Ep.91 ORIGINS WAR /* 永誓の隷環と星光の淵月 */
『【星光の果ての白き苗】……【堕ちたる傀儡、誓約の指輪】……』
詠唱の声が虚空にこだまする一方で、前方ではもう阿鼻叫喚の地獄絵図が形成されていた。
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『脆す ぎ』
『( ◠‿◠ )』
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ハエのように黄金の巨人へとたかる配下たち。
全員が攻撃を繰り出し、うち何人かは極限スキルまで発動しているが……その傷ですら一瞬で再生した。
『【刻まれし従属の紋】……【永遠を縫う無形の聖糸】……』
目の前に黄金の拳が迫ってくる。
しかし、同時に同じ顔をした青髪のプレイヤーが10人ほど私の前に現れ———
「〔超過・超暴走・ショックウェーブ〕」「〔超過・超暴走・ショックウェーブ〕」「〔超過・超暴走・ショックウェーブ〕」「〔超過・超暴走・ショックウェーブ〕」
大量の衝撃波。私もアルテルトも、なんなら青髪のプレイヤーたち……ミリピィたちの身体もどこかへと吹き飛んだ。
『ッ……【脈動せし悪魔の大樹】【終わりの先の征服者】』
あと2節。だがしかし、吹き飛んだアルテルトは即座に起き上がり、こちらを……えっと、えぇ……なんだあの顔……まぁともかく、とんでもない形相で見つめていた。
そして、その態勢をクラウチングスタートのようなものに変えて———すぐさまダッシュ、こちらへと神速で突進を開始した。
地面に落ちていたプレイヤーたちも、何らかのスキルで飛び上がって突進を防ごうとするが……ハエが車に衝突するかのように全員跳ね飛ばされた。
このままではギリギリ時間が足りない……!と思っていたその時、救世主が私の前に現れる。
これは———アイアンタイタンだ!
操縦してるのは……誰だろうか。確か狂夜にコイツの相手を任せたんだっけ。
『やっと操作できたよ……さぁ、行こうか! 【ジェットムーヴ】———【アイアンブレイク】!』
鉄の巨人と黄金の巨人の拳が衝突する。
しかし、素体の格が低いからか……アイアンタイタンの拳がすぐに砕け散った。
しかし、これで時間は稼げた。突進も止められた。
『【渇きを満たす瑠璃の音色】———【私が全てを支配する】』
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『ヤバイヤバイヤバイヤバイ』
『ソレ 《《禁止改訂》》』
『^o^』
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私の本体、その心臓部から青白い光が溢れ出し———
『【永誓の隷環と星光の淵月】』
◇淵月世界———???
何かが私を見つめている。
それは青い月のような、眼のような、顔のような……不気味なものだった。
不気味ではあったが……しかし、安心感のようなものも感じられる。
『根源。』
『それは私たちの本質。』
『私たちはどこであろうと変わらない。』
『“⬛︎⬛︎”に生きる定め。』
誰が喋っているのかも分からない。あの月だか何だかよく分からない物体なのだろうか。
『お前の根源は……なんだ?』
「根源……うーん、なんだろうね。まぁでもやっぱり……」
“⬛︎⬛︎”
そう呟くと、視界は再び暗転した。
◇戦場———アステリア
何もない、黒い空間。
周囲では岩が浮き上がり、大地は黒ずみ……焼けている。
そんな場所の空中、私の目の前で———その闇の中に一筋の光が空より差した。
そこの闇だけが消え去って、その場所にだけ色が戻る。
光が集まり、収束し———やがてそれは『指輪』の形をとった。
指輪から鼓動が聞こえる。
私の中に抗いようのない欲望が生まれ……無心でただ、それに手を伸ばした。
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『マズい→死ね!!!!』
『アナタを ““絶対に”” 殺』
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「そうはいかないよ」
砕け散ったアイアンタイタンのコックピットから狂夜が抜け出し、アルテルトに向けて拳を喰らわせた。
単なるパンチのような一撃だったが、それは予想外の威力を発揮してアルテルトを弾き飛ばした。
私はなおも指輪に手を伸ばす。
動きが鈍い。本体だけが動いていて、化け物の部分はまったくもって動かなかった。
本体の上半身、そしてそれを化け物の部分とを繋ぐ触手のような繊維がギチギチと音を立てて伸びていく。
あと少しの距離なのに、指輪に手が近づくにつれてどんどんと動きが遅くなっていく。
『そういう時こそワタシを頼ってみては!?!?』
脳内で勝手にドミノが演算を開始する。
この状態の私と比べたら遅すぎるくらいだが、それでもありがたかった。
背後から剣が生成され、飛翔し、魔法陣が展開され、炎や岩などが射出されていく。
もう少し、あと少しで指が届く……
体がさらに悲鳴をあげた。視界が点滅する。
伸びた身体が千切れそうだ。
「アタシもやれるぜ〜?」
ヒバナが片手にスマホのような円板を持ち、それを弄っている。
わざとらしく何かを押したかと思えば、天から極太のレーザーが降り注いだ。
「おぉう……まさか人工衛星レーザーが一発成功するとは……魔法様々だねぇ」
手を伸ばす。伸ばす。伸ば———
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『こ ろ す』
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『させないわ』
いくつもの剣、魂、鏡がグレイの周囲に浮かんでいる。
彼女が手をアルテルトに向けると同時に、それらすべてが黄金の巨人へ向けて突撃……大きな爆発を起こす。
そして———ようやく指輪に手が届いた。
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『ア』
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左手の薬指へと指輪が嵌められる。
すると、同時に周囲を光が満たし———脳内がめちゃくちゃに荒れ狂った。
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『オリジンスキル獲得:【幽月ノ夜狂恋牢】』
『オリジンスキル獲得:【哀艶ノ夜囁ト瑠璃ノ神域】』
『オリジンスキル獲得:【火華散ル激灼ノ星炉】』
『オリジンスキル獲得:【傀儡奉仕ノ自律神核】』
『オリジンスキル獲得:【愛反セシ星々ノ燐光】』
『オリジンスキル獲得:【灰塵ト残冠ノ神蘇黎明譚】』
『オリジンスキル獲得:【支配下ノ王ト終律ノ黄金冠】』
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大量のスキル獲得ログが頭に流れる。
しかし、体の下側の感覚がない。どうやら私の化け物部分と本体部分が分離……ん? あれ、これ何が起きて……
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『アノマリー・エンカウント!!』
『アノマリーモンスター【“淵月虚殻”アステルス】Lv.12999』
『究極の王。』
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私の元身体が分離した。え?なんかこれ敵対してない?え?どういうこと?
ずしん、と大きな音を立てて触手の化け物が立ち上がる。
違和感を感じて私は自分の体を見た。なんか透けてる……えぇ……? なにこれ……? 霊体にでもなったのかこれ……?
『ウオオオオォォォォォッ!!!!!』
触手の化け物が咆哮する。なんか客観的に見ると気持ち悪すぎるなこれ……とか言ってる場合ではない。え? マジでどうすんのこれ?
くるり、と化け物は私の方を向いて———ちょっと生意気だったので少し睨んでやると、すぐさまそれは逃げ出した。
ずしんずしんずしん!と大きな音が響き渡る。
え、えぇ……?
【“淵月虚殻”アステルス】
アステリアの最終形態から、てっぺんに生えている本体部分以外のすべてが分離して生まれたモンスター。
本体は魂関係の種族に変化、しかし能力値は据え置きなのでむしろ強くなっている。もうデカい的は卒業だ!霊体の触手が使えるぞ!
おもろかったら☆☆☆☆☆ください。真面目に。
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