Ep.51 『わたしは主のはしためです』と彼女は言った
聖書を引用すればどんなに最低な内容でもカッコよく見えるというライフハック
ラピスさんさぁ……
◇戦場から少し離れた場所で———LapiS.Lazuli
ラピスはアステリアと違い、一応正義側のクランを率いている。その目的がどうであれ、事実としてはそうなっているということだ。
このことは一部の人間以外にはバラしておらず、大多数のクランメンバーは盲目的に彼女に従っている。
あの時のイベントでも、彼女はアステリアと表面上は対立していた。
そのため、彼女がアステリアと協力しているところを見られる訳にはいかない……たとえ海外であろうとも。だから……
「Ecce ancilla Domini, fiat mihi secundum verbum tuum.」
自らの身体に黒いナイフを突き立て、ゆっくりと倒れながらその言葉を呟く。
別にこの言葉は詠唱というわけでもなく、単に彼女が言いたかったから言っただけではあるが……言葉通り、その身を捧げるオリジンスキルが自殺をトリガーに発動した。
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オリジンスキル【この身、この願いをあなたに捧ぐ】
消費MP:0
CD:3d
《儀式》
・種別:【ナイフ】の武器によって、自分から自身のHPを0にした時にのみ発動できる。
《能力》
・30分間、すべてのステータス、特性、スキルをプレイヤー:【アステリア】(PNo.00,006,108)に与える。その間、自身は復活できず、視界のみプレイヤー:【アステリア】(PNo.00,006,108)の付近に存在できる。プレイヤー:【アステリア】(PNo.00,006,108)が存在しない場合、このスキルは発動しない。
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「ふふ……じゃあ、あとは頑張ってね……」
彼女は1人、そう言い残してポリゴンへと散っていった。
空から巨大な質量がアステリアに向かって降り注いだのは、それとほぼ同じタイミングであった。
◇戦場———リアリティ
『な、なんだ……脚が、浮かび上がって……』
オリジナルズ・アイアンタイタンの片脚……白髪の目標を踏み潰したはずのそれが、こちらの操作を無視して少しづつ浮かび上がってゆく。
『いまのは……いたかった……痛かったぞーッ!!!』
アイアンタイタンの脚が完全に宙に浮き、そしてその体勢が崩れ———気づけば、その巨体は遠くまで吹き飛んだ。
『くっ……!?』
どうやら脚を掴まれて投げられたらしい。このサイズ差で?
『なぁなぁなぁなぁ……こっちは少人数で来てるのにさぁ……そっちは1000人近くのプレイヤーに巨大ロボとか、ちょっとズルいとは思わないか!?!?』
大量の機械をよこしておいてそれは無いだろう。やたらと周囲に響くその声に対し、リアリティとタイタン搭乗者はそう思った。
『オイオイオイ、そっちがヤバそうだから俺もコイツを持ち出したんだぜ? そりゃあねぇだろうがよ……』
リアリティは背中から天使の羽を生やした白髪を見つめ、そう言葉を発した。
◇戦場———アステリア
さてさて、私があの巨大ロボに踏み潰される直前———なぜか脳内にラピスの笑顔が浮かび、そして私のスペックが異様なほどに跳ね上がった。
おかげで、ギリギリ……本当にギリギリだが、あのロボットを無理やり投げ飛ばすことができた。
多分ラピスが何かしてくれたんだろう。
そう考えてちらりと横を見ると、幽体となったラピスがうんうんと頷いた。なんであなたはそこにいるんですか?
だがまぁ、この状態だとおそらくあのロボットには勝てない。単純にスペックが足りていないからだ。
あのロボットは街のバリアに激突したが……見たところ無傷だ。火力が足りていない。
よって、私はさらなる力を得る必要がある。
『【願いも嘆きも記憶の中に】【記せ】【綴れ】【顕現せよ】———【Obsession Chronicle】』
手元に本が現れる。だがこれは前座でしかない。
少々話は変わるのだが、【無手の極意】はリストラされることになった。
なぜならついさっきヒバナが私にくれた武器、そして神聖剣アストライアの2つのスペックが高すぎて【無手の極意】の補正を上回ってしまったからだ。
『【目覚めよアストライア】、【模倣:トールハンマー】』
右手の気持ち悪い触手剣の刀身部分が破裂し、中からドス黒い刀身が現れる。やっぱ魔剣じゃねーか!
そして、同時に左手に持った機械の球がハンマーのような形に変形する。
そして、私はインベントリから1日1回限定の全回復アイテム(課金限定)を取り出し、即座に使用した。
アストライアは解放後、自身のBloodを倍化する能力があるが……その増えた分は自分で回復しなければならない。
本来は雑魚をぶっ殺せばいいんだが、あのロボットがここら一帯の雑魚を全部消し飛ばしたせいで餌がない。なのでしかたなくこれを使うことにした。
これで最初の準備が整った。
脳内であの時……私が化け物と化したあの瞬間を思い出す。
【Obsession Chronicle】は原理の分からない現象であろうと、Bloodを消費すればなんだろうと再現できる。
もちろん、アレを再現するのに必要なBloodはそりゃあもう多い。通常状態では支払えないほどに。
だがしかし、今の私はラピスの手によってレベルが200まで引き上げられ———そしてアストライアの効果でBloodは倍化している。これならなんとか足りるはずだ。
『【ありのままで】』
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『アノマリー・アセンション!!!』
『【“淵月魔獣、神蘇の吸血鬼、黙示録の大天使”アステリア】Lv.200』
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私の身体が変形していく。足元は大量の触手で覆い尽くされ、爪は長く尖る。背中の天使の羽が6対に変化し、吸血鬼の羽はさらに大きく……
視界が変化する。どうやら第三の目が生えたらしい……これ前は無かったよね???
さて、細かいところはともかく……とりあえず変身には成功した。しかし……まだ足りない。
『【限界突破】』
私とラピスはあの戦いでレベル100に到達した。その時に極限スキルなどというものを2人とも獲得したりしたが、これに関しては割愛。
あの時には色々とスキルを獲得したが、その中で2人とも獲得したスキルが存在した。それが【限界突破】だ。
多分レベル100に到達したプレイヤーは全員獲得できるんだろうこのスキルは、一時的に限界を超えてレベルを上昇させるという効果を持つ。
既に200になってるだろという話はナシね。
これにより、レベル100以降の無駄になった経験値すべてが一時的にレベルへと変換される。
半透明なオーラが私の身体から吹き荒れ、さらなる力が漲った。
今の私のレベルは273……なんか思ったより上がったな? これラピスの分も加算されてるのか?
『おいおい、マジで化け物じゃねぇか……そりゃあうちの新人が怖がるワケだな、おぉ?』
『新人……誰のこ⬛︎だい、それ⬛︎?』
『おぉ、覚えてないときたか……どうやら心まで化け物だったらしい』
知らん奴の話されてもなぁ……そもそもお前誰なんだよ。なんで私は知らない奴に罵倒されてるんだ? ちょっと……いや、かなりムカついてきたな……
『まぁい⬛︎さ、ともか⬛︎……やろうか?』
『上等だぜ、かかってこいよ化け物』
機械の拳と触手が衝突し、ここに戦いの火蓋が切って落とされた。
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