Ep.80 ORIGINS WAR /* レイドナイト */
敵の数が多すぎ云々は、自動チャンネル切り替えによってどうにかなっています
あと今回も閲覧注意です。なんかSeason 4になってからこういうシーン多くない……?
◇Arterlt Plains———ザ・ラグナロク
大地は機械のモンスターに埋め尽くされている。
これは比喩ではなく、この地に発生したモンスターの数は合計で2000万体を超えていた。
金属の脚が土を削り、プロペラの唸りが空を裂き、爆ぜる火花と黒煙が視界を濁らせる。
プレイヤーたちは決して弱くない……それどころか非常に強い。
しかし…… 高威力のスキルを永遠に増し続ける最強のビルドですら、圧倒的すぎる数には敵わない。たとえ、それらが一撃で破壊される雑魚であろうとも。
押し返しても、押し返しても、次の波が即座に襲いかかってくる。
さらに言えば、モンスターたちは現在進行形で空から降り注ぎ続けている。それも、凄まじい速度で。
「リキャ回らん! ぜんぶ使い切っちった!」
「邪魔ぁ!」
「どけやてめーら!!」
邪魔だ、邪魔だと叫ぶ声。
プレイヤーたちの周囲はモンスター……そして他のプレイヤーによって埋め尽くされ、身動きも取れない者が大勢いた。
しかし、そんな大ピンチの状況で———突如、巨大な何かによって……彼らの周りに存在していたモンスターたちが潰され、吹き飛び、破壊された。
「なんだ!?」
「誰か知らんがありが———」
ちなみにそれをやったのは私だ。
正義の巨大ロボットかと思ったか! お前たちは私の養分になるんだよォ〜っ!
「あ、ちょま……ぐぺっ!」
「うお、でっか……」
触手で彼らの首を吹き飛ばす。
さて、ようやくこれで開けた場所に出てくることができた。
身体を倒しながら移動するのは窮屈だったからね……みんなももっと、ムカデみたいに移動する奴の気持ちを理解した方がいいと思う。
しかし、窮屈な時間ももう終わり。ここからは最大サイズまで昇華させてもらう。
『【みたされぬまま】』
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『アノマリー・アセンション!!!』
『【“︎⬛︎⬛︎⬛︎、淵月魔獣、神蘇の吸血鬼”アステリア】Lv.1770』
『“⬛︎⬛︎”⬛︎⬛︎⬛︎。』
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そして、さらにその先へ———
『これで最終形態だ……【ぜんぶわたしの】』
フィールドが【最終決戦】状態の時、【Obsession Chronicle】は再現できる現象規模の制限が撤廃される。
これ当初は書いてない仕様だったから、存在に気付いた時はかなりイラついたけど……まぁ今となってはそれも頷ける。
『ァア……ハァ……アハァッ……あはっ、あはははは……っ!』
呻き声のような、囁き声のような、ため息のような……自分でもよく分からない声が口から漏れた。
異様なほどに精神が昂揚している。これほどまでの喜びを感じていたのは、ここまでの人生で一度だってないだろう。それほどに、私は今……気持ちいい。
身体のいたるところから、無限とも思えるほどに触手が生えていく。その度に私の脳内でドーパミンが噴出し、イッた時の感覚が永遠に続いているかのようだった。
視界の高さは前の形態と変わらない、なんなら少し低いぐらい。
だが……横幅が数十倍になった。
私が大地を埋め尽くしている。私の身体が大地を支配している。
顔が裂ける感覚。
この形態の時は私の顔も化け物と化していたが、今……つまりは最終形態の時は、普段の美しい顔に戻るらしい。なんとなくだが、感覚でそれを理解した。
「んだあれ……マジであれがプレイヤーなのか……?」
「悪霊じゃん」
「つーかデカすぎなんだけど。何あれ」
聴覚が強化されている。私は少し離れた位置で話しているプレイヤーたちの声を聞き取った。
『ふふ……ぅ……っ! はぁっ……はぁ……はぁっ! はっ、はっ、はぁっ……!』
呼吸が荒くなる。まともに喋れない。
