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Ep.28 エーテル・ハザード/支配

「えっ……なにこれ?」


 【虚鎖ノ黙示(ナイトヴェイル)()黄昏ノ王域ネクロリッジドミニオン】発動直後、私の右手から禍々しい鎖が発射され……それは地面に突き刺さった。


 いや、前使った時絶対こんな感じの演出じゃなかったと思うんだけど……



 数秒経って、左手からも鎖が放たれる。こちらは地面ではなく、空に向かって伸び……何か(・・)に突き刺さったような感触。同時に、そこを中心として空に暗雲が広がってゆく。


 地面に突き刺さった鎖からは黒いヘドロのようなものが周囲に溢れ出している。暗雲とヘドロは凄まじい速度で周囲に広がっていき……やがて、魔法陣で定められた範囲すべてが黒に染められた。



 突き刺さっていた鎖は地面、そして空から抜けて消えた。なんで演出変わったんだ……?


 というか、なんか……足元の感覚が変なんだけど。もしかしてなんか起きてたり……



「うぼぁ」


 見なきゃ良かった。


 私の脚は、ついさっきまでとはまったく違う様相を見せていた。いや、脚だけではなく……下半身全体が、まるで意志を持った肉のドレスのような形に変わっていた。



 タコ足のように蠢く触手、ヘドロのような何か、鎖のような何か……いたるところかろ眼球が生え、骨が突き出し、そして隙間からは蛆のような虫がぞろぞろと大量に這い出ている。


 そして気づけば、地上からおよそ10m程度は浮いていたはずなのに……私の下半身が、地面に触れていた。浮遊していた感覚は消え、足元の重みと粘つきが感じられる。


 なんで私のスキルだけこんなに気持ち悪いの?



『まぁい⬛︎か……ひ⬛︎まずは魔法⬛︎構築に専⬛︎……な⬛︎か声がおかし⬛︎なぁ……?』


 自分の声にノイズがかかる。これもしかして最終的に上まで侵食されない?


 なぜこんなことになったのだろうか。理由として考えられるのは……灰色の霊の使用したスキルによる影響、もしくは詠唱の追加だろう。



『えぇ……? これはワタシも予想していない展開なんですけど……? あの霊はただ威力を上げただけのはず。詠唱の追加も威力や規模が上がるだけですし……えぇ?』


 ポンコツAIめ! 本当に何の情報もねぇな!?



『まァイィ⬛︎……何やら力⬛︎溢レ⬛︎クルしナ⬛︎……』

『あの、普通に喋り方まで変わってません?』


 そうかなァ……?

 なんかすっごい今気分が良くてサァ、魔法構築も冴え渡ってるんだよねェ……


 なんというか、脳が3つあるみたいな感覚……? これなラ同時並列思考も……はっ!?



