Ep.6 レイドナイト/Knight in Night
最近はアルビオン・オンラインを始めました。火の杖が強いね
さて。
まずはポイントを確認し、どれくらいの被害を与えられたのかを確かめる。
現在の記録は9750pt……ランキングは1位。この記録を見る限り、周囲のプレイヤーだけでなく……雑魚モンスターもある程度巻き込んだのだろう。
「うーん、結構広範囲にぶっぱしたと思ったんだけどなぁ……」
だが、思ったよりもポイントが渋い。ま、どうせ全プレイヤーぶっ殺すんだし関係はないか?
私が今回のイベントで目標としているのは、全プレイヤーの殺害である。なぜそんなものを目標に設定したのかというと……
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本イベントの終了条件は以下の2通りです。
・制限時間の1時間が経過する
・1パーティを残し、他すべてのパーティが全滅する
前者の条件でイベントが終了した場合、最後まで生存した(カード状態含む)プレイヤーすべてに限定称号【プレリュードの生存者】が与えられます。
後者の条件でイベントを終了させたパーティには1億ポイントが付与され、限定特殊称号【???(入手後に閲覧可能)】が与えられます。
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この“特殊称号”とかいうやつが取ってみたいからだ。
1人パーティでこれを取れたら文字通りのオンリーワンだし、この条件で勝ったらついでに1位も取れる。
それを達成するために必要なのはただひとつ。全員殺すことだけだ。
「ということで……」
浮遊している剣を操り、それで魔法陣のような何かを描く。
スキル強化ポイント稼ぎのために、私はユニークモンスター狩りをしていたわけだけど……
その途中、1体のユニークモンスターが【スキルバイブル・金】というアイテムを落としたことがある。
それを試しに使ってみて、それで入手したのが【百剣天帝の極意・初】だった。
そして、何を血迷ったのかそれを強化し続けた結果……このスキルは『途上』『究明』の段階を踏み、ついに【百剣天帝の極意・完成】にまで至った。
このスキルは『100本以上の剣で特定の型をとる』ことによって発動する。
その型はいくつも存在し、今から発動しようとするのはその内の1つ、【剣翔】である。
その効果は単純明快、あらゆる方向に大量の剣を目視不可能な速度で飛ばすのみ。
なぜ敵がいない場所でそんなものを使うんだと思うかもしれないが、私の持つスキルには『所有権のある武器を対象として転移する』効果を持つスキルがある。
つまり、今のスキルで全方位にワープ地点を作ったということになる。
「それじゃあチマチマ潰していこう」
私はその場から転移した。
◇イベント会場———森林エリア
「———【虚滅】」
転移直後、発動するのは100を超える剣による嵐を巻き起こすスキル。
これもさっきと同じ【百剣天帝】のスキルだが、これは範囲殲滅に特化している。
広域を殲滅する一撃が走ったその瞬間、周囲の空間が黒い斬撃の嵐に包まれた。
眼下の雑魚モンスターは一瞬で崩れ去り、そこそこ強いモンスターも嵐の衝撃で吹き飛ぶ。
そして———目算、ざっと1000人程度のプレイヤーも巻き込まれ、私のポイント欄がぎゅるんぎゅるんと回転していく。
「ポイントは……34520ね。そんでもってキル数は全部合わせて4000ちょいか」
まだ足りない。もう一度転移してもっと大量の敵を殺さなくてはならない。そう考えた私は、足元に広がる青いカードには目もくれず転移する。
◇先程とは反対方向———山岳地帯
「お?」
「あ?」
転移直後、目の前に現れたのは狩人のような格好の女アバターのプレイヤー。そのプレイヤーはすぐさま剣を構え、私の顔面に向けて突き刺す。
「なっ!?」
「吸血鬼は部分的な霧化もできるんだよ……ねっ!」
「かはっ……!」
50レベだったか60レベだったかで獲得した特性である【霧化】は、『テキストに書いてあることと挙動が違いすぎるだろランキング』で1位を取れるほどの詐欺スキルだ。
まずは説明文を見てみよう。
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【霧化】:Bloodを消費し続けることで、体を赤い霧に変化させる。霧状態ではスキルの使用ができず、最終ダメージを99%軽減する。ただし、光属性およびそれに準ずる属性による攻撃を受けた場合、このダメージ軽減は無効になる。
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これを見た限りだと、この特性を発動させている間はスキルを使えないかわりにほぼ無敵化する……そういったものに見えるが、それは大きな間違いである。
この特性の使用中は……『スキルの使用ができる』
どう見てもスキルが発動できないと書かれているように見えるが、それは全身を霧化させている場合の話である。
身体の一部だけを霧化させている状態の場合は、普通にスキルを発動することができる……できてしまう。
そもそも、身体の一部だけを霧化させられることはテキストに書いていないというのも詐欺ポイントだ。そういう大事なことは最初に言っておいてほしい。
少し話が長くなった。本題に戻ろう。
私は剣を真上に投げ、それに掴まって上空へと移動する。
「さて、この辺りのプレイヤーは……へぇ。結構多いね?」
上から見た感じだと、さっきの2倍程度はいるように見える。均等に分散しているわけではない……いや、ただ単純にこのあたりのプレイヤーが好戦的だったとか?
