Ep.67 Noxes Knockout:そのばん あうろんは、こころが いたくて なきました。
『チェックメイトだ』
『……う、動けない……まさか……!?』
そのまさか……【魅了の魔眼】である。
別に最適な場所で使おうとしてたって訳でもなく、ただ単に存在を忘れていたから今更使ったのだが……これボスにも効くのやっぱりやばくなーい?
さて、効果が切れる前にとっととワンパンして退場ッ!してもらおう。今の私の最大火力はなんだろうか……やはり魔法か?
前に巨大ロボ止めた時は10秒ほど動きが止まっていたはず。ならそれぐらいの猶予はある……いや、もう面倒だから全部使うか!
『【コトゥーグ・ラッシュ】』
『ぐっ……!』
巨大すぎる触手による連撃がノクセスを襲う。一本一本が例の巨大ロボのパンチと同レベルのサイズだし……流石に痛いだろうねぇ!
なんならアストライアで小突いて【魂痛】も付与しておこう!
『【孤剣】』
『あがっ……ぐぎぃぁぁっ!?』
黒い剣がマネキンの心臓部を貫き、ノクセスから苦しげな声も聞こえてくる。これ普通に耐えたあの操縦者のメンタルはどうなってるんだよ……
『やろうか、連携。【桜吹雪】』
「【Killing Draw】」
桃色のエフェクトと黒雷のエフェクトが混ざり合う。防御無視ダメージと6倍ダメージの特性が合わさったその一撃は凄まじく、その周囲が圧倒的な光で満ちる。
そして———
『ん?』
「お?」
パキッ……と、軽い……しかし確かな音がマネキンから発せられる。
音の数は増えていき、やがて音と共にノクセスの身体にヒビが入っていく。これまでの傷とは違う……“不可逆”だとなぜか理解できるヒビ。
『……ふ、フフ……ははは! 見事だアステリア、そしてモーヴ……!』
『アウロンは?』
『……? 誰だ?』
そのばん、あうろんはかなしくなってなきました。
……いや本当に可哀想ではあるけど、戦場から離れたのが悪いってことで。
『お前たちは私に力を見せてくれた……こんな“戦闘”は久々だ』
『もう戦う意思ないだろうから聞くけどさ、痛みはどうしたの?』
『あぁ、それはなんだろうな……話し始めてから痛みが退いているんだ。なぜかは知らん』
……?
どういう理屈なんだそれ?
まさかストーリーで大事な会話の場合、遮られないために勝手に軽減してる……とか、そんな訳ないよね?
『まぁ、その話はどうでもいい。アステリア、私はな……お前に期待しているんだ』
『期待?』
『あぁ……モーヴもそうだ。他にも何人か目は付けているが、渡り人は存外可能性に満ちていることを……今、改めて理解したのだ。そして、期待した』
「へー」
モーヴちゃんは露骨に興味なさそうである。私は結構気になるね。なんかこのマネキン色々知ってそうだし。
『まさか英雄的な活躍期待してるわけじゃないよね?』
『そんな訳ないだろう。お前ほど腐った奴は中々いない……まだ改心する可能性はあるが、私はそんなものに期待などせん。ただお前がこの世界で暴れることに期待しているだけだ』
『へぇ?』
『そもそも私は渡り人に善性など期待していない。百剣天帝も、リアリティ・カオスも、お前たちをここに呼んだネクサス・ユニオンも……』
『ちょっと待て』
ネクサス・ユニオンってなんなんだ? アルテルトも言ってた気するけど、ネクサス・メガロポリスの管理組織っぽいぐらいしか情報ないんだよね……
『なんだ、知らないのか? だが私が教える義理もない。渡り人には謎を残しておいた方がいい……百剣天帝もそう言っていたのでな、私は言うべきことしか言わん』
『私はもっとネタバレして欲しいけどね』
ノクセスの身体がさらに崩れてゆく。ボロボロになった灰色の身体が割れていく。
まずはノクセスの右腕が落ちた。断面からは青いエフェクトがかかったポリゴンが流れ出している。
『青……?』
『ん、なんだ知っているのか? なら言ってしまおうか、私が死ぬことはないぞ』
青いエフェクトがかかったポリゴン、それはプレイヤーと一部のNPCのみが持つもの。
そして、それは『リスポーン可能』という事実を示している。
『さて、では時間切れだ。また会おう、アステリア……そしてモーヴ』
『おい待て、まだ話は———』
ゴロ、とノクセスの頭が地面に落ち……周囲の光景が元に戻る。同時に、私の姿も元に戻った。
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『“戦闘”の根源は昇る淵月を見上げた』
『オリジンモンスター【“⬛︎⬛︎堕天”高貴なる戦闘機構、あるいは⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】撃破。』
『これが私たちのオリジン。』
『グランドクエスト【オリジンズ・ウォー】進行』
『メインクエスト【Iron Chase】進行』
『シークレットクエスト【オリジナルズ・マスタープラン】進行』
『シークレットグランドクエスト【“⬛︎⬛︎”】進行』
『“盲信”が目を覚ます……ネミシア・イントリュージョン!』
『特殊称号獲得:【“戦闘”のオリジン】【⬛︎⬛︎】』
『【起源神話】が上昇。』
『1,000,000,000,000 ゴル獲得(パーティで分配されます。)』
『“⬛︎⬛︎”の眼差しが世界に向けられた。』
『カウントが 進んだ。』
『現在の カウントは 666657。』
『⬛︎⬛︎まで あと 9カウント。』
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クソ、もうちょい色々聞きたかったが……致し方なし。
ひとまずはこの島にあるであろう壁画、そしてオリジンストーンの回収に入ろう。
オリジンストーンがこの島にあるのはレーダーの反応から既に分かっている。モーヴには気づかれないよう、しれっと奪い取って……殺した方が早いか?
