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Ep.68 ラピスちゃんクエスト 〜⬛︎⬛︎⬛︎の花嫁〜

今回は日本サーバーのメインストーリーについての話です

◇反転世界樹イリューヴァ———LapiS.Lazuli



「ねぇねぇ、ラナちゃん……私をどこに連れていくつもりなのかな……?」

「まぁ慌てるでない、勇者よ。そなたには聞かせたい物語があるのだ……今はそれを語るに相応しい場所へと向かっておる」



 枯れた巨木、その周辺に存在している小さな村。


 認められた者以外は存在にすら気づけないその村の近くには、小さな……しかし神秘的な森があった。

 ラピスを先導する人物の名はラナ。この村……勇者の村イリュミナスの長老である。



「わたし、そんなの興味ないんだけどな……」

「慌てるなと言っておるであろう……すぐに終わるから黙って聞きなさい」

「はーい」



 【勇者】のジョブ限定クエスト……【忘れ去られし伝説の剣】を進行していたラピスは、その途中でラナに出会った。

 剣の元へと案内すると言った彼女は、その前に寄り道がしたいと言って今に至る。



「着いたぞ、ここじゃ」

「壁画……かな?」

「そう、古代人類の勇者……その生涯、そして使命を刻んだ壁画。それがここにあるのだ」

「へー」

「“魔王”オルダリウスと太古の勇者、その戦いの結末をお主に伝える時が来た。三つの神殿にて既にその断片には触れておるであろうが……これより話すのは古代の勇者、そしてその盟友……僧侶の少女の物語じゃ」

