔力を失っていた。
封印した本は国が管理している祠に返した。
私は、威勢よく魔本の秘密を解くといっていたので
「やっぱりだめだったか」
「魔力もなくなってそんな姿になるなんてな」
「あんだけ豪語していてあのざまか」
と笑いものにされた。
元の姿に戻る努力もしたが当然あの魔本の呪いは解けなかった。
そして、ギルドでは仲間だと思っていた奴らからは
「魔力がなくなったら、お前なんて何の価値もない。出ていけ。今まではお前にやさしくしておけばギルドの益になるから優しくしていただけだ」
とギルドマスターに追い出された。
私は絶望した。
人が信じられなくなった。
私は旅に出ることにした。
少しでも、私を知っている者がいるところから離れたかった。
この街にいたくなかった。
しかし、魔力の無い私には危険なことがいろいろあった。
例えば街道を歩いているときに盗賊たちに襲われたなんてこともあった。
「そこの女!金おいてけよ!」
そう声をかけられた。
私は撃退できるほどの武力を持たない。
言われた通り有り金を出す。
「本当にこれだけか確認させてもらうぞ」
そう言って体を触られる。
「お前、この耳本物じゃねえか。お前ら、こいつ化け物だぜ」
狐耳を触られてそう言われる。
化け物、か。狐耳を触り自分がそう呼ばれたのだとで自覚して、心が痛んだ。
「これで全部みてえだな。引き上げるぞ!」
そう言った時だった。
「待て!」
私の後ろに冒険者の男が立っていた。
「あ?なんだお前」
「盗賊ども、この女性の奪った金を返せ!」
「この人数お前ひとりでどうにかできるとでも?」
そう言って盗賊たちは襲い掛かった。
それをひらりと華麗にかわしていって痛恨の一撃を食らわせていく。
「ぐっ!」
と言いながら盗賊たちは一人、また一人と倒れていく。
そして気づいたら一人残らず倒れていた。
冒険者の男は
「これですよね。どうぞ」
と言って私の財布を差し出す。
「ありがとう」
そう言って私は先に行こうとすると、
「僕もこの先の街に用事があるのでお供しますよ」
とついてきた。
しばらく歩いた後に
「お前、私が気味悪くないのか?」
とちょっと聞きづらいことを聞いた。
「え?どうしてですか?」
ときょとんとして聞いてくる。
本当にわかっていないようだった。
「この耳と尻尾アクセサリーじゃなくて本物だぞ。こんなものが付いた人間なんて気味が悪くないか?」
「ああ。それなら盗賊たちとの話が少し聞こえていたのでわかってます。でも、怖がるほどのものですかね」
「え?」
「今話してる感じあなたも普通の人間ですし、その耳と尻尾も、そうですね、個性の一つのようなものなんじゃないですかね。」
「個性……」
この旅をしていて、奇異の目で見られることはあれど、こんな風に言ってくれる奴なんていなかった。
それに衝撃を受けた。
そして気づいたら頬に涙が伝っていた。
「え!?ごめんなさい!何か言っちゃダメなこと言っちゃいましたか!?」
「いや、いいや、そんなことない。これは違うんだ。嬉しくて泣いてるんだ」
冒険者の男は黙って泣き止むまで待ってくれた。
「すまなかったな。いきなり泣き出して。あんな風に好意的にこの尻尾や耳を見てくれた人間は初めてで」
「いえ。大丈夫です」
「もう街につくな」
「そうですね」
そう言って二人で街に入る。
もう街に着くころには、夜になっていた。
その後宿屋の場所を教えてもらい、
「ギルドに大体僕いるんでこの街で困ったことがあったら来てください!」
別れ際にそう彼は言って別れた。
「本当にお人よしだな。あいつは」
別れた後宿屋に入りベッドに横になる。
彼の言葉で幾分か心が軽くなった。
その日は、久しぶりによく眠れた。
そしてこの経験から自分の事で精一杯だった私は心に余裕ができるようになり、旅の中、あることを考える。
この世界には私以外にも呪いで姿が変わったりして居場所を失った者がいるかもしれない。
でも私のように何か一言、一人でも寄り添ってくれる人間がいれば救われるんじゃないか。
だったら、私は、そのまだ見ぬその者達にとっての彼になりたい。
そしてその者たちのための居場所を作る。
ギルド、ブラックシープ
そこは、私のようにギルドにいられなくなった人間の居場所。




