Ep.5 iT’s eVenT Time!
ちなみにこいつらの名前はそんなに覚えなくていいです。
◇クラン『起源帝国』ホーム
つい最近、アステリアとの小競り合いを行ったクラン……『起源帝国』のリーダー、ガーリアが口を開く。
「今回のイベントのルールにおいて、軽度のチーミング……例えば親しいチームとは戦わないとか、そういったものは黙認されている。なので基本、別で動く起源帝国のチームと接近した場合はその場を離れる……これを念頭に置いておいてくれ」
「あの……それ本当に大丈夫なんですか?」
「問題ない。公式サイトと一言一句違わない例を出している。戦いを避ける程度なら大丈夫だ、だが……協力はだめだ。これも少々複雑なルールがあってな、見知らぬチームとの一時的な協力は問題ないんだ。だが、知り合い同士の場合はAIが判定して即座にイベントから叩き出される……らしい」
なんとも高性能なAIだこと、とガーリアは考える。
起源帝国のメンバーは合計で20人。ガーリアはこれまでのゲームで何度かクランリーダーの役を請け負っていたが、これ以上の人数は自分のキャパシティを超えている……そう考えて、このゲームでは20人で止めている。
そして、その全員が優秀だ。
「これから4人の5チームに分けていく。セフィア、ゾド、大天才、ゆちぱ、チピチャパはヒーラー役としてそれぞれで別れてもらう。残りは自由に決めていい……俺は残った場所に入る」
クランメンバーがわいわいと話し始め、それぞれが各ヒーラーの元へと集まっていく。
5分程度が過ぎ、1枠空いている場所にガーリア自身が入ることで5つのパーティが完成した。
「今回のイベント、結局モンスターとプレイヤーどっちを優先的に狙うのがいいんだ?」
「基本的にはモンスターだ。雑魚は5点、多少強い雑魚が10点、中ボスが50点、大ボスが1000点、ランダム出現のイベントモンスターは3000点……ついでに言えばゴールドモンスターは追加100点。大ボス以上を倒さないと、ランキングに乗るなら話にならない」
「邪魔するプレイヤーは?」
「邪魔なら倒すことを優先だ。だが、復活カードのこともあるから基本的には全員倒し切るように。4人以下なら仲間がどこかにいるはずだから、周囲を固めるようにしよう」
「こちらからプレイヤーを見つけた場合は?」
「ガチ勢なら基本逃げ、ゆるくプレイしてそうなら協力を提案しながら近づいて殺すのが安定じゃないか?」
「普通にえげつないこと言いますね?」
「まぁ、あくまでこれは俺の考えだから……基本的にはその場その場で、各々が良いと思った選択をするように。別にランキングを狙わなくてもいいが、そういう意識はパーティ内で必ず統一しろ。いいな?」
一通り質問に答えたところで、ガーリアはパン、と手を叩き……
「色々言ったが、まぁ楽しめたらそれでいい。それじゃあ各自、会場でまた会おう」
そう言って、ガーリアはイベント待機エリアへと転移した。
◇サービス開始記念イベント【オリジンズ・ウォー・プレリュード】開始1分前
古代スタイルの映画館……イベント待機エリアの雰囲気を言葉にするとしたら、こういったものになるだろう。
何も映っていない画面の前で、いくつものパーティがイベント開始を待っている。
1分前だというのに未だ装備の設定をしているプレイヤーに、チームメンバーと談笑を続けているプレイヤー。
少々早いが、1分前だからとカウントダウンをし始めるプレイヤーなどもいる。
多種多様なプレイヤーが、その時を待っていた。そして、すぐにその時は訪れる。
「しゃ、行くか!」
「絶対優勝するぞ!」
「俺たちなら行ける!」
「頑張ります、か……」
4人のプレイヤーはそんなふうに言葉を交わし、そして光に包まれ……
「「「「え?」」」」
最期に見た景色は、視界を埋め尽くす“赤”だった。
◇イベント開始前———アステリア