「そうなんだ……」


 髪をいじりながらそう返答したラピスを冷めた目で見つめる老婆……ラナ。

 しかし、これでもラピスは多くの功績を上げ【勇者】の職業を手にした渡り人。



 ラナは自分の心を奥底にしまい込み、ラピスに向けて伝承を語った。


 ラピスの視界が過去に飛ぶ。





◇伝承



 そこは小さな、小さな島。

 かつては繁栄していたその楽園はいまや焦土と化し———勇者、そしてその仲間たちが地面に倒れ伏していた。


 それを見つめる巨影……“魔王”オルダリウス。

 その声は、地鳴りのように低かった。



『“勇者”……哀れな民たちに唆され、その身を無駄に散らしたのは何故だ? お前が我に戦いなど挑まなければ———こんな悲劇は起きなかったというのに』


 邪悪な笑みを浮かべ、オルダリウスは勇者に向けてそう言い放つ。

 これを見たラピスはユキちゃんの笑顔みたいだなと思ったらしい。



「黙れ……お前がこの島を……そして太陽の昇る大陸を手中に収めようとしていたのは既に分かっている……! 私が挑まなければ、もっと被害は拡がっていた……!」

『ほう? では、ならば———なぜお前は我に挑んだんだ。我に勝てる道理など無いであろう、その事実を知ったなら……別の地に逃亡でもすればいいではないか』

「一度は私も考えた。だが……」


 勇者の女は魔王を睨み、口を開く。



「私はこの地で育った。だから……見捨てるなんて出来ない!」

『なんともつまらない理由だな。それだけで命を捨てられるとは、よほど死にたいと見える』

「死んでもいいさ、お前を殺せるなら……っ!」


 勇者がその手に持ったボロボロの剣を魔王に向け、再び立ち上がる。



「俺たち、も……まだ、やらなければ……!」

「あなただけを、し……死なせたりしない!」

「ぐ……はぁ、はぁ……まだ戦えるぞ、魔王!」

「この地を守る、のが……僕たち、の……使命だ」


 4人の仲間たちも勇者と共に立ち上がり、魔王へと戦意を向けた。


 勇者たちの身体はボロボロに焼け焦げ、斬撃の痕が深く刻まれている。

 血も止まらず、立っているだけで精一杯。しかし、誰も武器を手から離さなかった。



『ククク……ぐぁっはっは! 面白い……貴様らの無駄な足掻き、この我がしっかりと受け止めてやろう……』


 くいくい、と指で挑発する魔王に向かって全員が襲い掛かる。しかし……その誰も、魔王に刃が届くことはなかった。



「うぁ……ぁ……かはっ!?」

『無様だな、勇者。お仲間は全員倒れてしまったぞ?』

「ぐ……がぁ……っ!」


 首を掴まれ、ボタボタと血を流し続ける勇者。だが、その眼差しは未だ魔王を貫いている。



『ふむ、これが話に聞く“起源の石”か?』

「や……めろ……!」


勇者の額に埋め込まれた白い石。魔王はそこに向けて手を合わせ、そして……その石を抉り取った。



「あがああぁぁぁぁっ!?!?!?」


 ピシ、ミシと音を立ててオリジンストーンが彼女の額から抜き取られていく。同時にそこからは血が大量に溢れ出した。



『ふん、用済みだ』


 ドサ、とその場に投げ捨てられる勇者の死体。もはや生命の気配はなく、完全に彼女は息絶えた。



『これが……起源の……』


 魔王はストーンをまじまじと見つめ、そしてそれを自身の額に近づけていく。やがて引力に引き寄せられるようにストーンが魔王の額に埋め込まれる。



『グ……グォォォォォォォォッ!!!!!』


 周囲が白と黒の波動で吹き荒れる。


 “無”のオリジンストーンの力を手にした魔王は歓喜に満ちた笑顔を浮かべ、高らかに笑った。



『クククク……クハハハハ! 力が漲っておる……ククク、クハハハハ! もはや敵などおらぬわ!』


 魔王は力に歓喜し、両手を振って空を見上げた。



 だからこそ、気づかない。

 勇者の仲間、その1人……僧侶の少女がまだ諦めていないことを。



(まだ、やれる……私がやらなきゃ、誰も……誰も救われない!)



 その様子に残りの仲間も気づいていく。


「……ミ、ミナ?」

「お前……何を……」

「ま、まさか……」


 その声はあまりにも小さく、魔王の笑い声にかき消される。



 僧侶の少女も、小さな言葉を溢す。


「ごめんね、セラ……本当は知ってたよ、私を守るために勇者になったこと……」


 この世界では、ほとんどの人間が生まれた大陸から出ることができない。勇者ぐらいでなければ外に出られないのだ。


 勇者は僧侶の少女を外に逃すために勇者になった。しかし、それは魔王との戦いの責務を負うということでもある。



 少女は勇者が魔王に殺されることを悟り、彼女を守るために旅に同行した。


 それが、勇者の願いではないとしても……彼女の戦いで、少しでも助けになりたかったから。



 だが、結果は勇者の死で終わってしまった。


 だから———



「今、私もそこに……」


 勇者の死体を抱きしめ、勇者の剣を僧侶がその手に納める。

 光の力に満ちた剣……僧侶の秘奥の代価としては充分だ。


 彼女はその剣を自身の腹へと突き刺し、その手を魔王に向け……詠唱を始める。



「【失われし光を抱き】【途絶えた命脈を手向け】……」


 詠唱は、続く。



「【落ちた(あかり)をひとつ捧げ】【別れの息を結び】」

「やめろ、ミナ……その技は……」


 仲間の声は、既に遠く……微睡の中に。



「【影の道を閉ざし】【古き境をひらき】———」

『クハハハハ……ぬ? そこの僧侶、何を……』


 魔王がその声に気づき、僧侶へ向き直るが……もう遅い。



「【我が身を門と成し】【永劫に閉じ坐せ】———」

『まさか、貴様———』


 そして、最後の言葉が紡がれる。



「【最果て、ゆらぐ灯火の抱き歌】」

『待て、やめ———』


 僧侶を中心に、島全体が暖かな光に包まれる。

 僧侶の手から実態を持った光が溢れ出し、魔王の心臓に突き刺さった。



『ぐ……がぁぁっ!? 貴様、この我を封印するというのか……!?』

「わた、し……あの、こ……ま、あい……か、やだ……ひ、ひひ……は……いま、そこに……セ……ラ……」

『やめろ……我は魔王であるぞ! このオルダリウスが貴様のような小娘に、封印されるな……ど……』


 彼女の瞳から、一筋の涙が溢れ———それが落ちる前に、僧侶と魔王の動きが止まる。



 僧侶の身体は光の粒となって空に昇り、やがてそのすべてが……彼女の生きた証は消え去った。








 やがて、勇者……そして勇者の剣はイリュミナスへと持ち帰られた。


 彼女の遺体、そしてその剣は同じ場所へと埋められ……そこは勇者と僧侶の墓として扱われた。


 その剣は彼女たちの———勇者と僧侶の生きた証なのだと……そう、今でも伝わっている。








◇壁画前———LapiS.Lazuli



「へー」

「もう少し、何か反応してくれると思っておったのだがのぅ……」


 まぁユキちゃんならもう少し反応してくれたんじゃないかな?

