Ep.60 ゲーム中に入ってくる仕事の連絡ほど鬱陶しいものはない
Ep.11 オリジンズ・ウォーダイレクトの内容変更:各サーバーに存在するのは“魔王”ではなく“大敵”に
このアステリアって奴なんの仕事してるんだろうね……?
◇Phantom Spire———アステリア
「敵が見えないといっても、別に魔力を見れば問題ないしなぁ……」
私はこちらに飛びかかってくる“何か”をアストライアで斬り落とす。『グエー』という間抜けな鳴き声と共に、透明化が解けたカエル型のモンスターの死骸が現れた。
透明なだけってそれ……いやまぁ、多分火力は高いんだろうけど……
「まぁどちらにせよ、即死ぐらいされなきゃ楽勝か」
いや本当に、最近はマジで死ななくなってきてるからね。
空腹を満たすアイテムはメガロポリスで大量に購入済みだし、わざわざ腹を満たすためだけに死ぬこともなくなった。ちなみに最近のお気に入りは辛めのサンドイッチである。
最前線のプレイヤーはみーんな一口で飲み込めるレーションばっか食べてさぁ……こう、なんというか……もっと食事楽しまない!?ってなるんだよね。いや、気持ちは分かるけどさ?
そんなこんなでサンドイッチをもぐもぐしながら下に進み続けること30分。これまでに比べて明らかに狭い部屋にたどり着いた。中心部には巨大パチンコのような装置……聞いた通りのものがあった。本当にこれで飛ぶの?
『ようこそ、渡り人のお方。我々はあなたたちをお待ちしておりました……』
無から紫色の霧が発生し、それが形をとっていく。その見た目はなんというか……うーん……言葉にしづらいな、これ。
まぁ近いのを挙げるなら人型の綿飴(紫色)だろうか。しかもムキムキ……軽そうだけど。
『我々は幻影の塔の守護を任せられている“ワタ人”と申します……』
無気力な顔でそう呟いたかと思えば、周囲にワタ人が続々と増殖していく。キモい……
『我々はあなたのような渡り人が天空へと渡るのを見守る者であり、古代人類でもある……』
と、ワタ人が話している途中で脳内にメールの通知が。
「ごめん、ちょっと話は待ってもらっていい?」
『我々は渡り人のことを見守るのみ……どうぞ。』
さて、誰のメールだ?
—————————————————————
件名:【至急】協力要請について(Aクラス対象)
雪宮ユキ 様
平素より本内閣の施策にご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
内閣官房 内閣危機管理室 特殊災害対策班の佐伯と申します。
このたび、関東地方においてAクラス特殊生体の出現が確認されました。
当該個体は被害拡大の恐れがあり、極めて急を要する案件となっております。
現在、他の協会員は各地での対応にあたっており、
既存部隊による制圧も困難な状況にあります。
つきましては、特例契約魔人である貴殿に対し、
本件へのご協力を要請申し上げます。
本件の報酬は金三百万円也を予定しております。
詳細情報および行動指示につきましては、機密回線にて速やかに通知いたします。
ご多忙の折誠に恐縮ではございますが、
事態の緊急性に鑑み、何卒ご対応賜りますようお願い申し上げます。
—————————————————————
内閣官房 内閣危機管理監付
特殊災害対策室 特例業務第四課
対応官 佐伯 真一
※本件に関する直接の照会は受け付けておりません。
必要に応じ、別途担当部局より連絡いたします。
—————————————————————
「クソが……」
『どうされましたか、渡り人』
ゲーム中に来る仕事のメールほどクソなものはこの世に存在しない。私はすぐさま返信のメールを送信した。
—————————————————————
件名:Re:【至急】協力要請について(Aクラス対象)
今ゲーム中なので無理です
せめて1000万ください
—————————————————————
魔術協会 安全保障・監理局 特例契約課
特例契約魔人 雪宮 ユキ(登録番号:MA-S1-0001)
※やる気出たら返事します
—————————————————————
「これでよし……」
私はゴミのようなメールを送り、ゲームを再開……しようとしたその時、再び通知が! 早くない!? 絶対AI使ってるだろ佐伯ィ!!
