Ep.22 エーテル・ハザード/猿展
◇このタイトルは———?
巨大な光の柱が、突如としてオーヴァの近くで噴き上がる。そして、目が焼けるような光の中から緑色の竜が現れた。
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『アノマリー・エンカウント!』
『アノマリーモンスター【エーテル・ドラゴン】Lv.350』
『それは、魔の災害。』
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『クルルァーーーンッ!!!』
光の柱が1本噴き上がったことをきっかけに、オーヴァの周囲のいたるところから光が発生する。
それらは徐々に大きくなり、やがて光の柱へと変貌し……そこから更なるモンスターが現れる。
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『アノマリー・エンカウント!』
『アノマリーモンスター【エーテル・ベヒモス】Lv.350』
『それは、魔の災害。』
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『アノマリー・エンカウント!』
『アノマリーモンスター【エーテル・タイタン】Lv.350』
『それは、魔の災害。』
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『アノマリー・エンカウント!』
『アノマリーモンスター【エーテル・オーガ】Lv.350』
『それは、魔の災害。』
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『アノマリー・エンカウント!』
『アノマリーモンスター【エーテル・フェンリル】Lv.350』
『それは、魔の災害。』
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『アノマリー・エンカウント!』
『アノマリーモンスター【エーテル・ゴリラ】Lv.350』
『それは、魔の災害。』
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脳内に流れる大量のアナウンスは、周囲一帯のプレイヤーに多少の驚きと……そして、イベントに対するワクワク感をもたらした。
◇地上———はじまりの街 オーヴァ
光の柱から現れたのは、巨大なモンスターだけではない。
通常サイズのモンスターも、光の柱から無尽蔵とも思えるほどに湧き出している。
モンスターたちは何やら緑色のオーラを纏っており、検証班の手によってどうやら魔法攻撃が効きづらいことが判明した。
「っしゃあ! 物理職の時代だぁぁぁ!!!」
「軽減量が誤差レベルという話が伝わってきたんですが……」
「うるせぇ! 黙れ!」
「〔ファイアー・ボール〕」
魔法使い風の男の手から火球が放たれ、それが直撃したモンスターおよそ5体が一撃で死滅する。
「……」
「物理ざっこwwwwww」
「殺す……!」
流れるように殺し合いが始まる場所もあるが、だいたいはしっかりとチームを組み、的確にモンスターを捌いていた。
◇NEXUSクランハウス———LapiS.Lazuli
「……返事が来ないね」
ラピスは1人、クランハウスの中でソファに座ってくつろいでいた。他のメンバーは既にイベントに参加しているが、彼女はやる事があると言ってここに残っている。
「もしかして、今忙しいのかな……?」
ラピスはアステリアに対し、何度もメッセージを送るが……どうにも、既読すら付かない。
ラピスが昔からのネトストだと判明した後も、別に2人の交流は消えていない。むしろ、このゲームを攻略するための定期的な連絡すらしている。
彼は気づいたらすぐに返事を返す、つまり今はわたしのメッセージに気付けない状況……なにか強大な敵とでも戦っているのだろうか、と彼女は考える。
「成果発表の予定だったけど、忙しいならまた今度にしようかな……」
ラピスはしょんぼりとした顔をする。
「じゃあ、今日はこの街を守ろうね……」
彼女がそう呟いた場所には、何も残されていなかった。
◇オーヴァ 正門前
全長4、5メートルはあろうほどのゴリラがいた。名前を【エーテル・ゴリラ】とする、このイベントにおける中ボス枠のモンスターだ。
近くには子供のようなアバターのプレイヤー。名前を“シン”とする、ショタコンのネナベであった。
「う、うぅ……」
シンは大量のモンスターと戦い、戦闘の余波で吹き飛ばされここにいた。そして、そのすぐ近くにはエーテル・ゴリラが迫っている。
「シンちゃん!」
シンのパーティメンバーが、倒れるシンに対して声をかける。だが、シンは【脳震盪:軽度】の状態異常で動く事ができない。
そこに、大柄な男のプレイヤーが現れる。
「大丈夫だ。軽い脳震盪を起こしてるだけだ」
プレイヤーネームを“オーガドラゴン”とする、2mはあろうかというサイズのプレイヤー。彼は他ゲームではトップクラスの実力を持ち、つい最近このゲームにも参戦した。
「オ、オーガドラゴンさん……!」
「そっちに投げるからしっかり受け止めろ」
オーガドラゴンはシンを抱え、パーティメンバーのもとへとそれを投げる。
「ありがとうございますっ!」
「フン……善意でその子を助けたわけじゃない」
オーガドラゴンはエーテル・ゴリラへと向き直り……
「いい機会だからコイツと闘ってみたかっただけだ!」
右足による蹴りを、ゴリラの顔面へと打ち放つ。
『ドガッ』と音がして、蹴りがクリーンヒットしたことが感じられる。が……
「ほうっ さすがビクともしないか」
ゴリラはすかさずオーガドラゴンにパンチ。
『ギャゴォ』と風を切る音、そしてゴリラの拳。
咄嗟に両腕でガードするも、一撃で吹き飛んだオーガドラゴンは『ダァーン』という音と共に、付近の木に背中から激突する。
「あっ 一発で折れたッ」
オーガドラゴンのログに表示される【骨折:左腕】の状態異常。
「に……人間は素手ではスライムすら殺せないというが……200kgを超えるゴリラだとやはりキツイな」
ゴリラは彼へと近づき、そしてその足を掴む。思わず彼も『わっ』と声を出してしまった。
ちなみに、このゲームのスライムは物理完全無効タイプのスライムである。
『ビタァン!』と、ゴリラがオーガドラゴンの身体を地面に打ち付ける。
「ぐうっ」
ゴリラの強力な顎力は人間の頭蓋骨などひと噛みで砕く。
その腕力は人間の腕など一瞬でひきちぎる。
「ゴ……ゴリラを本気で怒らせたのがまずかったかな」
『ホギャァァァァ!!』
トガドガッ!とオーガドラゴンの身体がそこかしこに振り回され、打ち付けられる。
ゴリラは怒ってなどいない。玩具を与えられた幼児のように破壊して遊んでいるだけだ。
「ごはっ!」
オーガドラゴンの口元から、青みがかった赤いポリゴンが大量に溢れでる。
無邪気に嬲り殺しにするッ
余計な脂肪が一切無くその背筋力から繰り出す打撃の威力は推定2〜5トン。
その握力は500kg。
ゴリラは大きく口を開け、オーガドラゴンの頭を噛み砕こうとする。
咬合力は400kg超え。
霊長類最強生物ゴリラと遊んではいけない。
「あうっ」
オーガドラゴンは頭を噛み砕かれて死んだ。
ゴリラは絶対に本気で怒らせてはいけない超危険生物である。
『ホギャァァァァッ!!』
「なんか勝手に喧嘩売って勝手に死んでったな……」
シンのパーティメンバーはその一部始終を見て、そう言葉を漏らしたそうだ。
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