Ep.109 ムカついたときは罪のないプレイヤーをいじめて憂さ晴らしするタイプのダウナーお姉さん(偽)
◇陽光の谷ソルヴァリア———アステリア
「ま、待ってくれアステリアさん! 私たちはここに死んだオーヴァ領主の秘密を探しに来ているだけで……」
「残念だったね、今の私は人の話を聞けるメンタルじゃないんだ。いつもなら……まぁ、一旦逃げさせて、その逃げ途中で殺してたけど……今は我慢できないからすぐ殺すよ」
「ギリ悪質さが減ったか……?」
「なんだ、意外と良い奴じゃん!」
「不良捨て猫現象にしても無理あるだろ」
【陽光の谷ソルヴァリア】……峡谷に架けられた橋の上で、私はプレイヤーの集団と相対していた。
なんでかって? ちょっとムカついてるから憂さ晴らしにPKしようかな……と思ったから。それ意外になんかあると思う?
「え? あのガチャ回す人いるんだ……あっ」
背後から射出した剣が、そう呟いたプレイヤーの脳天を砕く。今なんか言った?
「クソ、やるしかねぇか……【根源「だーめっ」
短距離間の移動を補助するアクティブスキルを発動、すぐさま彼の背後へと回って首元をアストライアで刺し貫く。
このゲームにおいて、重要なスキルなどはしっかりと言葉を発しなければ発動できない。てな訳でまずは喉潰そうね。
「あ、そうだ。今度ASMR配信するから私のチャンネル来てね! “アステリアちゃんねる”で検索!」
「ぉ……ぁ……かはっ……」
アストライアを横に振り抜き、首を切断……しきれなくてちょっとブラブラしてたけど、まぁすぐにポリゴンへと変わっていったから問題はない。
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『アノマリー・アセンション!』
『【“魔獣、起源の天使”A-Y-Z】Lv.890』
『“⬛︎⬛︎”⬛︎⬛︎⬛︎。』
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『アノマリー・アセンション!』
『【“魔獣、獣人王”ShinQ】Lv.920』
『“⬛︎⬛︎”⬛︎⬛︎⬛︎。』
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『アノマリー・アセンション!』
『【“死金魔獣、拝命のアコラニア”ランキンシャー】Lv.980』
『“⬛︎⬛︎”⬛︎⬛︎⬛︎。』
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視界から外していた残り3人のプレイヤーたちが化け物へと変貌する。小声でスキル発動するのやめた方がいいと思いまぁす!
『あ、ASMR配信は見に行きます』
「そりゃどうも。それじゃあ死んでもらおうか」
『そんな簡単にやられ……うごぁぁ!?!?』
ビュッ!と背中の白触手がヌルヌルした化け物の頭部を貫く。10mぐらいなら全然射程圏内なんだよねぇ。
『シンクの仇ーッ!【ブラック・インパクト】!』
ギラギラ光る化け物が、その巨大な拳でこちらにパンチを繰り出すが……私はそれを、ただの蹴りで吹き飛ばす。
アクティブスキルの補正すら乗っていない一撃だったが、それだけで化け物は10m程度後ろへと吹き飛んだ。
「意外と課金して手に入れたスキルで強くなったかな……?」
『いくら……入れたぁ……!?』
「このぐらい」
私は指を一本立てた。すると、化け物の顔が『ハッ!』としたものに変化する。なんか勘違いしたな?
『有益情報だった……これなら殺されても良いぜ。あ、アイテムは置いてってもらえると……』
「【天終】」
『ぎょぺぇーーっ!?!?』
百本の剣が一気に化け物の身体を貫き、その巨体はポリゴンと化した。
ドロップは……クソが、PK対策用の重増しアイテムだ。こんなゴミ要らな……要らな……
……やっぱり貰っておこう。私は狐のぬいぐるみを拾ってインベントリにしまい込んだ。
『……』
おい、そこのもう1匹!こっそり逃げてもガシャガシャ音聞こえてるから無駄だぞ!
『チッ……自爆するしかねぇーーーっ!!〔ラスト・バーおぐぅっ!?』
「ダメだよ、そんなことしちゃ……お姉さん悲しいなぁ」
『え、もしかして本当に女性の方ですか』
「さぁ?」
『ぐ……一番嫌な返答』
「ま、知りたいなら私のクラン入りなよ」
『あいにくPK好きじゃないんでお断』
ぶしゃぁっ!!と、残っていた最後の化け物の頭部を触手で握りつぶした。残念、私が勧誘すると毎回拒否されちゃうね。
「ふぅ、ちょっとスッキリしたかも」
さて、それではユニーク狩りでも再開しよう。イベントまで1ヶ月……いや、違うか。3週間だ。なんなら2週間?