さてさて、まずはイベント開始までの45時間をフルに使って育成した私のステータスを見てもらおう。
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《基礎情報》
PN:アステリア
Lv:60
種族:【吸血鬼Lv.7】
主職業:【武芸者Lv.6】
副職業:【結界師Lv.5】
武器①:【血の大剣】
武器②:【血の大剣】
頭装備:【ブラックヘルム】
胴装備:【ブラックアーマー】
腰装備:【ブラックベルト】
足装備:【ブラックブーツ】
アクセサリー①:【守護の石】
アクセサリー②:【ホワイトコート】
ジョーカースロット①:【ダブルフェイス】
ジョーカースロット②:【オールイン】
《ステータス》
攻撃:70
防御:14
魔力:300
速度:100
器用:208
幸運:100
SP:0
《特殊》
Blood:4700/4700
《特性》
【吸血鬼】:特殊ステータス「Blood」が解放される。日中、全ステータスが10%低下する。夜間、全ステータスが10%上昇する。キャラクターに噛み付くことで、対象を「眷属」にできる。この効果はプレイヤーに対して発動しない。最大眷属数は種族レベルに依存する
【羽】:空を飛ぶことができる。速さは速度に依存する。持続時間は攻撃と防御に依存する。操作性は魔力と器用に依存する
【霧化】:Bloodを消費し続けることで、体を赤い霧に変化させる。霧状態ではスキルの使用に制限がかかり、最終ダメージを99%軽減する。ただし、光属性およびそれに準ずる属性による攻撃を受けた場合、このダメージ軽減は無効になる。
【恐怖】:恐怖状態の付与率上昇
《スキル》
PP:0
※P:常時発動
※E:進化
PEE【真祖の鍵・紅血狂宴+++++】:与えたダメージに応じてBlood回復。Bloodを消費する際、消費量-25%
【ブラッド・ルイン】:一定時間、HPとBloodを消費し続けて全ステータス↑↑
P【永遠の安寧+++++】:リソース型ステータスすべてを自動で回復する
P【紅月の栄光+++++】:Bloodの最大値に応じて全攻撃のダメージ上昇
【ルナティック・フォージ】:BloodまたはHP消費でエリア展開&血属性の武器作成。BloodまたはHPを消費することで血の武器を生成。エリア内で血属性のダメージ↑↑↑↑↑かつ武器生成の消費Blood軽減。夜間、スキル効果範囲が広くなる
PE【戦いの血潮+++++】:ダメージを受ける/与える、もしくは自身のHPを回復する毎にBlood大回復
PE【血は身を現す+++++】:Bloodの上限+1000
P【生命と血の輪廻+++++】:HP回復でBlood大回復
P【魂と血の王+++++】:血属性の攻撃でHPMP大回復
【魔力解放】:MPを消費。消費したMPに応じて全ステータス↑
P【武操の極意・初】:武器の与ダメージ↑。武器の操作に補正。武器のクリティカル率↑。武器を対象とした転移が可能
P【破鎧穿心+++++】:武器を用いた攻撃で防御無視↑↑↑↑↑、攻撃ヒット時にダメージ増加のデバフ付与
PE【真祖の鍵・血で創られた身体+++++】:HPとMPを削除する。BloodをHP、MP、その他一部特殊ステータスとして扱うことができる。Bloodの上限をレベルに50をかけた値分、追加する。Bloodの消費量-15%
P【武芸百般・初】:すべての攻撃に挙動補正
PEEE【無手の極意・完成+++++】:武器を装備していない時、クリティカル率+100%、攻撃+1000、与ダメージ+100%
【自動技能機構】:『自動機構』に設定したスキルを任意のルールで実行する。強化回数に応じてコードの自由度が上がる。現在の対象は【ルナティック・フォージ】
PE【ナイトメア・ナイト+++++】:夜間、Blood自動大回復、ダメージ軽減、戦闘中に消費したBlood50毎に防御力が2上昇(その戦闘中のみ)、最大で2000まで
