Ep.84 ORIGINS WAR /* Mech’N Awesome */
前回簡単に押し負けたロボット風情が私に推し勝てるわけもなく……激突後、巨大ロボは触手による連撃で吹き飛んだ。
『ぐがっ……!?』
『やっほ、名前忘れたけど……ロボ操縦してるオリジナルズの人。ロボもイメチェンした?』
なんか前は白基調だったけど、今は青と金が基調になってるよね。強化版?
そんなふうに私が話しかけていると、突然ロボの両肩が開いてミサイルが発射された。おーいおいおい、話し合おうよぉ〜^^
『【ワープゲート】』
『なにっ……ぐぁっ!?』
ミサイル全弾がゲートの中へと吸い込まれ、ロボットの背後に転送される。そのまま奴の背中が爆発でダメージを受けた。
「やっほー、ユキくん。手助けが必要かな?」
突然、狂夜がロボットの頭上に現れる。手助け……まぁあった方が嬉しいかな!
「よーし、それじゃあ私も張り切っちゃうね……」
そのまま、彼女は拳に力を込めて———
「【アルティメット・ブレイク】」
『ぐがっ……!?』
その拳を、ロボットの真上から叩き込む。
今凹ってなった!一瞬ロボットの頭凹ってなったよ!?
「ふむ……あんまり飛ばないね。それなら別の方法を試してみよう。キミは他の場所で戦ってていいよ! コレは私に任せて!」
笑顔でそう言い放つ狂夜。彼女はやる時はやる……誘拐だってする人間なので、まぁ有言実行してくれるだろう。
そう考えた私はその場を離れ、再びリスポーンしてきたプレイヤーたちが集まる場所へと体を移した。
「さ、じゃあキミ……たち? まぁ何人乗ってようとどうでもいいけど、私が相手するよ」
『1人とはずいぶん舐めた真似をしてくれるじゃねぇか、あぁ?』
再び大量のミサイルが放たれ、地面の狂夜が爆風で隠れた。
やがて、爆風の煙が消え去った時……そこに立つ狂夜の姿は様変わりしていた。
『ほう……なるほど、いいね!』
彼女は全身を機械のスーツ……オリジナルズと同じような見た目のものに換装していた。
狂夜が軽く拳を握って見せると、金属の指がカチリと噛み合い、小さく青白いスパークが散る。
『その技術、どこで……!』
『ウチの天才ちゃんは最近変なのを拾ったらしくてね……それを参考にしたらしい。これは中々防御力が高いし動きやすい、最高だよ! こんなのが【ミュータリウム・キューブ】で再現できるとは思わなかった!』
『そうか……やはりお前たちは敵のようだな』
『仲良くしてるよ?』
『知るか!』
アイアンタイタンの拳が地面に向けて放たれる。
轟音と共に周囲が土煙で覆われ……
『ハーイ、こっちだよ?』
アイアンタイタンがその声に振り向くと同時、既に背後に転移していた狂夜の攻撃がクリーンヒットする。
『がっ……!』
アイアンタイタンと比べれば小さな身体。しかし、渡り人はそんな身体に巨大な力を秘めている。
青と金のスーツを纏った彼女が宙へ跳ぶ。あまりにも鮮やかな、そして自然な移動から放たれる蹴りは……タイタンの耳元を破壊するだけの威力があった。
リアリティが、追いかけるようにタイタンの腕を振り上げるが——
『なにっ』
『後ろだと思ったかな……? 残念、前でした』
彼女はタイタンの胸元……搭乗部がよく見える場所の上に立っていた。
そして、その足を軽く下へと動かして———
トン、と軽い音が響く。
一拍遅れ、ガラスが割れるような音も周囲に響き渡り……気づいた時には、既にリアリティの眼前まで彼女は迫っていた。
『まずっ———』
『【灰永ノ世界ヲ照ラス光】』
広げた右手から放たれた灰色の光がリアリティを貫く。
どう見ても勝ち目のない戦闘だったが、意外にも勝者は狂夜。
一瞬の決着であった。
『……あれ、もしかしてこれ操縦できる?』
狂夜が知る限りだと、このロボットは戦闘後にポリゴンと化して消えたらしいが……どうやら今回はそうでないらしい。
イベント限定の裁定なのかは分からないが、使えるのなら使わせてもらおう。彼女はそう考え、眼前のパネルを操作する。
『…………???』
全然操作方法が分からない。
まぁそれならどうでもいいや。そう考えた狂夜はその場に散乱している珍しいものを片っ端からインベントリにしまい込み、その場を後にした。
◇戦場
「この戦場にコモドドラゴンを放てッ」
『雑魚モンスター増やしたところで勝てると思わないでよ……ねっ!』
私は足元に集っていたコモドドラゴン……コモドドラゴンって何?を触手で吹き飛ばした。ついでにこいつらを召喚したプレイヤーも吹き飛んだ。なんだったんだこいつ……
しかし、これでプレイヤーもモンスターも中々の数撃破したはずだ。そろそろイベント進行してくれても……っと、砲撃。
出所は石の浮島———ノクセスエリア。石の浮島っつってるけどアレ絶対機械だよね。
『次はそっちね。よろしい、私が相手してあげよう』
『傲慢な台詞だな。よく自己中だと言われるのでは?』
『分かってるじゃん……』
今のは効いたよ、ちょっとだけ。
『それと、私はまだお前と戦わない。特に理由も無いのでな』
『へぇ……舐めたこと言ってくれるじゃん』
「死ねーっ!」
「うおおおおおお」
「【全回転リーチ】」
「【アルティメット・ブレイヴ】」
『邪魔』
ぱしん!と足元から気持ちいい音が聞こえる。多分これでたかってたハエ共は消えたはずだ。
私は身体を前に倒し、ムカデのようなフォームをとった。本体はノクセスの眼前に位置している。
口を開け、スキル名を叫ぶ。
『【ホロビノホウコウ】』
私の口から光線が放たれ、ノクセスエリアのバリアへと衝突……しかしバリアは壊れない。
『残念だったな、アステリア。こう言えばお前は他の方法を取るんだろうが……残念なことにお客様だ、お前にな』
なにか変な感覚がして、後ろを振り返る。そこには———