「……いや、まぁいいや」
「?」
なんかあんまり殺す気になれないや。
まぁアウロンだったらすぐ殺してたけど……
「さて、じゃあ探索しようか。多分あの中心のとこから下に降りる……のかな?」
「えぇ、死んでしまったリーダーのためにも……成果を持ち帰ります」
アウロン、南無……
◇Noxes Area地下空間———アステリア/Mauve
『待っていたぞ、アステリア。そしてモーヴ』
中央の地下に通じるエレベーターに乗り、浮島の内部へと入り込んだ私たちを迎えたのは———灰色のマネキン、ノクセスであった。
『あぁ、安心してくれ。別に今戦おうなどとは思っていない』
「……まぁそれならいいけどさ」
「あの、勝ったんですから何かしらの報酬があってしかるべきだと思うんですよ」
「そうだそうだー!」
『ふむ、なるほど。分かった、ならば……こちらへ着いてくるといい』
そう言って、コツコツと音を響かせながら地下空間の奥へと進んでいくノクセス。
2人でそれに着いていき、やがてひらけた場所にたどり着いた。
「あー、そういえば壁画がなんとかって言ってたっけ」
「私たちの当初の目的はそれですね」
正面には巨大な壁画がその存在感を主張している。
『この壁画は世界のすべてを記している。この世界の成り立ち、全貌、脅威……何もかも』
◇壁画(一部抜粋)
力力力力力力力力力力力力力力力力力力力力力
星
鍛 星謎星 神
鍛治星 星 神星神
星 魔 虚 神
魔力星 虚無星 謎
星 星 謎星謎
謎
力力力力力力力力力力力力力力力
力力空空空空空空空島空空空空空空空力力
力空空空島空空空空空空空空空空島空空空空力
力空空空空空空空空空空空空空空空空空空空力
力海海大陸海大陸海海大陸海海大陸海大陸海力
力滝岩岩岩滝岩岩岩岩岩岩滝滝岩岩岩岩岩滝力
力滝力力力滝力力力基光基滝滝力力力力力滝力
力滝岩岩岩岩岩岩岩地基地岩滝岩岩岩岩岩滝力
力岩岩岩岩岩岩岩岩岩枯岩岩滝岩岩岩岩岩滝力
力空空空街空空街空空木空空空街空空街空空力
力力空空空空空空空力空空空空空空空力力
力力力力力力力力力力力力力力力
謎 謎 謎 謎
謎 謎謎 謎
謎 謎 謎 謎 謎謎
謎謎
謎 謎 謎
謎 謎
力力力力力力力力力力力力力力力力力力力力力
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
◇広間
「あー……なるほど、世界観はこんな感じなのね」
いや、私の脳内を文字通り読んでる人たちには分かりづらい書き方かもしれないが……壁画自体は結構、この世界の設定をちゃんと教えてくれている。
円盤型の世界、その中心にオリジンズ・インフィニティとそれを守るリアリティ・カオスの基地。空島も描かれている。
気になるのは……下にある街らしき描写と枯木。あと⬛︎の部分。
枯木に関しては世界樹的な感じな気はするんだけど、日本サーバーには【反転世界樹イリューヴァ】というマップがあり……いや、となるとやっぱりこれ世界樹じゃないのか?
