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Ep.54 コリジョン —カーニバル—

「ふーん、なるほど?」


 左手に盾、右手にハンマーを持った狂夜は、即座にその使い方を理解した。



『……!』


 先程と同じように、執行者はその身をかがめ……



 ガン! という音と共に、その攻撃を防がれた。



「いいね、これ。【ハイパークラッシュ】」

『……!』


 そのスキルの効果は“次の攻撃の強化”である。


 狂夜は盾を弾く———つまりはシールドバッシュをすることによって執行者の体制を崩し、その腹に全力の一撃を叩き込む。



 ぐしゃり、という嫌な音。その後、スキルの効果による小気味良い効果音。


 20m近く吹き飛ばされた執行者は、それでもすぐさま体勢を立て直す。



「【模倣(コピー):エネルギーキャノン】、発射!」


 ハンマーが彼女の右手と一体化し、そして右手が銃口のように変化する。


 先端から放たれた緑色のエネルギーは執行者を襲い、しかしそこまでのダメージが入らない。



「うーん、これは要らないね! 【模倣(コピー):トールハンマー】」


 右手が再度変形し、その手にはシンプルなハンマーが握られる。



 起き上がった執行者は無言でこちらを睨みつけ……顔が隠れているのでよく分からないが、恐らく睨みつけながら短刀を構えた。



「……来ないんだったらこっちから行こうか。ふっ!」


 彼女は盾を高速で投擲し、執行者へと直撃させる。冗談みたいな攻撃方法にしてはしっかりとダメージが入り、そしてその素材の性質によって盾がこちら側に跳ね返る。



「よっ!」


 次はハンマーが投擲される。こちらに戻ってこようとしていた盾とハンマーが衝突し、それによって再び執行者の胸部へと盾が襲いかかる。



『グ……ッ!?』


 続けて、投擲されたハンマーが軌道を変えずにそのまま執行者へと襲いかかる。


 上空へと無秩序な軌道で吹き飛んだ盾を、跳び上がって蹴り飛ばす。


 帰還効果で手元に戻ってきたハンマーを手に、短距離転移のスキルを発動。

 またもや吹き飛んだ盾の近くへと転移した彼女は、それを再びハンマーで叩く。そのまま一回転してハンマーを投擲。



『ガッ、ゴッ、ギッ……!?』


 あまりにも異様な攻撃の応酬。


 何度も何度も、盾とハンマーが軌道を変えて襲いかかる。



 そして———




「【万雷】」


 最後に、彼女が天高くハンマーを掲げ———執行者に神の怒りが降り注ぐ。



『ガ、ガァァァッ!?』




 万雷の光が消えた頃には、もう青いポリゴンだけしか残されていなかった。



「いいね、これ……ヒバナちゃんに貰えないか交渉しようかな?」



 哀華竜宮庭 狂夜。

 彼女は戦闘の天才であった。







◇コリジョン———アステリア



『ぐ……がぁ……っ!』

『痛みが効いてきたみたいだね?』


 アストライアの与える【魂痛】は、それはそれはとんでもない痛みらしい。


 ラピスに『死ぬほどつらいんじゃない? それぐらいはあると思うよ……?』と称された痛みは伊達じゃないってことだね。むしろここまで耐えられたのが凄いよ。



 現在、私の触手で巨大ロボットの全身がガッチリと拘束されている。今回はちゃんとビーム放つ部分は避けて握っているから、抜け出される心配もないはずだ。



『テメェ、何を……』

『手間かけさせてくれちゃってさぁ……キミにはちょっとお仕置きさせてもらおうか』


 私はロボットの首元を触手で掴み、引きちぎって適当に投げ飛ばした。

 搭乗員が胸元の部分にいるのはなんとなく分かっている。多分、眼の強化のおかげでMP的なものが見えるようになったんだろうね。



 そのまま無駄にデカくなってしまった身体を動かし、私の本体をロボットの頭部があった場所へと近づけていく。



『ふふふ、やぁ……直接目を合わせるのは初めてだね?』

「おいおい、俺は……今から何されちまうんだ……?」


 息を切らしながら、サイバーなスーツを身に纏った男がそう呟いた。あー、なるほど。オリジナルズのメンバーか。


 アストラがそんな格好をしてたっけな?



