Ep.62 効率のためならクランリーダーを肉盾扱いしたっていい———そうは思いませんか、アステリアさん。
◇壁画を見てから少し後、村の広場で———アステリア/Auron
「探索するならパーティメンバーはもう1人くらいいた方がいいだろう、そう思ったからもう1人私のクランから人を出すことにした」
「いるかなぁ、それ……」
「私の護衛として必要なんだよ。私は何度死んでも復活できるが、復活する度にクランメンバーの誰かが代わりに死ぬ……できればその回数は減らすべきだろう?」
「なるほどね」
そして、彼女の後ろから誰かが小走りでやってくる。
「モーヴと申します。あの時はよくも頭から食べてくれましたね」
「よろしく、モーヴちゃん。訂正させてもらうけど、頭から食べてはいないよ。頭を潰してそこから血を飲んだのは事実だけど」
アウロンがここに呼び出したのは黒髪の剣士、モーヴ。
アウロンの話によると、どうやら彼女はクランメンバーの中で最強らしく、前のイベントで私を少しヒヤッとさせてきた人物でもある。
「まぁ、この話はこれくらいにしましょう。前のことを引きずる理由も特にないので」
「そだね」
「思ってたよりすぐ打ち解けた……もしかしてこの2人は相性いいのか……? いや、でもそんなことあってもらっては……ブツブツ……」
アウロン、陰気漏れ始めてるよ。
◇出発———アステリア/Auron/Mauve
「お姉さんたち、行ってらっしゃい!! わたし、ここで待ってるね!! がんばってー!!」
目をキラキラ輝かせた少女……マリちゃんが私たち3人に手を振っている。マジで可愛いね、この子。
「で、そっちはどのくらい探索してるの……まさかまだそんなに進んでないってわけでもないだろうし」
「そのまさかだよ。マシーナリー・ウォーのせいで面倒なことになったからね、こっちの探索は後回しになっていたんだ」
ジトっとした目で私のことを見つめるアウロン。そうなんだ、それは大変だったね(棒)
「失礼、敵です……【Sword Beam】」
モーヴちゃんが剣先をモコモコした羊型モンスターに向け、そしてそこから白いビームが発射された。
そのビームはどうやら見た目よりも高火力らしく、一撃でモンスターを消滅させた。
「頼りになるクラメンだね、アウロン?」
「あぁ、モーヴは火力特化ビルドだから……そこらのモンスターなんて一撃で破壊できる。耐久は弱いが、そこは本人の実力でカバーできるんでね」
「ふふん」
おうおう、漫画だったら『ドヤ!』って擬音がついてそうな顔だね、モーヴちゃん。ドミノみたいだ。
『ワタシはもっと強いですよ!』
はいはい、つよいつよい。
「おや、またもや敵が……この辺りはモンスターの発生率が高いのでしょうか。5体ほどいるようです」
「モーヴちゃん、私にもやらせてよ……【孤剣・一閃】」
未覚醒のアストライアが宙へと浮き上がり、右から左へと一閃を放つ。
羊モンスターの群れはその一太刀で全滅し、その場にモコモコしたドロップアイテムが残された。
「ふむ、やはり強いですね。ところであの化け物形態にはならないんですか?」
「燃費悪いんだよね、あれ。あと見た目が気持ち悪い」
「それ気にしてたんだ……」
当たり前でしょ。だって本当にねちょねちょしてるんだぞアレ。私の顔もなんか変形したりするし……
「まぁナルシストだしそりゃそうだったか……ほぐぅっ!」
「リーダー、わざわざ人のこと煽るとこうなるんですよ。今度からはもっと礼儀正しくしましょうね」
「モ、モーヴの方がよく煽……はぐぅっ!?」
私の触手に殴られて蹲っているアウロンを、モーヴちゃんが蹴り飛ばす。
え、えぇ……キミたちどういう関係値なの……?
◇Everly, the Floating Isle of Peril
「ここは敵が……強い、ですね」
「あのさ、モーヴ……私を盾にするのはそろそろやめないか?」
「え? なにか言いました?」
モーヴちゃんはアウロンの後ろ襟を掴み、その全身を盾にしながらモンスターの群れを突っ切り、敵を斬り刻んでいる。
「効率のためならクランリーダーを肉盾扱いしたっていい———そうは思いませんか、アステリアさん」
「まぁ何度死んでも復活するプレイヤーとか肉盾にするってのは合理的だよね」
覚醒状態のアストライアを振り回しながら私もそう返す。いや、まぁ効率的ではあるんだよね。
「でもちょっと流石に可哀想だし離してあげたら……?」
「え? なにか言いました?」
「ア、アステリア……助けて……!」
まぁこの辺りはモンスター多いし、紙耐久なら盾は必要なので……仕方ない!
「は、離せっ! 私はクランリーダーだぞっ!」
「衛兵に連れて行かれる噛ませ役……?」
「不死のスキルで調子乗ってるとことかそれっぽいですよね」
確かに。私は心の中でそう思った。
しかしここ本当にモンスター多いな……目的地は近づいてるんだろうけどさぁ。
「目的地まであとどれくらい?」
「次の浮島です。名前は【Valgnox, the Skybound City of Adventurers】……冒険都市バルグノクスは空の住民、その中でも荒くれ者たちが住む場所であり、その外れに目的の壁画が存在します」
今回のクエストの内容はいたって単純。
アスフェンディの村で見た壁画には続きがあるので、他の場所でそれらを見て……それについてあの少女に話すという内容だ。
どうやら壁画は村の他に2箇所あるらしく、その片方が次の浮島にあるらしい。
「ふざけた戦い方をしていたせいで無駄に時間を食っています。ここからはちょっと急ぎましょう」
「え、じゃあ私を盾にしない方が早いってこと?」
「え? なにか言いました?」
「今日私のこと無視する頻度高くない!?」
「え? なにか言いました?」
2人が漫才を繰り広げている姿を眺めつつ、私はさらに進んだ。
◇Valgnox, the Skybound City of Adventurers
1時間ほどかけてエヴァーリィを抜け、私たちは新たなる浮島へと辿り着いた。ちなみに浮島と浮島とを移動する方法は“実体のある雲”を足場にして移動していく、というものである。
そして、ここバルグノクス都市部のモノリスに触れてリスポーン地点を更新、外れにあるという壁画へと即座に向かう。
「これが壁画ね……何これ?」
あの時は少女が解説してくれたから“百剣天帝”にまつわる内容だと理解できたが……解説なしだと、壁画なんて何を意味してるのか分からない。私たちは今更そんなことに気づいた。
「なんの壁画なのか全然分かりませんね……誰かその辺からNPCを連れてきましょう。ほら、リーダー。誰でもいいので呼んできてください」
「はい……」
今日のアウロンはもう萎れているため、モーヴちゃんの言いなりになっていた。これがクラメンとリーダーの姿か?
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