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Ep.77 7

◇???———クリエイター



『オリジン、状況は?』


 周囲には何もない、どこなのかすら分からないような場所で……機械のスーツを身に纏った女が、無線機能を使用してオリジンへと問いかける。



『正直に言って予想外、といったところだ……まさか私も、アルテルトがここまでやってくるとは思わなかった』

『そうか……そちらに問題はあるか?』

『いや、ない。しかし……懸念点がある』

『ほう、君にしては珍しいな?』


 クリエイター。それはオリジナルズの創設者。


 まだ、誰もその素顔を見たことはない。



『前にアストラから通信で送られてきた情報……アステリア、という渡り人についてだ』

『ふむ、なるほど。詳しく聞かせてもらおうか』

『彼女の根源は非常に強い。おそらく“破滅”とも戦えるほどに。だが……その根源が今回は悪い方向に働いている』

『というと?』

『アストラの精神が、おそらく彼女に破壊された。アストラは才能こそあるが、心は脆い……そこを突かれた。今や彼女はアステリアの傀儡だ』

『問題はないだろう、どうせ私たち2人以外……いや、リサーチャーも含めて3人以外は……すぐにすべてを忘れることになるだけだ』


 オリジン。それはクリエイターが最初に誘った仲間。

 彼女の役割は多岐にわたる。そして、その最終目標は———【⬛︎⬛︎】の完全消滅。



『いや、それは分かっている。分かっているが……“渡り人の支配下になる”ということは大きな意味を持つ。最終システムの機能には……それを参照するものがあったはずだ』

『あぁ、そういえば……それなら少しマズいな。彼女は私たちにとっても重要だ』

『アステリアは彼女に何かをやらせようとしている。どうやらアルテルトとの戦いにも参加するという情報も入った』

『そうか、それなら……いや、やはり問題はない。渡り人が来てしまった以上、多少の問題は受け入れるべきだ』


 その冷たい言葉を聞いたオリジンは、一瞬無言を返し……



『それもそうだ。元よりアステリア……そして———には私も期待しているからな』

『———? 誰だそれは?』

『彼女は……』








◇リアリティ・カオス本部———リサーチャー



「なぁ、今それイジる必要あるか? まだそんなこと起きないだろ?」


 地上から帰ってきたジョーネスが、機械スーツ姿の女に向けてそう問いかける。

 ぐい、とヘルメット越しの顔がジョーネスの眼前にまで近づけられ———



『ふぅ! 相変わらず君たちは楽観的だな。渡り人たちをどれだけ軽く見ているんだ?』

「いや、あの白髪の魔王みたいな奴がいるのに……軽くは見てないぞ。そんな風に私が見えるのか?」

『あぁ。渡り人の好奇心は“破滅”よりも世界を破滅させかねないだろう。だから今のうちに調整しておかなきゃ……というわけだ、分かったか?』


 オリジンズ・インフィニティの制御装置のパネルをいじりながら、リサーチャーはそう呟く。



 リサーチャー。それはオリジナルズ随一の頭脳を持つ者。


 いち早く真実に気づき、リアリティ・カオスへと寝返った人物。

 いち早く真実に気づき、クリエイターとオリジンとのラインに割って入った者。



『よーし、これでひとまずは持つだろう。少なくとも一回発動するまでは絶対に大丈夫だ』

「本当か? お前の作った訓練部屋がボコボコで今にも壊れそうで、私は心配なんだが……」

『まだ持つだろう。大気圧の1000倍の圧力にも耐えられる……外部からの攻撃すら耐えてくれるほど硬———』


 ドォン!と大きな音。



「おい、壊れたぞあの部屋」

『ふぅ! なんて日だ! でもそういうこともある……次からは改良すればいい』

「“次”がないこともあるんだぞ、この世界には……」

『大丈夫だ、すべてが終わったように思えても問題ない。歴史上、とんでもない外敵によって人類が完全に滅ぼされた事象は見当たらない……だろう?』

「それは創作物の話だろ!? お前真面目にやってるのか!?」

『ははは、私ほど常に真面目な奴もいないだろうな!』






◇アウロンのニュー・クランハウス———リアリティ



「おや、あなたがいるとは珍しいですね」

『気まぐれ……と言いたいところだが、少し問題があってな。一応伝えとこうってわけだ』

「問題?」

『あぁ、あの金髪(アウロン)はいるか?』

「愛しの魔王様を探す旅に出たそうです」

『あぁ、そう……』


 クソつまらなそうな顔がヘルメット越しでも分かる。モーヴはその時の彼の顔をそう評した。


 リアリティ。それは双子の片割れ。


 ロボットの扱いに長けているが、あくまで扱いに長けているだけ。

 アイアンタイタンを修復している今は、もはやそこまでの戦闘能力を持っていない。



『じゃあ一応アンタに伝えておくが、俺たちオリジナルズのメンバーの1人……アストラと連絡がつかなくなった。前からついてはいなかったんだが……少し前、完全に信号が途絶えた』

「へー。あなたから聞いた話だと、すでに3人くらい連絡がつかなかったらしいですけど……」

『あー、クリエイターとオリジン、あとリサーチャーの3人な。あいつら、なんかある時を境に俺たちとの連絡を絶ったんだよ。で、気づけば俺含めた残り4人が地下で拘束されて……ってな』


 それもう組織としては終わってないか?

 モーヴは訝しんだ。



『まぁ、伝える意味があるかは知らんが……一応それを言いにきただけだ。じゃあな』


 そして、彼は窓から飛び降り……スーツの足元からエネルギーを放出し、空へと飛んでいった。



「……まぁ別にリーダーには伝えないでいいや」








◇???のオリジンホール最下層———カオス



 カオス。それは双子の片割れ。


 未だ地下に封じられ、解放の時を待っている……








◇オイレリス———トラベラー



「え、何あの装備。強そう」

「あんな装備あったっけ」


 街を堂々と歩く、機械のスーツを着用した女。



 トラベラー。それは自由な放浪者、あるいはオリジナルズの斥候。


 彼女は地下に幽閉されたが、しかしすぐに自力でそこから抜け出した。

 だが、未だ力の大半は封じられたまま……解放するには渡り人たちの協力が必要だった。



『……』


 しかし、彼女は無口なのでそれを中々伝えられない。



『……』


 長い時が流れ、しかし力は封印されたまま。

 お願いすれば簡単に解き放たれるというのに、それをしないでここまで来た。



『……』


 そして、それは今後も特に変わることはない……



「ん? ちょっとそこのキミさぁ……アタシの実験に付き合う気はないかな? 今スマホの試験中でさ、色々試したいんだよねぇ……」


 ……かも?









◇神蘇国エル・レイヴィア———アストラ


 アストラ。それは———






「装備」

『……』





               ———淵月の奴隷。



 黒き剣をその手に携え、彼女は運命の刻を待っている。

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