 思考を分割し、自分を客観視して気づいた。なんか喋り方おかしくなってたぞ、今の私。



『危ない危な⬛︎、力に溺れる⬛︎みたいに⬛︎るとこ⬛︎だった……』


 もしかして、このスキルって危険なやつですか? 参ったなぁ……普通に便利だから多用したいっていうのに。


 さて、意識を取り戻したところで……





—————————————————————

『アノマリー・アセンション!』

『【“淵月魔獣、神蘇の吸血鬼”アステリア】Lv.???』

『⬛︎⬛︎の混源。』

—————————————————————



 突然、脳内に走るログ。ついに私もボスデビューですか……これ完全に今のオリジンスキルのせいだな。


 まぁ自由にやっていたところに他所(よそ)から『やれ』って言われて、そのまま従うのも少し癪だが……いいさ、今回は乗ってあげよう。



『なん⬛︎使い方は変わ⬛︎たらしいけ⬛︎……任意で元の力も引き⬛︎せそうか?』


 私は手元に魔力を集め、そして……頭に浮かんできた言葉を口にする。



『【(Dead)触の(Touch)(Swamp)】』


 その言葉を口に出したと同時、周囲の黒く染まった地面がドクンと脈動する。気持ち悪い感覚だ。


 しかしどうやら、ちゃんと効果はあるようで……遠くにいたプレイヤーやモンスターが、地面から生えてきたR-18Gな触手にぬるぬるされているのを確認できた。


 これで、元の機能……私より弱い敵を自動的に殺す、という部分は再び動き出した。あとは……新しい力を試してみよう。



『【(Heaven)堕の(Fall)(Chain)】』


 その言葉と同時に、今度は暗雲立ち込める空が脈動する。









「おい、ちょっと待てなんだこの触手は……うぐっ!?」

「クソ、また触手プレイかよ……わりとマジで触手プレイなの嫌すぎるんだが?」

「キャーッ!」


 彼ら彼女らは、ラピスがアステリアにすべてを(・・・・・・・・・・)捧げるために(・・・・・・)設立したクラン———“アストライア”のメンバーである。


 そんなクランメンバーは今、ラピスに放置され……地面から這い出る触手によって捕まっている。


 その中の1人が、死を受け入れて遠くを観察していると……なにやら、エーテル・ドラゴンの上空から黒い鎖が放たれ———



『くるるぁっ!?』


 その頭を貫くのを目撃した。

 鎖が突き刺さったドラゴンは全身を悶えさせるが、やがてそれも落ち着き……全身が少しづつ黒に染まっていった。


 いや、色だけではない。シンプルなドラゴンだったはずが、アンデッド……全身が骨で構成されたドラゴンへと変わっている。



 周囲を見渡すと、どうやら他の場所にも空から鎖が降り注いでいる。これらはおそらく、このイベントのボス枠を狙ったもの……この光景を観察していたアストライアのメンバーはそう考えたが、これは当たっている。


 そして、すべてのボスモンスターがアステリアに支配権を奪われたその時……



「あ……?」


 周囲の、同じように触手に囚われていたモンスターたちの様子が変化する。バキバキと音を立てて、緑色のモンスターたちはその体色を紫色や灰色へと変化させていき……そして、その骨格や筋肉なども変質した。


 本来、【虚鎖ノ黙示(ナイトヴェイル)()黄昏ノ王域ネクロリッジドミニオン】がこういったボスでもないモンスターに対して引き起こす事象は『低レベル、あるいは闇属性モンスターの支配』のみである。


 これは【虚鎖ノ黙示(ナイトヴェイル)()黄昏ノ王域ネクロリッジドミニオン】の効果ではない。このゲームあるあるの『スキルに書いていない効果』といったわけでもない。


 この現象は様々な要因が重なって生まれた、ある種事故のようなものである。


 エリア全体が闇属性になったこと、雑魚モンスターの大半が支配されたこと、ボスモンスターまでもが支配されたこと、そしてアステリアの肉体が変質したこと……そして、【ネクロ・ハザード】という没データが既に存在していたこと。


 これらの要因が重なった結果、AIが下した判断は……


 『アステリアをイベントのボスにする』というものであった。




—————————————————————

『警告:オリジンスキルによる広範囲への強力な支配を検知。』

『アノマリーイベント【ネクロ・ハザード】を開始します。』

『参加人数:9003』

『クリア条件:【“淵月魔獣、神蘇の吸血鬼”アステリア】の撃破、またはマナ活性率を0%まで低下させる。』

『プレイヤー:【アステリア】のクリア条件:【はじまりの街 オーヴァ】の陥落』

『マナ活性率はモンスターの撃破によって低下します。』

『オリジンスキルの影響によりマナ活性率が大きく上昇しました。』

『現在のマナ活性率:10790%』

『【エーテル・ハザード】が本イベントと統合されます。』

『本イベント中、全プレイヤーの【起源特効】が上昇します。』

『プレイヤー:【アステリア】は敵キャラクターのキル数及びエリアの侵蝕率に応じて全ステータスが上昇します。また、一時的に強制ログアウト以外の方法でのログアウトが制限されます。』

—————————————————————


虚鎖ノ黙示(ナイトヴェイル)()黄昏ノ王域ネクロリッジドミニオン:進化形態】

m9(^Д^)お前の精神を具現化すると……こんな感じカナ!?


