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Ep.107 LeakerNoLeaking

「アステリアちゃん。きみは【英雄補正】がTRPGでいうところの“GMからの好感度”のようなものと考察していたね。アレなんだけど……それを裏付ける根拠が最近見つかった」

「お、それ本当?」

「ほんとほんと。発端は海外のとあるプレイヤー……名前は忘れたけど、その人は別のゲームでデータマイナーをしていたんだ」

「ねぇ、データマイナーって?」


 狂夜が律儀に手を挙げ、アチコチに質問した。



「初歩的な質問だね、狂夜ちゃん。まぁ、ゲームのデータを解析する人と考えてもらって構わないよ。これを公開したらいわゆる“リーカー”だ」

「へー……」

「話を戻そう。かのプレイヤーはマイナー兼リーカーだったんだけど、その元のゲームに最近飽きたらしい。それで新しく始めたのがオリジンズ・ウォー……さて問題です、オリジンズ・ウォーでデータマイニングは出来るでしょうか!」


 これは簡単だ。私は手を挙げ、「出来ない」と返した。



「ぶっぶーっ!!! 答えは“〇”です」

「はぁ? いやおかしいでしょ、オリウォのハードは生きてる(・・・・)チップだし、魔術的な仕組みで動いてるから機械的な解析なんて出来ないはず。インサイダー(内部犯)の話なら分かるけど、今回の問いは“データを掘り出せるか”の話でしょ?」


 え?どうやってデータ掘り出すの?

 理論上無理でしょ、これ。



「答えは誰でも辿り着ける。このゲームにおいて、異常な事象を引き起こす“スキル”の種別……」

「あぁ、オリジンスキル? にしてもだけど……」

「今度は正解だよ、アステリアちゃん。そいつの解析……まぁ変数名とかが分かる程度なんだけど、それによって【英雄補正】の内部名が『BypassG(GM権)MAuthority(限突破)』だと判明したんだ」

「お、じゃあ私の感覚は合ってたっぽい?」

「そうなるね。あ、補足情報として……“G”のデータは“G_SECRET”、夢創神は“Creator”、終臨は“EndFinale”、ノイズ関連は“SFMirror”が設定されていたね。まぁ今回の話には関係ないか」


 でも正直、このゲームがそんな単純なプログラムで動いているとは到底思えないんだよね……


 アチコチのオリスキによるムービーも推定自動生成だし、場面に応じて変数名を自動生成したって考えるのが良さそうかな? まぁそれでも参考にはなるか。



「さて、じゃあここからが本題。【英雄補正】がなんなのか……それをしっかりと把握した今、これを利用してみない? という私からの提案だ」

「あー……それでこれ?」

「そうだよ?」


 この分厚い……台本?脚本?には色々と文字が書き込まれていた。どっちかというとルールブックに近い。



「きみが言っていた“目立てば目立つほどに強くなる”という現象を利用して、デカいことやってみたくないか? 私はやってみたいね」

「んー……まぁ、興味はあるね」


 でもこれ、この内容……本当に行けるのか?ちょっと無理ないか?



「無理はあるが、このゲームは“無理がある”ことに挑むプレイヤーを歓迎している。最終的にはなんとかなるさ! それに……」

「それに?」


 ツカツカとアチコチが早歩きでこちらに向かい、私の机に両手を勢いよく乗せる。

 そしてその顔をずい、と近づけ……なんか最近このシチュ多くない?



「きみが名実共に“魔王”になった姿を見てみたいんだ。きみがこういうことをやってるのは予想外だったけど……どうせやるなら徹底的にやってほしい。これはずっときみを追ってる私のワガママだけど、きみには常にゲームでトップに君臨していてほしいんだ。常に誰もを照らしていてほしい。今じゃ足りない。有名なだけじゃ足りない。世界的な露出は一回だけじゃ足りない。もっと暴れてほしい。もっともっともっともっとぜーんぶ破壊してしまうぐらいにこのゲームの歴史に爪痕を残してほしい。分かるだろう? ねぇ、ねぇ!!」

「……うるさい。」

「……ダメかぁ」

「いや、ダメとは言ってないよ。うるさいってだけで」

「ってことは……」


 まぁ、細部はかなり雑だけど……つまりアレでしょ、とにかく私を悪役として目立たせたいって話でしょ?次のイベントで。


 私の返事は冷めたものだが、決して拒絶ではない。


 アチコチは一瞬だけ肩をすくめ、それから口元に薄い笑みを浮かべた。



「ようし!じゃあ早速準備に取り掛かろう」

「え、もう? まだ次のメインイベントまで1ヶ月くらいあるけど……」

「早めにやらないと間に合わないよ。やること多いんだから……アステリアちゃん以外のメンバーもだよ!」

「ふふふ……上から目線だねって、よく言われない……?」

「言われるね!」


 自慢げに言うことではなくない?



「して、アステリアちゃん……きみには早急にやって貰わなきゃいけないことがある。スキルの確保だよ、それもパッシブ」

「まぁ、それはずっとやってるし……多分【英雄補正】増やせるパッシブはほぼ取ってるよ?」

「いや、違う。必要なのは———」


 【干渉力】だよ。


 彼女はそう、私に言い放った。



「言っただろう? 【英雄補正】はあくまで“マーシャルアーツで理論値出ました。神話生物殺したいです、通りますか?”の“通りますか?”を補佐する部分でしかないんだよ。本当に必要なのは前の部分……つまりは【干渉力】だ」


 【干渉力】……積めば積むほど、『自分の与える影響』が強くなるバフ。

 一定以上積めば、いわゆる“仕様”も無視できるとかいう噂もあるが……



「多分、私の今の【干渉力】は数値にすると100くらいだね。これでもかなり多い……というかトップだと思うんだけど、これでも足りない?」

「じぇんじぇん足りない」

「じぇんじぇん……」

「今持ってるスキルは何個だい?」


 個数? 結構多いけどな……これでもサービス開始から、安定してる時期は常にユニークモンスター狩ってるし……



「一覧だと2699個だね。頑張ってるなぁ私……」

「じゃあ3週間で5000個まで伸ばそう」

「えっ」


 あの、ほぼ睡眠も食事もしないでこれなんですけど……



「課金そんなしてないでしょ」

「え、えぇ……私、人に指示されて課金しなきゃいけないの……?」

「これも“魔王”になるためなんだ……!仕方ないんだ……!」

「ど、どこも仕方なくない……!」


 しゃーねーなー。最近1000万入ったからね、もうこれ全部突っ込んじゃうか。


よければ☆☆☆☆☆いただけると、私がとても喜んで踊り狂います。レビューとかもありがたいです。

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