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Ep.30 ネクロ・ハザード/焦土

◇アステリア



『う⬛︎ん、街は結界⬛︎阻まれ⬛︎ダメみたい⬛︎ね……まぁそれは私⬛︎後でなんとか⬛︎ようか』


 ネクロ・ドラゴンくんは知能が低いからか、バリアに向けて永遠に頭突きを繰り返している。


 周囲にプレイヤーが来た時はちゃんとお掃除しているが、あんなんしてたら無駄にHPを減らすだけである。


 まぁどうせ使い捨てる予定だったし放置でいいや。



『さて、そろそ⬛︎ラピスと約束⬛︎た時間だ……行こう』


 私は背中の羽を使い、飛翔……身体おっも。やっぱここまでデカくなると飛びづらいね。ギリギリ飛べるのは救いかな?








◇LapiS.Lazuli


—————————————————————

アステリア:

魔法準備オーケー、時間になったら動きを止めて


LapiS.Lazuli:

りょ〜かい

—————————————————————


『⬛︎ッ!!』

「おわっと……ちょっと、そんなに剣を振り回したら危ないよ」


 ここに来てさらに高速化したシャマザリエの剣撃を避け、ラピスはそう言葉をこぼした。



「む、わたしのユキちゃんレーダーに反応が……後ろかな?」


 ラピスが背後を振り返ると、そこには化け物と化したアステリア……そしてその分身が100体ほど、空中に浮かんでいた。なんだか羽がすごく辛そうである。


 規定の時間まであと5、4、3、2、1……



「じゃ、ユキちゃん……後は任せるね。〔超過(エクシード)・ホーリー・チェーン〕」


 使うのは、対象を光の鎖で束縛する魔法。本来はラピスの放つ魔法など、5重であったといえここまでのレベル差があるオリジンモンスターに効くはずもないが……


 彼女のオリジンスキルによって大量に重ね掛けされた【英雄補正】は、そんな不可能を可能にしてしまうほどのバフであった。


 そのおかげで、シャマザリエは一瞬……時間にして3秒ほど動きが止まる。


 ラピスの視界は光に包まれ———










◇アステリア



 さて、準備は整った。

 ラピスとのチャットで決めた時間ちょうど。

 脳内に浮かんできた魔法名と共に、構成していた魔法をシャマザリエに向けて解放する。



『9重合成……〔超過(エクシード)超暴走(ランペイジ)複写(マルチ)・プライマル・メテオ〕』


 火属性魔法〔エンチャント・フレイム〕を2層。土属性魔法〔メガロック・ブラスト〕を5層。土属性魔法〔ジオクラフト〕を2層。


 これら合計9個の魔法を合成した上で、更に魔法陣によってコマンドを追加。〔超過(エクシード)〕と〔超暴走(ランペイジ)〕で威力が上昇し、〔複写(マルチ)〕でコピーされた魔法が追加発動。


 これらのコマンドを追加するための魔法陣は非常に高度であり、普段のアステリアでもそこそこ時間がかかるであろうものだが……


 今の彼は種族【淵月魔獣】による演算力強化、そして分身による演算の分担により、これを実現した。



 魔法を放ったそばから背後へと退き、後続の分身を前に、そして分身たちも待機していた同質の魔法を発動。


 ふと、空を見上げると……





◇地上


 急に明るくなった空に違和感を持ち、空を見上げたプレイヤーの目に映ったのは———巨大な火の塊。いや、違う。隕石だ。



 直径1kmはあるだろう真っ赤に焼け焦げた岩塊が、数十、数百……もはや数えることすらバカらしく感じるほどの数、地表に降り注ぐ。



「あっ鼓膜破れたぁっ!?」

「あっっっつ!!!」

「風圧ヤバいヤバい! これ飛ばされ……あぁぁっ!?!?」


 あらゆるプレイヤーが叫び、そしてその声は圧倒的な轟音によってかき消される。



 空は灼熱の赤に覆われ、降り注ぐ隕石はかろうじて街を避け……平原へと降り注ぐ。


 衝撃波で街のバリアがビリビリと振動し、地面はとてつもない揺れに襲われる。



 世界が終わるかのような光景。

 あまりの衝撃と光量、熱量によって、隕石着弾地点付近のプレイヤーは一瞬で蒸発する。



 着弾した隕石は轟音を響かせながら砕け、そしてその破片が周囲に高速で飛び散ってゆく。



 粉々になった破片で空は埋め尽くされ、もはやこのゲームの舞台が世紀末であると言われても頷いてしまう光景がそこには広がっていた。









 

◇LapiS.Lazuli


「……やりすぎだよ、ユキちゃん」


 ラピスは降り注ぐ紅蓮の海を見上げた。黒騎士も彼女に向けて攻撃を放とうとしており、空からは隕石が降り注ぐ……彼女は2秒後には確実に死んでいるだろう。


 だが、口元にはわずかな笑みが浮かんでいる。


「でも、こういうの……嫌いじゃないよ」


 彼女の呟きは、轟音にかき消されていった。









◇上空———アステリア



 1分。1分間、隕石が降り注ぎ……私は自分で自分の魔法に殺されかけながらも、なんとか生き残った。範囲広すぎだねぇ!!!


