Ep.83 ORIGINS WAR /* ブラッド・ネクロリッジ・ハザード */
『あはははははっ!!!』
計画がめちゃくちゃ上手く行った時の悪役の笑い声みたいな……そんな声が思わず漏れた。
いや、でもここまで上手くいくとは思わなかったよね。まさか1人で起こせるとは。
さて、じゃあ成功したことだし……まずはこの緑のモンスターたちをしっかり配下に加えてやらないとね。
『【天堕の鎖】』
光の柱から現れた巨大なモンスターたち、その頭上に鎖が突き刺さる。
何度か抵抗してくるが、生憎この能力は10回の支配判定が存在する。その上、1回抵抗されたら次の確率を上げての再抽選だ。
再抽選する度にアイテムが削られるが……まぁ単に高価な宝石が消えたりするだけ。そんなの痛くも痒くもない。
『……多いね?』
前のイベントじゃ10体程度しかボス格は湧かなかったはずだけど……これ軽く200体くらいいるね?
まぁいい、とりあえずこれで全員配下にできた。
しかしこの……私が支配下に置いたらモンスターの種族がアンデッドに変わるのはなんなんだろうか。仕様?
それにしてはどこにも書いてないけど……
『おやまぁ、キミはいつぞやの骨ドラゴン……あの時とは別個体だろうけど、また一緒にやるかい?』
『クルルルルゥ……』
私の生えている部分にまで飛び上がってきた骨のドラゴン。見た目はアレだが、まぁこういう可愛い仕草してくれるペットは好きだ。てことでキミにも一仕事してもらおう。
『血のバレンタインといこうか ……今は年末だけどね!』
『クルァッ!』
骨のドラゴンがカスカスの咆哮を上げる。
私は吸血鬼の特性を行使し、大魔法によって大地に飛び散った血を操り……そのすべてを繋げた。
『やれ!』
『クルル……クァァァッハゥッハァァァッ!!』
もはや掠れすぎて聞こえないぐらいの咆哮。同時に、ドラゴンの口元から紫色のブレスが放たれ……それに触れた血が紫色に変色する。
そして、その変色は周囲の血へと広がっていき……やがて、イベントエリア全体にまで広がった。
『おー……いいね、踏んだらゾンビになる床でアスレチックしてるみたいだ……』
紫の血をプレイヤーが踏んだ瞬間ゾンビになっていく姿はかなり面白い。
まぁ、しかしそんなもの簡単に彼らは適応したようで……爆破魔法やらなんやらで周囲を爆破しながらこちらへと進んできている。
その中には私が立ち上げたPKクランのメンバーも含まれていて……いやちょっと待てよ。
まぁね? アルテルト陣営に所属するのは許可したよ?
でもさぁ……それで第三陣営だからって私を攻撃するのはさぁ……悲しいじゃん。ねぇ?
「うわっ!?」
「ちょ、アステリアさんの触手ちょっとキモ……」
私はなんか失礼なこと言いやがったクラメンを絞め殺した。これでキミとはおあいこってことで。
「いやマジでごめんなさい!」
「チッ……反省してまーす」
「誰ですか?」
「どう見ても敵だったから間違えました……」
「いやぁ……なんかみんな攻撃してたからいいかなって」
「俺は本当に反省しています。許してください」
「ヒャッハーッ!」
『キミたち反省が足りてないね?』
いや、雑にメンツは集めたし……ちょっと治安悪いぐらいがちょうどいいと思ってそういうメンバーにしたけどさぁ……
まぁ? あんまり世話できなかったのは悪いとは思ってるけど……やっぱり勝手に私以外に尻尾振りやがったのは許せないかもしれない。
『教育ターイム……触手プレイは好きかな?』
「される側は嫌です……」
「許して!」
「あの、今から寝返ることって可能ですか」
おぉ、そこの水色髪はいいね。ちゃんと忠誠心……はなさそうだけど、言うこと聞きそうで。
「おい、お前そもそもノクセス側に勝手に所属してただろミリピィ」
「え? なんて言いました?」
「お前だけアステリアさんに取り入ろうってったってそうはいかねぇぞ!」
『あのさ、キミたち私の触手に掴まれながら喧嘩するのやめてくれない?』
「「「あ、はい」」」
さて、しかしどうしようか。既に陣営を決めている場合はどうすればこちらに寝返れるのか……システム的にはいけるのかな、これ。
うーん、まぁでもこのゲームはそういうとこ意外と自由にやれるし……分かりやすくなんかすれば大丈夫かな、多分。
『実はこれでいけたり……【天堕の鎖】』
「うぐぇっ」
「首ィ!」
「おぐっ」
天から堕ちた鎖がクランメンバーたちの首元へと襲いかかる。この力は対モンスター用で、プレイヤーには効かないと書いていたが……このゲームはすぐにテキストが矛盾するからね、
実はいけたり……
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『一部渡り人の所属が【混沌陣営】に変化しました。』
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『おー、まさか本当に成功するとは……』
「ハイ!我々はアステリアさんの忠実なるしもべです! あんな成金のことなんて知りません!」
「どの口が……?」
「お前も人のこと言えんだろ」
「うわこの首の鎖外せない。キモ」
「ワン! ワン!」
こ、こいつらマジでうるさいな……もういいよ、とりあえず適当に他の奴らと敵対しといて。
「「「「「ヒャッハーッ!」」」」」
さて、まぁこれでひとまずある程度やっておきたいことはやった。ここからは積極的にイベントを進行させていきたい。
『どうしよっかなー……なんでも出来るなぁ……』
ヒバナの作ったアレを使ってみてもいい。しかしそれを使うには今の戦況が圧倒的に有利すぎる。
『もういいや、適当で。【星光の果ての———んぁ?』
空が暗い……これ前もあったな。多分奴だ。
おもしろい。それなら正々堂々迎え撃ってやろう。
私は全ての触手を引き絞り、そして———
『【天終・触滅】』
『【アイアンキック】』
空から降ってきた鉄の巨人の蹴り。そして私の触手による攻撃が激突した。




