Ep.129 THE END XIII
◇少し前……
「そうだ、ユキちゃん……前に言っていた【Obsession Chronicle】とかいうオリジンスキルについての話なんだけどさ……」
神蘇国中央に位置する城、その会議室の中。
ソファの上で寝転がるアチコチが私の方へと声をかける。
「アレってつまりはコストさえ払えばなんでもできる、ただし割高……ってことで合ってるよね」
「まぁそうだよ。シチュエーションによっては起こせる事象に制限掛けられるけど。それにあまりにも規模が大きい場合はコストが高すぎて到底支払えないね、アレは」
変なことしようとすると消費Bloodが簡単に1億とかいくからね。桁が違いすぎるわあんなの。
「でも、それなら……」
◇???
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『接続。』
『解放状況を確認中……オリジンズ・インフィニティは解放中です。』
『ARTIFICIAL DREAMAKERによる認証を確認中……許可。』
『“創世記”による認証を確認中……許可。』
『アーカイブにログイン中……完了。』
『エンド・シナリオの進行度を確認中……完了。』
『準備中…………』
『協議中……承認。』
『プレイヤー【アステリア】に“メインキャスト”タグを追加。』
『プレイヤー【アステリア】に“ドリーマー”タグを追加。』
『オリジンズ・インフィニティと接続しました。』
『HP:∞/∞』
『MP:∞/∞』
『変換中……完了。』
『Blood:∞/∞』
『特殊称号獲得:【ORIGINS INFINITY】【メインキャスト】』
『シナリオスキル獲得:【メインキャスト:エンド・シナリオ】』
『シナリオスキルは各シナリオ毎に1人までしか獲得できません。』
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シナリオスキル【メインキャスト:エンド・シナリオ】
・あなたは【注目度】に応じた強化を得る。
・【最終決戦】状態なら、あなたの制限すべてを解除する。
・あなたの行動でエンド・シナリオに与える影響が増加する。
・【バッドエンド】状態なら、特定の条件を満たすことによって、あなたは一度だけエンド・シナリオの結末を書き換えることができる。
(シナリオスキルは所持プレイヤーのログイン頻度が低い場合、削除される可能性があります。)
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◇R・C起源世界管理基地———アステリア
『……なる、ほど』
あの光る球に触れた瞬間、球を構成していた力すべてが私へと引き寄せられ、溶け込み……私の奥底へと浸透した。
私の身体は、無限のエネルギーで満たされたのだ。
今なら、どんなことをしても尽きない魔力が私にはある。
しかし……同時に、私の身体が崩壊していくような感覚もあった。
脳内で確認……【身体崩壊】の状態異常が強制的に付与されているらしい。
まぁしかし、そういうこともあろうかと……アチコチは事前に対策法を考えてくれていた。
「は、ははっ……流石のお前でもその力は制御できないらしいな?」
『それは……どうかな?』
発動するのは……魔力さえ捧げればなんだろうと実現してしまう、魔法のようなスキル。
『【願いも嘆きも記憶の中に】【記せ】【縛れ】【顕現せよ】——————【Obsession Chronicle】』
手元に、青い装飾が為された魔導書が召喚される。
そして、私は詠唱に続け……新たに創造した魔術の名を紡ぐ。
『【全知全能】』
イメージは———荒れ狂う力すべてを取り込むブラックホール。
私の身体を蝕む力、そのすべてを我が物とするという願い。
その感情を込めて、システムによって自動的に名付けられたその魔術の名前を口に出した。
消費Blood2億7000万、本来なら覆せないであろう【身体崩壊】の状態異常を【Obsession Chronicle】の固執魔術によって無理やり抑え込む。
「おいおい、なんだそれは……!?」
『あぁ……あはぁ……』
実に……実にいい気分だ。
心が力で満たされている。
私の全身に無限の力が流れ込み……その姿を変えてゆく。
身体のいたるところに青白いヒビが入り、そこからはどぷり、と大量の血が吹き出る。
私のただでさえ青白い肌がさらに白く変色し、オリジンズ・インフィニティと同様の淡い輝きを放ち始める。
溢れ出した血が肌をつたり、足元へとこぼれ落ち……そこから周りへとそれが広がっていく。
やがて部屋全体の床すべてが真っ赤に染まった頃に……私はようやく目を開けた。
『産まれて初めて……心の底から自由を感じたよ。本当に……本当に素晴らしい……っ!』
ちらり、と横にへたり込む金髪を視界に入れて……どうでもいいのですぐに外す。
『行こうか、地上へ……【ワープゲート】』
地面に紫色の円が出現する。
私は両手を広げ、後ろへと倒れ込むようにしてそれに身を投げた。
◇R・C起源世界管理基地———セレンティ
「……奴がこうまでオリジンズ・インフィニティを制御できるとは、予想以上だ。いや、これは喜ぶべき事なのかもしれないが……このタイミングでやられたのがダメだ。このままでは……!」
真っ赤に染まった床の上で、金髪の女……セレンティが叫ぶ。
アステリアはもはや止められないだろう。
だが……アレをそのまま放置したら何が起こるか分からない。
ならば、可能性が低くとも……止めなければならない。
『はぁっ、はぁっ……間に合ったか』
「……なんの用だ、リサーチャー。私はアレを止めるために今から地上へ———『あぁ、分かってる分かってる。だからこれを渡しに来た』
復活したリサーチャーが、セレンティへと手渡したのは……メガホンのような魔導具。
『持っていけ。』
◇地上
特殊裁定によって、“星斬り”により死亡したプレイヤー全員はセントリアの上空でリスポーンし……そのままセントリアだった大穴、その端へと着地した。
そして、その瞬間———彼らの脳内ではアステリアの行動がムービーとして映し出されたのだ。
その映像は、彼女がワープゲートへ飛び込んだシーンで終わり……
彼らが空を見上げれば、そこには巨大なゲート。
そして———全身から大量の血を溢れさせながら浮遊する、白い人影。
『さぁやろう、本当の最終決戦だ。私に殺されたい人から前に出てね? あはっ♡』




