Ep.115 終幕は私の筋書きで
※主人公の部下です
◇12月21日、フィネラの死滅大地
【終末街 フィナーリア】の直前に位置する、【フィネラの死滅大地】にて……プレイヤーの集団同士の戦いが勃発していた。
「ヒャッハーッ! 汚物は消毒だ〜!!」
「うわぁぁぁっ!!」
灰色の荒野に野太い叫びと、禍々しい笑い声が響き渡る。
ただ普通に、フィナーリアに辿り着くために行軍していたクラン【起源帝国】の面々は、邪悪なPKクラン———【ダウナー吸血鬼お姉さんファンクラブ】(アステリア命名)のPKerたちによって蹂躙されていた。
「〔超過・複写・フレイムシュート〕」
「〔超過・複写・フレイムシュート〕」
「〔超過・複写・フレイムシュート〕」
「逃がさん……【キリングドロー】」
水色髪の、まったく同じ顔をしたプレイヤー軍団….. スパイク付きの肩当てやモヒカン頭、そして見るからに凶悪な改造武器を掲げたならず者数人……現役厨二病、フード姿の青年など……個性豊かなクズ共は、楽しそうに彼らを襲う。
「ま、待ってくれ……頼む、宝石やるから見逃してくれぇ!」
「あぁ〜ん? なんで言ったか聞こえねぇなぁ〜! おらっ! 装備寄越せ〜! ギャハハ!」
命乞いをする魔術師の喉元を、巨大なナタを持った大男が容赦なく引き裂く。
断末魔を上げる暇もなく、魔術師の体は光の粒子となって霧散した。
「ケェーーッハッハッハ! 脆い! あまりにも脆すぎるぜ! 運営が用意した道筋なんて温いスープに浸かってるからこうなるんだよォ!」
「ひぃぃぃっ!! お前のキャラクリ気持ち悪いよぉ〜!」
「あ?」
「お?」
クラン【起源帝国】のリーダーがビビりながら煽り、チンピラのようなファンクラブ会員が反応する。
しかし、チンピラはすぐに興味を失ったかのように視線を外し……メガホンのような魔導具を持って口を開く。
「テメェら、よく聞け! この襲撃はほんの挨拶代わりだ!」
彼は斧の先を、遠く彼方にそびえる中枢都市の方角へと向ける。
「いいか、死に損ねたネズミども! 街に戻ったら、せいぜい他の腰抜けどもに伝えておくんだな! 12月23日、午後10時……【中央国 セントリア】に集まりやがれ!」
「あの、その日予定があるんですけど」
「知らねぇ! テメェで勝手に予定を空けろ! つーか10時なんだから普通空いてるだろうが! あぁん!?」
「うるせぇ! こっちは夜勤なんだよ! そっちこそ時間ずらせや! おぉん!?」
「うるさ……」
どうでもいいからさっさと殺したいな、とミリピィは思った。
◇12月22日、神蘇国———アステリア/その他
「さて、あの子たちに宣伝はお願いしといたけど……大丈夫かな?」
「あの子たちなんか世界観違わない? 大丈夫とは思えないんだけど」
「一部だけだから……」
いや、本当に。数人は世紀末だけど、その他はわりと普通だから……
「さーてさてさて! みんな集まったかな!?」
「全員いるよ。私とラピス、狂夜、ヒバナ……それにグレイとドミノ」
「こうしてみると意外と少ないね……
あぁそうか、アウロンちゃんと右腕ちゃんがいないのか。あの2人は?」
「アウロンは別のクランやってるよ。右腕ちゃんは……このゲームやってるのかな? まぁNEXUS辞めてからは連絡取ってないよ」
どこかでまた会えたらいいんだけど……まぁ、確かにあのあたりの時期の私はちょっとアレだったし……クランを追放された理由も、分からないでもない。
ま、最近の私はこれでも荒れてないからね。無駄に男釣って遊んだりなんて………………
うん、してないよ。
「まぁ確かに、NEXUS終盤のアステリアちゃんはかなり変だったよね。特に理由なく恋愛チラつかせながら扱き使って“実は男でしたー!”ってやるの、なんか君らしくないもん。だって普段ならずっと長く利用するだろう?」
「まぁそうなんだけどさ、あの時はちょっと現実の方で……まぁ、うん」
この話はやめようか。
「アステリアちゃんが話したくないなら、私は詮索しない。ラピスちゃんも口を噤んでるし、気にはなるけど……仕方ないね。さて、じゃあ最後の会議といこう」
ヒバナがインベントリから機械を取り出し、テーブルの中心に放り投げる。
その機械からはホログラムのようなものが投射された。
投射されているのは、日本サーバー……ジャパーダ大陸の地図。
「このゲームにおいて、日本サーバーはストーリーの中心となるように作られている」
「そう? なんかアタシ的にはアメリカに変な要素多いなーって感じるけど」
「アメリカも多めだけど、最終的には日本サーバーで物語が収束する構造なんだよ。オリジンストーンを嵌める【台座】やオリジンズ・インフィニティ……リアリティ・カオスの基地といった多くの要素が日本サーバー……特にセントリアに集まっているからね」
「オリジンストーンの数も日本とアメリカ多め、残りは適当に散らばってる感じだったしね」
このばらつき方は変な炎上してもおかしくないとは思うが、存在に気づかれる前に私たちで全部回収したから燃えるわけもなく……
「しかしさ、アチコチ。私は1個気になる点があるんだ」
「なんだい、アステリアちゃん」
「オリジナルズのアストラは、【はじまりの街 オーヴァ】の地下にオリジンズ・インフィニティが存在するって言ってたんだけど……キミは【中央国 セントリア】にあると言っているよね。これについては?」
「私の調べた情報によれば、オーヴァの地下に……長いからちょっと略そう。オーヴァの地下にインフィニティが存在するという情報はないね。これは多分、アストラの情報が古いからだと思う」
古い?