 彼は意外とそういう物語が好きだ。

 心は打たれるだろう……まぁ打たれるだけだろうけど、と彼女は思った。



「わたしは他人に興味ないよ……もちろん、この世界にも……」

「……なにか一つぐらいは、お主にも大切なものがあるのではないか?」

「ふふ、それはね……あるよ。でも、あなたには教えない……ふふふ……」

「……そうか」


 ため息をつきながら、老婆は壁画の右側へと足を進めていく。数分歩いた先に、光が差し込む場所へと2人は辿り着いた。



「ここが勇者たちの墓……かの(つるぎ)は長き年月の果て、地上に姿を現した」

「あの、地面に刺さってるやつ……だよね?」

「うむ、そうじゃ。勇者の資格を持つお主には、あの剣を手に取る権利がある」

「ふふふ……じゃあ、貰っていくね……?」


 そそくさと歩き出したラピス。それを見た老婆は、彼女をすぐに呼び止めた。



「まぁ待て勇者よ。あの剣を抜くにはそれ相応の強さ……体力(・・)が必要になる。お主に、あの剣に相応しき力はあるのか?」

「ふーん……? じゃあ……【限界突破】」


 柔らかな風がラピスの周囲で巻き起こり、彼女のレベルが137にまで上昇する。これで体力……つまりはHPも増えたはずだ。



「よっ……と」


 道を進み、草を掻き分け、石を飛び越え……ラピスは剣の元へと辿り着く。

 そこから放たれるオーラは凄まじく、そこに神聖な空気が満ちているのがすぐに分かった。



 そして、彼女はその剣を両手で握り———



「ひぐっ!?」


 凄まじい痛みに襲われた。


 このゲームにおいて……このような“痛み”は通常、再現されていない。

 しかし、こういったイベントで……AIが『問題ない』と判断した相手に対してのみ、没入感を目的に痛みが再現される。



「ぐ……うぅ……痛い……」


 ラピスはその痛みに顔をしかめる、が……

 即座に自分が愛する人———ユキの顔を思い浮かべ、その痛みを軽減……というかゼロにした。



「ふ、ふふ……」


 HPがぐんぐん減っていくのが分かる。1200,1100,1000,900,800……



 そして、100を切り……残りHPが70になったところで確かな感触。


 同時に、暖かい光が満ち———ラピスの周囲で激しい風が吹き抜けた。



 その手に握られていたのは、アストライアなどという魔剣とは違う神聖な輝きを放つ一振りの剣。

 長きにわたり大地に眠り、勇者とその盟友の想いを宿した伝説の剣。



「ふ、ふふ……抜けた……」


 痛みから解放されたラピスは、地面にへたり込みながらも満足げな笑みを浮かべる。減ったHPはすぐに自身の能力で戻っていく。



「これで、欲しかったのは……全部手に入れた……」


 ラピスはその剣を天に掲げ、光に透かしてじっと見つめる。特になんの感情も湧かなかった。



 その様子を、数歩離れた場所で眺めていた老婆……ラナが、静かに口を開いた。



「よくぞ剣を抜いた、勇者ラピスよ。やはりお主は選ばれたものであったようだ」

「ふふふ……ありがとう……」


 じめっとした笑顔を浮かべるラピスに、ラナは顔色を変えず言葉を継ぐ。



「しかし、まだお主に聞かせる話は残っておる」

「えー……」

「そう言うな。これは……この剣を扱う上での宿命のようなものじゃ。古代の伝承は、その先まで語っておる」


 ラピスはため息をつきながらも、渋々といった様子で再び耳を傾けた。



「……ふむ。先代の勇者が魔王オルダリウスに敗れたのは、先の物語で語った通りじゃ。勇者は命を散らし、僧侶は己を代償に魔王を封印した」

「うん」

「だが……もし、勇者の剣が悪しき心に染まればどうなる?」

「……わたし、悪しき心なんて……持ってないよ?」


 ラピスの言葉に、ラナは冷めた目を向ける。


「お主のような者をこそ、古代の民は悪に堕ちた勇者と呼ぶのだろう」


 チクリとした言葉を言い放ち、ラナは続ける。



「この剣は、持ち主の心に感応する。勇者の魂と僧侶の光の力によって、この世の闇を断つ聖剣となり得るが……もし、剣の持ち主が悪に堕ちたならば、剣は闇に染まり……災いの剣へと変貌する、と予言にはある」

「ふーん……」


 ラナは厳しい眼差しで、剣を抱きかかえるラピスを見つめた。



「勇者よ、お主の心一つで……この剣は世界を救う光にも、世界を滅ぼす闇にもなり得る。忘れるでないぞ」

「はーい」


 無感情な顔、そして声でラピスは答えた。


 そして、それをラナは険しい顔で見つめていた……

【オリジンストーン】

アステリアたちは本来の使い方をしようとしていて、勇者や魔王は別の使い方をしている。

この額に埋め込むやつはプレイヤーでも出来るが、アステリアとヒバナは気づいていない。


【最果て、ゆらぐ灯火の抱き歌】

僧侶の極限(リミット)スキル。

この過去編ほどの効果(千年)はないが、自身の命とアイテムを捧げて対象を一定時間封印する。封印中はリスポーンできない。

すべての耐性(強力なオリジンスキルを除く)を無視するのでめちゃくちゃヤバい。これメインで戦略立てられたらアステリアでも厳しい。


【勇者の剣】

以下の条件を満たしていれば獲得可能。

・【勇者】の職業である

・自身のみで獲得できる【英雄補正】が5以上である

・バフ無しの状態でHPが1300以上(【限界突破】状態でレベル130以上)である(抜いている最中は回復無効)


アステリアが勇者だったら最後の条件は簡単に達成できるが、英雄補正がギリギリになる。




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