P【躍動する血+++++】:Bloodを消費した直後3秒間、挙動速度が30%上昇
P【武芸百連+++++】:異なる武器種で攻撃するたび、30秒間ダメージ↑↑↑↑↑
【万雷+++++】:雷属性の攻魔参照極大ダメージ。追加で消費したMPに応じて範囲増加
P【夜の女王+++++】:夜間、Bloodの上限+2000
PE【大結界の主】:結界の展開範囲が大きく広がり、結界による効果が強化される
【恐怖の咆哮】:結界を展開し、咆哮する。結界内の咆哮を聞いたキャラクターすべてに『恐怖』を付与する
EEE【百剣天帝の極意・完成+++++】:100本以上の剣を所持している時、百剣天帝の奥義を発動することができる。これにはMPを消費しない。
▷【天終】【地焉】【剣界】【剣翔】【冥破】【虚滅】
【深紅の影群】:分身を任意の数生成する。最大で100体。分身は【深紅の影群】スキルを持たず、プレイヤーが死亡した場合、分身もすべて消滅する。このスキルは特定の条件を満たした場合にのみ発動できる。
《混源》
【淵月と虚鎖の王檻】
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大きく変わった点をまとめると……火力の上昇、範囲の上昇、そして防御面の改善といったところだろう。
これまではたった14しかない防御力を空中からの一方的な攻撃で誤魔化していたが、今はちょっとスキルを使うだけで2014まで増やすことが可能となった。
これでとりあえず防御面に関してはある程度心配しないでいいだろう。
死亡時に破壊され、かわりにプレイヤーを守るアクセサリーである【守護の石】も装備しているので、とりあえずこのイベント中で簡単に死ぬことはないだろう。
火力面に関しては、防御無視とダメージ増加の値が普通に強化され、そして新たに獲得したスキルで攻撃速度も上昇している。
こっちは防御面ほどのブレイクスルーが起きているわけではないが、順調に育っているといった感じだ。戦いはバフの数だよ、兄さん!
範囲は普通にスキルを強化していったら広がったのと、結界系のスキルを結構習得したことによって解放された【結界師】のスキルによっても強化された。
これによって副職業が【魔拳士】から【結界師】へと切り替わり、完全に魔拳士は息を引き取ったことになる。享年5話の儚い命であった……
そうそう、今回はイベントに参加するからね……ちゃんと装備も整えてきた。
といっても、見た目は単なる黒い騎士(なぜか白いコートを羽織っている)にしか見えないし、別に特段強いわけでもない。
でもまぁ……一応やれるだけのことはやっておきたいからね。
無手の極意があるのに【血の大剣】を2本装備していることについても話しておこう。
元々これはエクリプス・フォージ……今は更に進化した【ルナティック・フォージ】によって作成された武器だ。
このスキルによって作成された武器についてなんだが、実は武器→Bloodへの再変換も可能なのである。割合は流石に損になっちゃうけどね。
つまり、これらはイベント開始直後すぐにインベントリにしまい、予備Bloodタンクにするための武器というわけだ。
今回のルールでは、インベントリにアイテムを持ち込んだりはできない。
しかし、装備なら一応そういったことが可能なのだ。まぁBloodに変換しても雀の涙みたいな量ではあるが、やらないよりはやった方がいい。
さて、そんなこんなで色々と考えているうちに……もうイベント開始5秒前である。
ついさっきまではちゃんと時計を確認していたのに、気を抜くともう間近に迫っている。時間の流れが早い。
「じゃ、やろうか」
視界が白に包まれる。そしてその視界が開けるよりも早く、【ルナティック・フォージ】により高速で武器を生成し……周囲に射出。
視界が開けた時には、赤い剣の墓標と消えかかったポリゴンだけが残されていた。
【目標】
全員殺す