まぁどちらでもいい。どうせ殺すことに変わりはない。
「———【地焉】」
これまた百剣天帝の奥義のひとつである【地焉】を発動する。
これは私の周囲に、下向きの剣で円を作るように並べることによって発動するスキルである。
地面に突き刺さった剣が爆発し、大規模な破壊をもたらす……が、流石にこれは威力特化のスキルだ。取りこぼしがそこそこに出てしまったらしい。
まぁ特に問題はない。私は【ルナティック・フォージ】によって生成された剣を操り、各プレイヤーの頭に1本づつプレゼントしていく。
10秒もしないうちに、周辺のモンスターとプレイヤーは全滅した。キル数7500と少し、まだまだ足りない。更に転移する。
◇砂漠エリア
じりじりと強い日差しを感じる。私の周囲は展開した結界によって『夜』の判定になっているはずなのだが、吸血鬼の特性である『日中、全ステータス10%ダウン』が発動してしまっている。なるほど、こういうこともあると……
そうして思案に耽っていた私の頭部を狙って、派手なエフェクトの矢が放たれる。そして、即座に生成した血の盾でそれを防ぐ。
「なんだァ?てめェ……」
視点を矢が放たれた方向に向けると、そこには剣士のような衣装を身に纏ったプレイヤーがこちらを睨んでいた。
アイツ見たことあるな……思い出した、私が最初にPKした3人組パーティのリーダーだったかな。この見た目で弓を使ってくるのは予想外だが、そもそも今の私にダメージを与えるならもっと高火力なので攻めないとダメだろう。
「うーん、また剣を使って倒すのもいいけど……」
そろそろ違う手も使っていこう。
「———【万雷】」
光の柱が空から降り注ぎ、周囲一帯を消し飛ばす。産廃だらけでお馴染みのユニークスキルだが、これはその中でも珍しい……ちゃんと強いユニークスキルだ。
能力は単純明快、消費したMPに応じて範囲が広がる。私はBloodをMPのかわりに扱うことができる上に、その値は驚異の4700。それらをほとんどすべて消費したことにより、万雷は圧倒的な範囲殲滅スキルへと変貌する。
現在のキル数は……10051。これで条件は達成した。一度転移し、まずは場所を整える。そして……
「【深紅の血潮よ】【影の群れを呼べ】【我が姿を裂きて】【百の偽躯を生み】……」
条件は『この戦闘中に自身が殺害したキャラクターの数が10000以上』『周囲が夜間判定であること』『この戦闘中に受けたダメージが10000以上』の3つ。これらの条件を満たした上で、8節の詠唱をすることで……私がつい最近獲得したスキル【深紅の影群】は発動できるようになる。
「【月は此処に在り】【真実は溶けゆく】【影導きし血塗れ】【我と共に夜を為そう】……【深紅の影群】!」
【イベント参加人数】
16万人。今回のイベントは海外サーバー(別大陸)のプレイヤーも含めてすべてが同じマップで戦うこととなる。ちょっと多すぎたかなとは思ってる。まぁ値段高いのにこんなに人いるのは、金銭感覚の変化ということで……
【百剣天帝の極意・完成】
なぜかアステリアが15ポイント(ユニークスキル3つ分)も注ぎ込んで強化したスキル。なぜこれに投資しようと思ったのかは知らないが、おそらくカッコよかったからとかそういう感じだと思われる。
【真祖の鍵】
真祖の吸血鬼<真祖の鍵と名前に付くスキルを3つ集めると、種族が【真祖の吸血鬼】に進化するぞ!
【特殊称号】
効果のある称号。本当にヤバいことをしないと入手できない。
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