Ep.89 ORIGINS WAR /* 前進 */
◇戦場———アステリア
『ちょうどいいのが落ちてて助かるね。ちょっと盾になってくれないかな?』
「えっ……あ、ちょまっ———」
その辺でくたばっていたアウロンを触手で拾い、その全身を黄金の巨人に向けて構える。面積少なすぎるかも……
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『ソンナ《《小さな小さな》》盾??』
『ワレの‘スペシャル攻撃’防げると!?!?』
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『ナチュラルに盾判定されてるよ、アウロン』
「うぅ……うぅぅ……!」
な、泣いてる……なんか最近のアウロン脆くない?
あ、ちょっと触手ポカポカ叩くのやめて……
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『《《昇華》》はオマエ 専売特許では.《《断じてNO》》』
『《《タマシい》》馴染む…,,,馴染む!!!!!!』
『さらなる 実験』
『《《異常に》》興味深し』
『ウオオオオオオオオオオオオオオオ』
『アノマリー・アセンション!!!』
『オリジンモンスター【“黄金天帝”灼金魂!!のアルケリア=オルテルト】Lv.66666』
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黄金の巨人がさらに肥大化し、その身体からいくつもの触手が生え出した。
パクリやがったなテメェ!!!
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『IT’$ EVENT TIME!!』
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黄金の巨大タコと化したアルテルトが、その巨大な見合わぬ俊敏性で戦場を動き回り……その軌道上にいたプレイヤーたちが一撃で轢かれ死んでいく。
スーパーボールみたいな動きとしか形容できない、そんな挙動。それが私の周囲の敵を蹴散らし、最後は私に向けて突進する。
『【ワープゲート】』
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『ン?』
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アルテルトはゲートに吸い込まれ、空に生成されたゲートの出口を経由して地面へと叩きつけられる。というか自分から突っ込んだ。
『学習しないねぇ〜〜〜〜』
私も巨体を跳ね上げ、跳躍。
サイズからは考えられないほどに飛び上がった私に向けて、アルテルトは剣を生成、そしてそれを射出。
『出番だよ』
「ぎぃやぁーっ!?!?」
ずい、と触手で掴んでいたアウロンを前に出し、黄金の剣群すべてを彼女で防ぐ。死なない盾って強いなぁ〜
『ありがとう。もう要らない』
「えっ———」
ぽい、と適当にアウロンを放り投げた。そして、次は私の攻撃ターン。
『【天終・触滅】』
すべての触手が後ろへと引き絞られ、そして一気に伸びる。
触手の乱打が遠距離からアルテルトを襲い、さらに———
『【コトゥーグ・ラッシュ】』
ミリピィとかいうクラメンのやり方を参考に、同時にスキルを発動する。
桜色の花びらが散り、黒い斬撃が広がり、そして触手がさらに連打を加速させる。
さらに追い討ち。いつの間にやら条件を満たしていたので転職した職業……【百剣天帝】の極限スキルを発動する。
『【金が剣を創り、剣は百万で束ねられた】』
アルテルトの周囲に一瞬で無数の剣が生成され、それらが一気にアルテルトへと向きなおり———
『【剣界・逆天】』
すべての剣がアルテルトへと突き刺さり、爆発。
金粉のようなものが周囲に広がり、金色のポリゴンが弾け飛ぶ。
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『痛い!!痛イ!!イタイ!!』
『しかし 効果はないようだ』
『(^ω^)』
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アルテルトの身体がすぐさま再生していく。1秒とたたずに、ここまでに与えた傷すべてが消え去った。
『はっ!』
轟音。
最後にスキルすら乗せていない触手のパンチを放つが、吹き飛んだだけでダメージは入っていないようだ。
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『強靭!!無敵!!最強!!』
『ワレ 【名実共に】《《“⬛︎臨”》》サマに追いつき,,,…。ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ』
『.°(ಗдಗ。)°.』
『がんばて カウント ススメマウス』
『‘ねずみ講’』