なぜか更に進化した。詠唱追加した上でレイヴィ・グレイの念が混じり、かつ最大出力でオリジンスキルを発動したためにこうなってしまった……

本人由来の要素が強いオリジンスキルは、こんな感じに勝手に進化することがある。まぁ今回はそんなに本人由来でもなかったんだけど、結果的に本人由来が強まった。

進化したオリジンスキルは『EVO』の数値が1つ上がる。


【アステリア】

ラピス<いい性格してるよね。大好き。

ヨミタクスゼイアン<アイツ本当にクズだから関わらない方がいいよ

アレティ・レーヴァ<ここまでクズだと逆に好きになるよね

ドミノ<ワタシの性格はご主人様から学習しました!

レイヴィ・グレイ<取り憑いたはいいものの、心象風景が気持ちわるすぎて居心地が悪いです

火華サキ<見た目と頭以外にいいところがない

雪宮カエデ<ちょっと性格は悪いかもしれないけど……いい子だよ?


総評:クズ。


【通常プレイヤーのクリア条件】

マナ活性率を0にしてもアステリアには関係なくね?となるかもしれないが、0になったらイベントによるテコ入れで、アステリアがその場を引かざるを得ない状況に持ち込まれる。


オリジンスキル【虚鎖ノ黙示(ナイトヴェイル)()黄昏ノ王域ネクロリッジドミニオン】(進化後)

消費MP:0

CD:3d

EVO:2

《使用条件》

キャラクターの殺害数が一定時間内で1000を超えていること。

《儀式》

指定の形式で7つの魔法陣を設置し、それらすべてに自身の血を与える。

《詠唱》

【闇よ広がれ、光よ滅べ】【弱者は死ね、闇よ従え】【これより此処は闇の城】【永劫の闇に閉ざされよ】【屍は灰となりて命を蝕む】【骨は砕け、血は煮え滾る】【魂を喰らい、蒼月は輝く】【私こそが黄金の王である】

《能力》

支配律(Night Veil)】:魔法陣で囲われた範囲の支配権を獲得し、そのエリアに【闇属性】【蒼き月】【夜】を強制付与し、エリア内の闇属性モンスターすべての支配権を得る。エリア内の味方闇属性キャラクターの全ステータスが上昇し、自動回復を付与する。

【原罪の終点、淵月の根源】:種族に【淵月魔獣】を追加する。【淵月魔獣】は特性に【異形】【巨大】【死の魔眼】【這い出る闇】【触手】を持ち、1秒毎に自滅カウントを1獲得する。また、キャラクターを殺害する度に自滅カウントが1減る。自滅カウントが10になった時、蘇生不可の【死】を自身に強制付与する。この効果は詠唱が追加された場合にのみ発動する。

(Dead)触の(Touch)(Swamp)】:範囲内敵キャラクターすべてのステータスが低下し、這い出る闇の手によってすべての耐性を無視して持続的なダメージを与え、対象が自身よりレベルが5以上低いプレイヤーの場合、【拘束】【移動不可】を強制付与する。対象が自身よりレベルが5以上低いモンスターの場合、その支配権を強制的に奪う。

(Heaven)堕の(Fall)(Chain)】:這い出る闇の鎖によって範囲内の強力な、プレイヤーでないキャラクターの支配権を奪う。この効果に抵抗された場合、追加でMPを消費し、かつ10000RP分のアイテムを生贄に捧げることによって確率を上昇させ、再度この効果を発動することができる。この効果は最大で10回発動する。この効果は思考予測で自動発動できる。この効果を同対象に10回発動し、かつそれで支配権を獲得できなかった場合、自身に【自我喪失】を強制付与し、1時間の間デスペナルティが非常に強化される。



本格的に中国のソシャゲみたいになってきたオリジンスキル。

秒間1キル以上が強制されるため、意外と使いづらいように見えるが……別に味方を殺してはいけないなんて書いてないのです。闇魔法でスケルトンを召喚してぶっ殺しましょう!


スキルのパワー自体はまぁ普通に強いオリジンスキルって感じではあるのだが、しかし範囲が広すぎる。あとクールタイムが短すぎる。

初心者狩り目的で使うと普通にBANされちゃうのでやめましょうね〜(思考読み取りなので不慮の事故はOK)

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