こんなことばっかりやってるとスキルの数が目標に届かない。まぁ5000個も必要かは諸説あるけど。
既に計画を実行するには十分な気も……いや、ダメだな。やっぱり心配だし。
イキって負けるのが一番ダサいからね。やれることは全部やろう。
「午後になったし、そろそろ日本鯖でユニークモンスターが湧き始める時間……頑張ろっか」
◇神蘇国エル・レイヴィア———12月16日
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オリジンズ・ウォー通信号外:ジャパーダ大陸で“魔王”が蘇る———大規模ストーリーイベントが12月30日午後10時(日本時間)に開催予定
◇ジャパーダ大陸にて“魔王”が力を蓄えて……(続きを読む)
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「ふーむ、なるほどなるほど」
「どしたの、アチコチ。なにか気になることでもあったの?」
「いや、こっちのやろうとしてることを運営も把握していそうだな、と」
「……まぁ、常に脳波とか読み取ってそうではあるけどさぁ」
というかイベントの日時は大晦日前日。流石に年明けはみんなで集まろうと思ってたから、この日なのはありがたいね。
「まぁ計画に支障はない。なんなら後押しされているようなものだよ」
「どこを見てそう言ってるのかは分からないけど、アチコチが言うんならそうなんだろうね」
「ふふ……ねぇ、ユキちゃん……わたし、この場面の練習……もう一回、したいな……」
「えぇ……あの場面は私しか動かないじゃん、ほぼ」
パラパラとアチコチ著の脚本(ページあたりの文字数が非常に少ない)を捲りながら私に話しかけるラピス。
まぁ、重要だけどさ……そこは私が基本やる場面だし。特にラピスが練習することないでしょうが。
「まぁアステリアちゃんは演技力あるしね。あ、でも素の性格を出してるだけか」
「ギリギリバカにしてないと判断しようか」
「処刑回避!やったぐぇぇ……」
背中の触手をアチコチの身体に巻きつける。その間、私はスキルの整理を行なっていた。
「まぁ、結局のところ大事なのは数じゃなくて質だからね……強くなってたら5000個も無くていいよね?」
「ぐぇぇ……うん、まぁ干渉力500くらいとなるたけの英雄補正があるならいいんじゃないかな」
それなら問題なし。数は前よりそんなに増えてないけど、不要なやつは全部干渉力関係のパッシブスキルに再生成した。
これならまぁ、この脚本も実行でき……るかなぁ?これ本当にやれるの?
「アステリアちゃん……私を信じるんだ。絶対いける。絶対なんとかなるから」
「詐欺師みたいだね」
「マジマジ、もう100パーいける。オレだよオレ、オレオレ。今しかチャンスないから。今なら私のお墨付きまで付いてくるよ」
「信用できないなぁこの子……」
「あ、そういえば言うの忘れてたことあるね」
おい待て、ここに来て共有漏れはやめろ。
「この脚本を実現するには、多分まだアステリアちゃんが獲得しなきゃいけないスキルが何個かあるから……それも獲得して欲しい」
「えー、まぁポイント残ってるからいいけどさぁ……」
「多分適性足りてないよ?」
「言うのが遅いね!」
「うん!ごめんね!」
ニコニコ……ニコニコ……
私たち2人は互いに笑みを浮かべていた。
もっとこう、早く言うべきだったよね^^;
「まぁすぐ終わるって、多分。ここに行って温泉に入れば……」
「温泉回かぁ……」
「あ、ちなみにめっちゃ汚いよ。瘴気で汚染されてるから」
^^;
【根源解放】
人間の本質なんて大体醜いので、ほぼすべてのプレイヤーは化け物と化します。
ほんの一握りだけは最初から綺麗です。でも……まぁ本質なんて色々あるし、裏返ったりもするよね、というのはある。
【根源解放:魔獣系列】
システム<お前はゴミみたいな性格!
【根源解放:魔人系列】
システム<お前気持ち悪いよ!犯罪者カナ!?
【根源解放:英霊系列】
システム<英雄に相応しい……!
【根源解放:人形系列】
システム<お前生きてて楽しい?
【根源解放:王系列】
システム<我が強いねキミ……
【根源解放:その他】
システム<人と馴染めないことが多いだろお前
【種別割合】
魔獣:84.9%
魔人:0.1%
英霊:0.03%
人形:11%
王:0.07%
その他:3.9%
割合分布終わっててヤバい
ちなみに時と場合によって種別はブレるぞ!
アステリアも魔獣→魔人(今)だしね。まぁアステリアの場合はシステムによるお試しあったからああなってただけで、基本的には初手で魔人に分類される性格だけど。
【特殊種別】
〇〇魔獣とかの〇〇の部分。その人を表す単語になる。
【根源解放後の姿】
基本的に魔獣とか魔人とかの基礎的な姿、その上に本人の本質を反映した要素が反映される。一度【根源解放】を使用したプレイヤーは、通常時でもその力をある程度引き出すことが可能。
システム<触手の特性は頭《自主規制》な奴しか発現しないぞ!