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何事もなかったかのように起き上がる黄金の巨人。
周囲にたかるプレイヤーの群れなぞ気にもせず、そのまま私の方へと歩み出した。
『あっははは! インチキかな?』
無限再生とかギミックないと許されない類でしょうに……なんか対処できる方法あるかな。
【Obsession Chronicle】を試す……ダメそう。なんとかはできるんだろうが、そのために消費するBloodが無駄に多い。消費した隙をつかれたら面倒。
ガントレットは使ったし……あぁそうだ、まだ彼女を使っていない。
いや、どちらかというと……これは順序が逆なんだろう。
【Obsession Chronicle】を使って解決できることを分かっていながらも、他の方法を使ってみたくなる……だから適当な理由をつけて“使わない”ことにしただけ。
いつもの舐めプ癖だ。
でもいいじゃないか、そっちの方が面白いし。
『聞こえてる……?』
『……』
『あ、ワタシですか!? 聞こえてますよ!!』
ドミノじゃないです。黙ってなさい……まぁ本命にも聞こえてるっぽいしいいか。
『出てこい』
化け物の身体の胸の辺り、触手が絡み合って塞がっている場所……
そこを掻き分けて、誰かが……オリジナルズのアストラが姿を現す。
彼女が纏うのは機械の装甲ではなく、白いドレス。
左手の薬指には指輪がはめられ、その目は虚ろ。
どこを見ているのかは分からないが、その右手にはしっかりと黒い剣が握られている。
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アーティファクト【Arcallom, Sword of the WorldEnd】
《特殊裁定》
・このアーティファクトは武器としても扱う。
・このアーティファクトの能力は装備時以外で発動しない。
《装備条件》
・【英雄】と【ワールドガーディアン】の職業を同時に設定しているキャラクターのみ装備可能。
《能力》
・不壊
・すべてのHP、MPと一定値のレベルを消費することで特殊スキル【Arcallom】を使用できる。ただし、こうしてHPを消費する時、HPは0にならない。このスキルを発動した時、発動キャラクターは【身体崩壊】が強制付与される。このアーティファクトによって与えられた【身体崩壊】はいかなる方法でも無効化できない。また、この【身体崩壊】によってキャラクターが死亡した場合、そのキャラクターのデスペナルティが非常に強化される。【身体崩壊】は一定時間経過後、解除される。
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シャマザリエ討伐報酬として獲得したアーティファクト。
これまで誰も条件を満たせず、装備できなかったが……
アストラの職業は【オリジナルズ:星の英雄】と【ワールドガーディアン:リベリオン】の2つが設定されていた。つまりこの剣の装備条件を満たしている。
『全滅』
『ぅ……ぁ……』
邪悪なエネルギーが剣に集まっていく。黒と赤、灰色と紫が混じったかのような……混沌としたカラーリングのエネルギー。
『【W’yharaa S’meth】……【W’ykhaï Shyro’qot】……』
アストラがよく分からない言葉を紡いでいく。
詠唱が紡がれるにつれて、周囲に集まってくるエネルギー量も増えていった。
『【Vhar’tem Qotho】……【Kryxys Noe’lha】……』
『流石にこれは見過ごせん』
ノクセスがブースターのようなものを使い、こちらへと飛翔してきた。
しかし分身はおらず、彼女1体だけだ。それなら問題はない……
『【Kaï’oh Ajhemïna】……【Shynnokh Pharao】……』
『アストラ、今助け———うぐぅっ!?』
私の身体に隠れていたもう1人の味方……ヒバナがノクサスに向けてスマホを向ける。
するとノクセスの動きが一瞬止まり、その隙をついてどこからともなくやってきた狂夜が至近距離から彼女を殴り飛ばした。
『【Warrhytime Al’noxes】…..【W’ysess Callom……】』
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『““何””それ』
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力が増していく。周囲の空気が、魔力が、大地が震えている。
予想を遥かに超えて規模が大きい。もはや何が起こるのか予想できないほど……
もしかしたら私すら巻き込んですべてを滅ぼしてしまうかもしれない。
だが、止める理由はない。
『やれ』
彼女は剣を空高くに掲げ、そしてその切先を下へと向けて———
『【Arcallom】』
【Arcallom】
“⬛︎⬛︎”の脅威を示す剣。その存在はすべての現実に“破滅”を齎す。
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