いや、まぁ確かに彼女は地下に幽閉されていたし……その間に移動させていてもおかしくはないか?
そもそも移動させられる物なんだ、とは思うけどさ。
「このゲームの過去に起きたこと、それを時系列順に整理すると……」
アチコチが遠くからボードを引っ張り出し、それにペンで文字を書いていく。
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1.クリエイターの故郷(ドリメカ星)でオリジンズ・インフィニティ誕生
2.今のオリジン(オリジナルズ所属の方)がそこに不時着、“終臨”の脅威を伝えてオリジナルズ結成
3.別世界から“リサーチャー”と“トラベラー”がオリジナルズに参加。2人は故郷が“終臨”に滅ぼされていて、独自の科学力でオリジナルズの元へ転移してきたらしい。
4.誰かがリアリティ・カオスを設立。オリジンズ・インフィニティを簒奪する
5.“アストラ”、“リアリティ”、“カオス”がオリジナルズに参加。3人はR・Cが別世界から誘拐してきたのをオリジナルズが救出した形。
6.R・Cとオリジナルズの最終目的は同じということに気づいたクリエイター、オリジン、リサーチャーがR・Cと談合。
7.オリジナルズとR・Cの決戦、すべての情報を3人から教えられていたR・Cが勝利。アストラ、リアリティ、カオスがそれぞれオリジンホールの地下に幽閉される。
8.リサーチャーはそのままR・Cに残留、クリエイターはどこかに行った、オリジンは知ってるけどネタバレになるので言わない
9.数千年飛んで今に至る。ここまでの流れは長いので割愛(多分ここのどこかでオリジンズ・インフィニティとR・Cの基地がオーヴァからセントリアへ移動)
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「……ちょっと待ってくれ。アストラちゃんの話とだいぶ食い違う。あとオリジンの正体は教えてよ」
「オリジナルズは大まかに“クリエイター”派とそれ以外に分けられる。クリエイター派はR・Cとズブズブで、それ以外はそれぞれ才能を見出され、適当な理由で連れてこられただけの存在だよ。アストラ、リアリティ、カオスが該当するね。まぁこっちはまともな情報渡されてないかも」
嘘でしょ!?
いや、なんか夢島アカリのインタビューで『オリジナルズが仲間割れしてる』というのは言ってたけどさ……ここまで酷いの!?
「そこまで酷いよ。あとオリジンの正体はやっぱり教えない……やっぱり初見の驚きが見たいからね!」
「……」
「私は全然分からないから、ユキくんも安心していいよ」
脳筋にそういう慰められ方するの、アレだわ……
「まぁこの辺りの世界観について、今回の計画にはそんなに関係ないからここで切るよ。で、計画の話に戻そう。まずは……」
◇12月23日、午後9時———神蘇国にて
「よーしよしよし、いい感じにスリムにしてくれたねヒバナ……」
「本当に頑張ったよ。ゴルちょーだい」
「はい」
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『2,000,000,000 ゴルをプレイヤー【ヒバナ】に受け渡した。』
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「……まぁ、貰えるだけいいか」
「さーて、それじゃあ行ってくるね」
ここから始まるのは私の物語。
アチコチが提案したのが始まりだったけれど……
これは私が自らの意思で選んだ、そういう戦いだ。誰にやらされているとか、そういうものでもない。
ただ単に———私が私のために、私がやりたいことをやる。ただそれだけ。
モノリスに手を触れ、転移する。
周囲の光景は邪悪な瘴気に満ちている。しかし、私の心は高揚していた。
【魔王襲来】イベントの開始まで、まだあと1週間。
しかし……何事も、予定通りに進むとは限らない。
「やろうか、私の筋書きで」
そして、翼を広げ———私は空に駆け出した。
【魔王襲来】は1週間後に開始……予定。