 さて、周囲の光景はそりゃあもう酷いことになっている。灰色の煙が蔓延し、温度はゲームの仕様で緩和された上でなお、とてつもなく暑い。


 地面を見渡せば、そこには真っ黒な焦土が広がっている。絶対ダメージ床みたいになってるよ、あれ。



—————————————————————

『エリア変質:【ジマリハ焦土】』

『イベントクエスト【ジマリハ平原緑化計画】を開始します』

—————————————————————


—————————————————————

『【ネクロ・ハザード】第2段階』

『モンスターの撃破によってマナ活性率が減少したため、イベントが進行します。』

『現在のマナ活性率:5987%』

『本イベント中、全プレイヤーの【英雄補正】が1上昇します。』

『マナ活性率の低下に伴い、モンスターの出現速度が加速します。』

—————————————————————



 脳内に響くのは、エリア変化を示すログ。それだけだ。


 黒騎士の撃破ログが出てないってことは……まだ死んでないってことやん(絶望)


 嘘でしょ、あれでまだ死なないの?



『ま⬛︎地下の小さ⬛︎ミミズも第3形⬛︎あったし……あ⬛︎得ない話でもな⬛︎か』



 煙が晴れる。焦土の中心にはボロボロになった黒騎士……シャマザリエ以外に何も残されていない。


 いや、周囲のプレイヤーたちのドロップアイテムらしきものはあるが……あ、あれラピスのアイテムじゃん。こっそり分身に拾わせとこう。



 数を減らし、かろうじて残った分身を操作してラピスのアイテムを拾いに行かせる。私は翼を羽ばたかせ、高度を維持したままシャマザリエの元へと移動する。


 これ近づいたらジャンプスケア的な感じで第3形態に突入するやつでしょ。私知ってるぞ。てな訳で先制攻撃の準備を今のうちからやっておこう。



 そういえば、私は今回のイベント中……“敵キャラクターの撃破数”に応じて強化が入るらしいことがログによって示されている。



 さっきの隕石でどれだけ殺したのかは分からないが、まぁとてつもない強化が私に施されているのは感じる。感覚的にはイベント開始前の50倍くらい……なんか倍率おかしくない?


 正直、キル数に関しては最初のオリジンスキルで結構稼いだと思うけど……あ、闇属性のモンスターはダメージを与えるんじゃなくて支配してるから、そこか?


 隕石でモンスターも大量に巻き込んだからここまでバフ入ったっぽいのかな?

 まぁ多分そうなんだろう、というか今はそんなこと分析している場合ではない。



『合成、⬛︎成……なんだ⬛︎頭が冴え渡っ⬛︎いるような気⬛︎する』


 分身は一度死んだら、もうその戦闘中は再生成できない。だから演算の分担はできないけど……なぜか今の私はさっきよりも(・・・・・・)演算能力が上昇しているから問題もない。



『9重合成、〔超過(エクシード)超暴走(ランペイジ)複写(マルチ)・エンチャント・オリジンズ・プライム〕』


 発動するのは〔エンチャント・プライム〕という“無属性をエンチャントする”魔法を9つ重ねた合成魔法。



 この魔法は他のエンチャントとは一味違う。

 攻撃の威力上昇幅が他のエンチャント魔法よりも高いのだ。


 そして、ステータス画面から確認できた、更なるこの魔法の追加能力……【英雄補正】と【起源特効】のバフ。


 もしかしてこれ隕石撃つ前にやっといた方がよかったんじゃね?と思わないでもないが、まぁどうせ第3形態前にHP止まりそうだし今使っても変わらないだろ、多分。



『さて、じゃあ……』


 再び立ち上がる黒騎士を上空から見下ろす。

 黒騎士の鎧はひび割れ、中からは光が漏れ出していた。



『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎———ッ!!!!』


 言葉にならない叫び声と共に黒騎士の鎧が弾け飛び、そこから奴は真の姿を表した。



『やろうか、最終決戦だ。』


 私は背後にありったけの武器を生成し、そう呟いた。


なんかこの小説おもろいな、とでも思ったらぜひ下の方から評価してくれると嬉しいです。

ちなみにまだ全然インフレします。まだ序の口なんだな、これが。

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