Ep.26 エーテル・ハザード/奴隷
◇LapiS.Lazuli
「がっ……!?」
ラピスの心臓部が、黒騎士の剣によって貫かれる。かなりの時間を耐えたはずだ……けれども、これではまだアステリアが準備を終えるのには不充分だろう。
だから、わたしはまだ終わるわけにはいかない。そう考えた彼女はオリジンスキル———【星見る瑠璃の死天使】の使用を決断した。
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オリジンスキル【星見る瑠璃の死天使】
消費MP:0
CD:7d
《能力》
・自身のHPが0になった時、それが敵キャラクターの攻撃によるものなら、このスキルを発動できる。これ以外の方法でこのスキルを発動することはできない。発動した時、最大HPを10000増加させ、HPを全回復して復活する。また、敵の能力に応じて、すべてのスキルが一時的に進化する。周囲の敵キャラクターすべてに【光属性耐性低下:50%】を強制付与し、自身に【光属性】【最終ダメージ軽減:50%】【挙動補正:100%】【英雄補正】を付与する。戦闘終了後、これらの能力をすべて解除する。
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このスキルは、彼女がアステリアと戦った際にも発動したスキルである。発動時のパワーアップ量は、その他ほとんどすべてのスキルを凌駕するほど。
現在、既に彼女はもうひとつのオリジンスキル……【わたしはあなたの⬛︎⬛︎⬛︎】を発動している。
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オリジンスキル【わたしはあなたの⬛︎⬛︎⬛︎】
消費MP:0
CD:45s
《能力》
・プレイヤー:【アステリア】(PNo.00,006,108)と接触してから1日以内でなければ、このスキルは発動できない。また、プレイヤー:【アステリア】(PNo.00,006,108)からの好感度に比例して、このスキルを発動中、挙動補正が増加する。
・45秒間、全ステータスを30%上昇させ、与えるダメージが30%上昇し、最終ダメージが30%上昇する。
・隔離エリア内、かつそのエリアにプレイヤー:【アステリア】(PNo.00,006,108)が存在する場合でのみ、スキル名および以下の⬛︎を解除し、さらにこのスキルが常時発動する。
▶︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
▶︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
▶︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
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このスキルは非常に緩い条件で発動し、ラピスの戦闘能力を大幅に強化する。本領を発揮できる場所でそこまで役に立たないというのは少々微妙なところだが、それでも強化幅は大きい。
それに重ねて追加のオリジンスキルを乗せるとなれば、それはもはや現状の全プレイヤーでも最強の単体スペックを得ることとなる。
だが、そうでもしなければ……アステリアのために時間を稼ぐという目的が達成できない。
前にアステリアと戦った際は、シンプルなスキルの地力の違い……そして、相手がアステリアだったことによるオリジンスキルの出力低下によって敗れたが、今回は違う。
あの時のように真正面からスキルの激突は避けるのなら……つまりは時間稼ぎを目的とするのなら、これほどに強力なスキルはない。
そして、さらに言えば……彼女は知らないことだが、今回はアステリアのためにスキルを使うため、オリジンスキルの出力が大幅に上昇することになる。
『⬛︎?』
ラピスの背中から、一際大きな天使の羽が生える。頭の上には光のエフェクトが現れ、首元、手首、足首には水色のタトゥーのようなものが刻まれる。
さらには、前に発動した時にはなかったはずの光の剣までが生成された。
彼女は『なぜ前とこんなにもスキルの効果が違うのだろう……?』と考えはしたが、一旦これは置いておくことにした。
わたしのやるべきことはただひとつ。アステリアのための時間稼ぎだ。失敗は許されない。
「ユキのために……ここは通さないよ」
『⬛︎。』
ラピスは光の剣を黒騎士に向け、そう宣言した。
◇アステリア
各地に魔法陣を設置完了。キル数は既に1000を超えているので問題なし。
「さて……では、始めよう」
私は詠唱を開始する。
「【闇よ広がれ、光よ滅べ】【弱者は死ね、闇よ従え】【これより此処は闇の城】【永劫の闇に閉ざされよ】……【屍は灰となりて命を蝕む】【骨は砕け、血は煮え滾る】【魂を喰らい、蒼月は輝く】【私こそが黄金の王である】」
そして……さらに詠唱を追加する。
一部の魔法および魔法系スキルには“詠唱”というものが存在する。これはしてもしないでもいいが、した方が威力は上がる……そういうものだ。
だが、これらシステムで定められた詠唱に、さらに言葉を追加することもできる。
追加する言葉は魔法に適したものでなくてはならない上に、相性の悪い詠唱を繋げると魔法やスキル自体が失敗してしまう……しかし、成功すれば威力は上がる。
これは全部ドミノ談なので、そこまで信用のおける情報でもないが……まぁ、なんというか……おもしろそうだったから、この泥舟に乗ってみることにしたわけだ。
正直薄々気づいてはいたが、オリジンスキルは……プレイヤーの内面を反映したスキルだ。だから、相性のいい詠唱を追加するのは他と比べても楽ではあるだろう。
大事なのは自分の正直になること……そう、ラピスも言っていた。
「【天地すべては頭を垂れよ】【世界をこの手の中に】【遍くすべては私の奴隷】」
魔力が手の中に集まっていく。まだだ、まだやれる。まだ威力を上げられる。
「【支配者は私ただ一人】【何もかもが自由を手にする】」
まだ、あと一小節なら追加できると……オリジンスキルが伝えてくる。なら……
「【私のために死ね】」
紫色の光が手元に集まっていく。前に発動した時とはレベルの違う光が、魔法陣から溢れ出る。
『ァ……ァア……【神蘇神権】』
私の中から、突然灰色の霊が顔を出し……なにやら魔法のような、スキルのような何かを使って……そして私の中へと戻っていった。
さて、では今度こそ本当に準備が整った。さぁ! 全員私のために死んでもらおう!
「【虚鎖ノ黙示ト黄昏ノ王域】」
灰色の力と黒色の力が混ざり合い、世界が再び闇に染まる。
【オリジンスキル】
出力のブレがすごい。ラピスは『アステリア』をトリガーにしてスキルの出力が大幅に変わり、アステリアは『支配』か『自由』をトリガーにして出力が変化する。トリガーはプレイヤー毎にそれぞれ違う。
【星見る瑠璃の死天使】
アステリアのために使用すると追加のエフェクトが発生する。なんで水色のタトゥーが首元、手首、足首に現れるのかは……まぁ、うん。
ちなみにタトゥーは鎖の柄です。
【わたしはあなたの⬛︎⬛︎⬛︎】
ラピスのもうひとつのオリジンスキルで、アステリアとの戦闘後に目覚めた……というか、アステリアとの接触によって獲得した。
この⬛︎⬛︎⬛︎は隔離エリア内、かつそのエリアにプレイヤー:【アステリア】が存在する場合にのみ読めるようになる……が、その話は多分本編でしない。
隠された文字の正体に気づいた人は多分ドン引きする……本当にね。文字数はそのまんまだから当てたい人は考えてみよう! 真実に気づいた人は感想に書いてみよう! あ、内容はぼかしてね。