—————————————————————
件名:Re:Re:【至急】協力要請について(Aクラス対象)
雪宮ユキ 様
先ほどのご返信、承知しました。
案件の緊急性を鑑み、報酬を金一千万円に引き上げることで対応をお願いしたく存じます。
詳細情報は機密回線にて通知いたします。
着手可能でしたら、速やかにご返答ください。
なお、貴殿が合間にご遊戯に興じられている中でのご対応となりますこと、大変申し訳なく思います。
限られた時間の中でのご検討、何卒よろしくお願い申し上げます。
—————————————————————
内閣官房 内閣危機管理監付
特殊災害対策室 特例業務第四課
対応官 佐伯 真一
※本件に関する直接の照会は受け付けておりません。
必要に応じ、別途担当部局より連絡いたします。
—————————————————————
「グギギ……まぁ仕方ない、どうせすぐ終わらせればいいし……えーと、誰だっけキミ?」
『ワタ人でございます』
「そうそう、ワタ人くん……しばらく後に戻ってくるから、それまで待っててね」
『我々はあなたを待つのみです……』
話が分かる綿飴で助かった。そんなことを思いながら私はログアウトする。
◇???
『ギィーヤァーッ!?!?!?』
周囲に紫色の血が飛び散り、それは完全に死滅した。
はい、仕事終わり! さっさと帰ってオリウォしましょうね〜
◇オリジンズ・ウォー
「やぁ、帰ってきたよ」
『お早いお帰り、ありがたく存じます……では、我々があなたを天空へとお連れいたしましょう……』
そう言いながら、紫色のムキムキ綿飴たちはパチンコを引っ張り出した……えっ? 本当にそのやり方で飛ぶの?
『左様でございます……我らワタ人一同、精一杯引っ張りますので……どうかご武運を』
その言い方だと死ぬ可能性あるじゃん!
「すごい心配になるんだけど、これ成功率どのくらい?」
『我々、失敗しないので』
「あっそう……」
まぁ流石に元からゲームで設定されたルートなんだし、確率で失敗とかそんなことはないか……
『では……フンッ!』
『『『『フンッ!』』』』
紫色の綿飴どもがマッチョでよく見る感じのポーズをとり、その筋肉……筋肉?を肥大化させる。控えめに言ってキモいよぉ〜っ!!
『『『『『うんとこしょ! どっこいしょ!』』』』』
そんなことを口走りながら、ムキムキ綿飴たちは一列になって巨大なパチンコを引っ張っていく。その掛け声はふざけているのか?
『さぁ、どうぞこの場所へ……』
「……本当に不安になってきたな」
いや、こんなにムキムキな奴らならむしろ安心できるはずではあるんだけど……ねぇ?
『では、行ってらっしゃいませ渡り人様……』
『『『『行ってらっしゃいませ』』』』
ワタ人たちは一糸乱れぬ動きで、パチンコの弦をぐぅぅぅっと引き絞る。
紫色の筋肉がバインバインと震えていて、なぜか光っている。
やめて、発光演出いらない。
『あー、くるくる。きちゃいます。きてますきてます……あっ』
「え」
その瞬間、バシュン!と大きな音。
視界が一気に弾け、ぐるぐると回転する。このままだと壁にぶつかる———そう思ったのも束の間、目の前にワープゲートのようなものが現れた。
そのままそれを通過。身体が軽くなったような感覚とともに、視界が一変する。
しかし、そんな風景を堪能している暇などなかった。
「ぎぃやぁぁぁぁっ!?!?」
身体がぐるんぐるんと回転しながら空へ射出されるのがこんなに怖いとは思わなかった。遊園地ってあれでも手加減してくれてるんだね……
「あべしっ!?」
頭から地面に着地。Bloodはなぜか減っていない……まぁこんなんでダメージ食らったらそれは普通に嫌だしなぁ。
「はぁ、酷い目にあったな……」
周囲を見渡せば、そこは——まごうことなき空の上だった。
足元は、気持ち地上より明るい大地。覗き込むと、はるか下に雲海が広がっている。
風が吹くたび、雲がゆるやかに流れていくのもはっきりと見えた。
「……ヒュッてするね」
いや、別に今は玉とか付いてないけどね?
私は怖いものなんて無さそうとよく言われるが、別に怖いものは普通に怖いのだ。でも怖いのも好き!
「さて、じゃあ現地民でもいないか探索……あ」
「……あ」
なんの気もなく後ろを振り返ってみて、視界に入ったのは———つい最近会ったばかりのアウロンであった。なんでここに?
別に現実世界をそこまで掘り下げる気はない
人気あるならちょっとやるかも?
【ワタ人】
見た目がキモい。こんなにムキムキなのに、生物には触れられないから戦闘能力は皆無に等しいというね……
面白かったら下の方から☆☆☆☆☆をいただけると嬉しいです!!!