だが、これまで以上に身体が私の言うことを聞いてくれる。
器用に何本かの触手が3人のプレイヤーを掴み取る。女アバター、女アバター、女アバター。まぁ別に見た目がそれらしければ問題ない。今はそれどころじゃない。
3人のプレイヤーを私の本体の元へと持ってきて、そして……
『はぁっ……はぁっ……ふぅぅ……っ!』
「えっ、ちょっとなんか怖……ひぃぃぃぃっ!?」
『んぐ……んがぁ……っ!』
牙が肉を裂く感触が、歯茎全体に伝わった。
がりっ、という鈍い音の直後、赤いポリゴンが噴水のように噴き上がる。私は1人のプレイヤーの首元をぐちゃぐちゃに噛みちぎり、嚥下。
もうそれは事切れた。私は捕まえていたもう1人の足と頭をそれぞれ触手で掴み———
「え、まさか裂かれ———」
1人を、2つにした。
それらを上に掲げ、舌を出しながらその赤いポリゴンを浴びていく。血の味だ。血の味だ。血の味だ。私は舌を伸ばしながら、それらをぼーっと惚けた顔で浴び続けた。
「おらっ!」
最後に残っていたプレイヤーから、投げナイフのようなものが投擲される。しかしそんなもの私には効かない。
飛んできたナイフを正確に視認し、口で噛んでそれをキャッチ、噛み砕いた。
破片が喉の奥に入っていく。が、しかしダメージはない。痛みもゲームなので当たり前にない。
私は興奮した瞳をそのプレイヤーに向け……
「残念だったなぁ!〔ラスト・バースト〕!」
それは自爆魔法だ。私の記憶から、一瞬でその情報が引き出される。
ダメだ。まだ血が足りない。お前は死なせない。
この魔法の発動には3秒ほどのラグがあったはず、なら———
「え?」
触手が変形。先の方がぱっくりと開き———そのプレイヤーを呑み込み、内部の尖った歯で砕いていく。
姿は見えないが、味は感じられる。正直言って好みではないが、今はただ……血を飲みたい。
前のように、意識が呑まれているような感覚ではない。単に我慢できなくなっているような……そんな感覚。
足りない、足りないと、足元の触手たちも動かして周囲のすべてを喰らう。だがそのほとんどが機械のモンスター。鉄の味はするが、求めているのはそういう鉄の味ではない。
『ウゥゥ…………ヴァァァァァァァッ!!!』
しかし、敵を大量に殺したことによりBloodは完全に回復した。味は最悪だが、まぁ仕方ない。少しだけ気分も落ち着いてきた。
叫び声を出しているのはなんとなくである。いや、なんかこういうことする流れじゃん?
『皆殺しィ……皆殺しだァ……ッ!!!』
私はイキリ狂人系殺人鬼のようなセリフを吐いた。
ロールプレイです!許して!
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『アノマリー・アセンション!!!』
『【“淵月大悪霊主、神蘇の吸血鬼”アステリア】Lv.17700』
『“⬛︎⬛︎”⬛︎⬛︎⬛︎。』
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『オイ!! この《悪霊》,,…。《《ゲームバランス》》知らない, カ?』
『《最低》!! 《最低》’n 《《裁定変更》》』
『《特殊裁定》プレイヤー:【アステリア】(PNo.00,006,108)が本イベント中に死亡、あるいは逃亡した場合、【スキル発動不可】【魔法発動不可】を1週間強制付与する。』
『キョキョキョキョキョ!!!』
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【淵月大悪霊主】
この状態のアステリアは、ゲームバランス崩壊を阻止するために“分身”系統の能力が発動できなくなる。
元々アカリはこういう露骨な調整をするつもりはなかったが、そうしないとヤバいことに気付いたので仕方なくやった。
なんなら最終形態以外でも【アセンション】で変身してたら分身できなくなった。ここまで露骨に1プレイヤーを狙い撃ちするのは始めての事例。
正直に言うと作者が扱いきれなくなったからです……
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