『気が変わった』

「あ……?」


 大量の触手を搭乗部へと侵入させ、残りのプレイヤーたちの首を即座に締めて殺す。残りはあとこの男のみだ。



『お前はなるべく苦しめて殺す』

「なんだ……俺らの能力知ってんのか……にしてもサディスティックな女だな……?」

『別にそんなことないけどなぁ』


 比較的小さな……それでも腕や足よりは太い触手が男を完全に拘束する。絵面ァ!



『ちょっと男は自分で口つけたくないから、触手でやらせてもらおうかな』

「は……? お前、何言って……」


 触手たちの先端がギチギチと音を立てて、生々しく変形していく。先端がパックリと割れ、開き、そして何かが生え始める。



「お、おい待てよ……いくらなんでもそんな死に方はちょっと俺でも嫌だぞ……?」

『嫌そうだからやるんでしょうが』


 わたし、アステリア! 趣味は苦しんでる人の顔を観察すること!



『ァ……ォォ……』

『ォォ……ゥァ……』

『ァァァ……ゥゥ……』


 心なしか、触手たちから喜びのようなものを感じる。この音は風か何かによるもので、別に鳴き声ではないんだろうが……それでもなんだか不気味である。

 なんで私はこんなことになっちゃったんだろうか。


 他の人……ラピスとかは天使モチーフだし、特にこういう化け物みたいなのは……(思い出す)あったわ。

 これも強者の宿命か———とか変なテンションになりながらも、私は触手をゆっくりと彼に近づけていく。



「お、おいやめてくれよ……ぐぎっ……がぁぁぁっ!?」


 ぐちゃ、ぐちゅ、ゴキ、ボキ……嫌な音が男の周囲から聞こえた。


 触手たちが、口のような器官で奴の手足をちびちびと喰らっている。

 その穴のまわりにはべったりと赤い血が付いており、私は倫理フィルターをオフにしていたことを思い出した。ラピスとアレしてからオンに戻すの忘れてた……!



「あ、ぎぃ……ぐぎっ!?」

『うわ、触手なのに味覚あるの気持ち悪いな……しかも不味いし、やっぱやーめた』


 こんなん要らねーよ! 私は触手の拘束を強めることにした。



『お前はどうやって死にたい?』

「はぁ、はぁ……楽に死にたい、かな……ぐぎっ!?」


 楽に死なせたくはないが、触手に食わせるのも嫌だ。なぜなら味が悪いから。


 となれば触手を口の中に突っ込む……のもそれはそれで気持ち悪いからナシ。



『……仕方ない、今回は面倒だからお前の言う通り楽に殺す。けど……次会った時、2時間は楽しませてもらうからね』

「は、はは……そりゃあおことわ」


 彼がその言葉を言い終わる前に、私の触手によるビンタでその頭が吹き飛んだ。


 さて、このロボットの残骸はどうしよ……あっ!? なんか消えかけてる!?



『……そういう悪用は許さないってことね。面倒なことしてくれちゃってぇ……』


 まぁいいさ、それならこっちもこっちで勝手に再現してやるだけだ。なんなら見た目も似せた上で侵略に使って評判を下げてやってもいい。



『ま、それはまた今度だ。今は……』


 目の前のことを優先しないとね。




『ご主人様ぁ! 街のバリア割れましたよ!』


 脳内にドミノからの報告が届く。さて、仕上げの時間といこう。

【神聖剣アストライア】

ラピス<ユキちゃんのためにNPC拷問用の武器を作ろうとしたら、現状全サーバー最強クラスの武器ができてしまった……

・不壊

・Blood倍化

・超火力

・クリティカル率50%上昇

・戦闘で消費したBloodに応じて強化

・HP吸収

・サイズ可変

・DOT(NPCは追加で痛みも与える)

・アステリアが装備時はさらに強化

・まだ能力がある

・成長の余地がある


対NPCだとすごい強い。(相手が痛みで動けなくなるため)


【万雷】

元々アステリアの代名詞的な魔法にする予定だったんだけど、アステリアは他の戦い方する方が映える……となった結果がこれ

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