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Ep.113 すぐに腕を千切って食べさせようとするタイプのNPC

◇中央国 セントリア———水煙街 ウェルタードからの一行


 【ヨイタウ砂漠】に存在するオアシス……【ウェルタード湖】の付近に位置する【水煙街 ウェルタード】


 ウェルタード領主の男、そしてその部下……あるいは騎士たちは、息子を失って心を壊していた彼のことを助けてくれた“渡り人(プレイヤー)たち”に協力するため……


 あるいはかつての物語に綴られる“魔王”の脅威に立ち向かうことでこのジャパーダ大陸を守るため、【中央国 セントリア】へと訪れた。



「ようこそお越しくださいました、ヨイタウ殿」

「こちらこそ、セントリア王自らのお出迎え、ありがたく存じます。ところで、聖女の予言で“魔王”が訪れる時刻は判明していると聞きましたが……」

「あぁ、その話ですか……それについてはあくまで“目安”と考えてください。ズレることもありますし、そもそも来ない可能性……別人が襲撃する可能性すらあるのです。予言とはその程度のもの……前後10()程度は警戒していただけると、こちらとしても助かります」


 無気力げな表情を浮かべるヨイタウ。彼の顔には不安が浮かび、そしてセントリア王もそれは同様だった。



「私は……教会の者との関わりが浅く、正直に言って彼らが何を考えているのかよく分かりません。オーヴァの件を見ると、彼らが本当に私たちを守ってくれるのか……それにすら疑問が残ります」

「はは……そうですね、あいつらは俺の息子すら救う素振りを見せなかった。あいつが死んだ後もそれを報告しただけだった……そんな奴ら、信用はできない」

「あまり言うものではありませんよ、ヨイタウ殿。それに、教会が守ってくれなくとも……あなた方はここを守るためにやってきてくれた。そうでしょう?」

「それも……そうだな」


 その言葉で少しだけ元気を取り戻したヨイタウ、それに釣られてセントリア王の表情も少しだけ明るくなった。



「なんにせよ……私たちで守りましょう、この国を……この地を」








◇中央国 セントリア———侍連合 サムリオンからの一行



 セントリアの王城前……プレイヤーが侵入することをゲーム的に禁止されたバリアの中へ、十数人の人間が進んでいく。


 その風貌は、まさに“侍”といったもの。

 彼らは孤島の上に存在する侍国家———サムリオンから、魔王討伐の助けとなるべくやってきた。



「活気に溢れ、魔王を前にして強固な団結を見せる……最高、故に最悪な人の街———お初にお目にかかる、中心の王。サムリオンの領主であり、究極(あるてぃめっと)侍の1人……この我、カカシアが推参した」

「感謝する、カカシア殿。私たちと共に魔王の脅威を退けよう」

「おぉ、カカシア! 久しいな……俺だよ、ヨイタウだ。覚えてるか?」

「ナヌッ、ヨイタウ殿。息子を失い、意気消沈の死に体と聞いていたが……息災のようで何よりだ」

「くくく、相変わらずだな。死に体などと人聞きの悪い……まあ、そう見えていたのも事実だろうがな」


 苦笑まじりに応じるヨイタウに対し、カカシアは腰に帯びた長刀の鞘を軽く叩き、不敵な笑みを深める。


 その背後に控える侍たちもまた、一様に鋭い気を放っていた。



「良い、実に良い面構えだ。喪失を抱えつつも前を向く……その精神こそが、真の武士道というもの。して、中心の王よ。我が【侍連合 サムリオン】が参じたからには、この簡素な城門だろうと金城鉄壁(アンブレイカブル)も同然。魔王とやらが何者かは知らぬが、この我の絶技(スキル)で一刀両断にしてくれよう」

「心強い言葉だ、カカシア殿。……しかし、先ほどヨイタウ殿にも話した通り、予言の時刻はあくまでも目安。それに、魔王の軍勢がどのような形で現れるかも判明していません。長期戦になる可能性も考慮していただきたい」


 セントリア王の慎重な物言いに、カカシアはフンと鼻を鳴らす。



「待つのは得意だ。釣りと果し合いは、待つ時間が長ければ長いほど成果が良くなるというもの。だが……ふむ。あそこにたむろしている“彼ら”はどう動くつもりなのだ?」


 カカシアが指差したのは、バリアの向こう側———【セントリア城下町】の広場に集まっている渡り人(プレイヤー)たちの姿だった。


 彼らは武器を振り、あるいは見たこともない魔法の検証を行い、まるでお祭りを待つかのような雰囲気に包まれている。



「彼らは……自由ですよ。我々が要請したわけではなく、自らの意志でこの地に集まっている。中には魔王を倒して名を上げたい者もいれば、単に希少な戦利品を求めている者もいるのでしょう」

「……不思議な連中だ。死を恐れず、それでいて誰よりも貪欲。我らサムリオンの民とはまた異なる種類の狂気を感じる。だが、ヨイタウ殿を救ったのが彼らだというのなら、無下にはできまいな」


 ヨイタウは、広場にいるプレイヤーたちを複雑な視線で見つめた。

 息子を失い、世界のすべてが灰色に見えていた自分に、無理やり手を差し伸べて「攻略」という光を見せてくれた者たち。


 しかし———その息子の命を奪ったのも渡り人。

 その真実は、教会の使者によって伝えられている秘密の情報。



 今回の戦いにヨイタウが参戦した理由、それは———









◇中央国 セントリア———ワタ人の一行



「おい、コイツら何だ?」

「さぁ……ラグナロクの時も居たような気がする」


 プレイヤー侵入禁止のバリア内へと入っていく……紫の綿飴としか形容できないNPCたち。


 その中の1体が、付近でそれを眺めていたプレイヤーに気づき……そちらへと歩き出す。



『ど う も』

「ひっ……ど、どうも」

『こんにちは、渡り人のお方。我々はあなたたちをお待ちしておりました……』

「あ、そ、そうですか……」


 紫の綿飴、その腕部分が『ムキッ!』と音を鳴らして膨れ上がる。

 なぜ急にバルクアップを……?



『我々はこの世界の守護を任せられている“ワタ人”と申します……』

「はぁ……渡り人のシンセシスです。こちらこそ……」

『我々はあなたのような渡り人が天空へと渡るのを見守る者であり、古代人類でもあり……そして、この世界が滅びを迎えようとするのを阻止する存在でもあります』

「な、なるほど」


 ひきつった顔で返答する渡り人。それをどう解釈したのか、ワタ人は突如として自らの腕を引きちぎり……



「えっ、今何を……」

『どうぞ』

「?」

『食べると元気になります』

「うーん……一応貰っておこう」


アイテム:【ワタあめ】

・空腹度を全回復する。

・HPを全回復する。

・MPを全回復する。


普通に強いが食べたくはない。



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