『私からこれを説明することはできない。なぜならお前たちの楽しみを奪うことになるからだ』
「いや、いいよ。別に考察は好きだし」
「私は興味ないです」
これ絶対世界観おもろいけどなぁ……
『ふん、まぁこれはただの前座だ。これからお前たちに報酬を渡そうか』
「ほら、早くしてくださいよ」
『まぁ待て。2人いるからな……お前たちはどちらが欲しい?』
そう言って彼女は両手を広げ、私たちに見せてくる。
左手には黒い石。右手にはやたら凄そうなオーラを纏っている剣。
「あれ、闇なんだ。てっきり風かなと思ってたよ」
『アステリア、お前は知っているだろうが……これは闇のオリジンストーン。かつてのオリジンズ・インフィニティから欠け落ちた力の断片であり、不完全ながら無限の力を秘めている』
「なんだか凄そうですね。で、その剣は?」
『これは終幕神と彼らが呼ぶ存在から生まれた存在、オリジンモンスター……それが死ぬ時に生まれたアーティファクトだ。これを持つ者は凄まじい風を操ることが可能となり、速度が非常に向上する。ただし、扱うには英雄の器と剣王の地位が必要だ』
なるほど、あの誰も装備できなかったアルカロムとかいう武器と同じシリーズ……しかしこっちはまだ使える人も見つかりそうだ。
「私は剣王です、ならこれを貰うほかありません」
「じゃあ私はストーンを貰うね。まぁどっちにせよこれ貰う予定だったけど……」
『さて、ではこれで私の役目は終わりだ。壁画のことを空の住人に伝えるなりなんなり好きにせよ』
ノクセスがその言葉と共に奥へと消えようとする。
が、数歩進んですぐに彼女は止まり……
『アステリア、お前に頼みができた』
「なに?」
『いつになるかはまだ分からないが……アルテルトが大規模な戦いを引き起こそうとしている。アステリア、お前にはアルテルトを倒す戦いに参加してほしい』
「……なんで私が? そもそもアルテルトとは前に協力してるんだけど?」
『それは知っている。だが、お前は渡り人だ……“面白そう”と思えば簡単に裏切る、そうだろう?』
「心外だなぁ」
『これはここだけの話だが……この戦い、アルテルトの敵として戦う方が面白くなるはずだ。これを聞いてなお、最後に決めるのはお前だが……その時が来たら、お前の加勢を期待している』
そう言って、彼女は再び後ろへと戻ろうとする。だが、ノクセスが言いたいことを言ったのなら……私だってひとつぐらい質問していいだろう。
「ノクセス。」
『なんだ?』
「世界の守護者ってどんな奴ら?」
『ふむ、その質問は答えにくいな……まぁ、お前の意図を考えると……“オリジナルズ”と“リアリティ・カオス”が該当するだろうな。他にも何人かはいるだろうが……そこまでは無理だ』
「なるほど、ためになる情報ありがとう。この情報は今後に活かすよ」
『ふむ、そうか。では』
そして、私たちの会話は終わりを迎えた。
◇地上———Auron
「……ぐすん」
そのばん あうろんは、こころが いたくて なきました。
【メインクエスト】
それは第一の物語。“大敵”による戦いの幕開け。
日出る大陸では、封印されし“魔王”が目覚めの刻を待っている。
自由の大陸では、“商売”に狂いし魂が金で世界を征服せんとする。
祈砂の大陸では、かつての“破壊”が魔物に力を与えんとする。
そして、他の大地でも物語は進んでゆく。
【グランドクエスト】
それは第二の物語。“オリジナルズ”による無限の力を巡る抗争。
星天は淵月に染まり。
現実は黄金と手を組み。
混沌は行方知れず。
旅人は各地を歩み。
研究は未だ寝返ったまま。
創造は星の果てに。
“起源”は天より世界を眺め続ける。
そして伝説が新たに始まる。
やがて世界は、彼らの選択に委ねられる。
【シークレットグランドクエスト】
それは第三の物語。“⬛︎⬛︎”によるすべての破滅。
“私たちを裏切ったのか?”
“666666”
“これより ⬛︎⬛︎。”
“私たちの黄昏”
【???】
それは第四の物語。“百剣天帝”による夢創神への叛逆。成功するかは誰も知らない、行き先も見えぬ、彼女だけの孤独な戦い。
“ようこそ、アステリア。”
“ははははは! あっははははは!!”
“ただの実験、あるいは娯楽ってとこかな?”
“意味? そんなの無いよ。ただの思いつきさ”
【???】
“私がすべてを支配する”
【予告】
Season 3 問題ナク 完了。
Maintenance to ver 4.0ノ ノチ
Season 4:前進 ヲ開始。




