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105/111

Ep.105 百剣天帝に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この回の余白はそれを語るには狭すぎる。

—————————————————————

『アノマリー・アセンション!!!』

『キング・シャドウ【“大狂天魔王”サナルガリクの幻影】Lv.10990』

『狂乱の闇が世界を染める。』

—————————————————————



「ちゃっちゃとやろうか。せめて【決戦】状態ならもうちょい楽だったんだけど、仕方ないね」


 私のオリジンスキル、ほとんど大規模戦闘じゃないと使えないからね……【Obsession Chronicle】も制限あるし。

 ノクセスノーブルはもう使わないんじゃないか?と思ったけど、よく考えたらアレ“英雄”っぽさはあるか、シチュエーション的に。

 それならまだ使う……かも?



『オォォッ!!!』


 魔王の影、その背中から真っ黒な触手がいくつも放たれ———パクリだ!!!



「【コトゥーグ・ラッシュ】!」


 白い触手と黒い触手が激突し、共に威力を打ち消し合う。

 そして、影の口元が開いたような気がして……それならこっちもそれで行こう。



「【ホロビノ(ホープレス・ディ)ホウコウ(ザスター・レイ)】」

『オォォォォォォッ!!!』


 カッ!!と黒と白の閃光が弾け、2人の口から放たれたエネルギー波が衝突……こちらが優勢だ。このまま押し切ろうか!



「かぁっ!!!」

『オォ……オオオオォォォッ!?!?』


 私の口から放たれた白いビームが、ビックリするほど綺麗に影の口へと入っていく。


 そのまま奴の身体のいたるところから光が溢れ出し、やがてその身を爆発させた。



『コォォ……』

「お、意外にも脆い? それなら———」


 ちょっと調子に乗っちゃおっかな。もう面倒だし。



「【光貴ナル暴虐ノ盟約(ノクセスノーブル)】」


 防御捨てて防御無視を上昇、しかし負けるとレベルダウンのペナルティ。

 防御無視は大量に生成したパッシブスキルで既にかなり積んでいるけど、まぁオリジンスキルは発動するだけで“なぜか有利になる”から、使えるなら使った方がいい。



「【目覚めよアストライア】」


 インベントリから取り出した触手剣を影へと向け、そう宣言する。

 即座に刀身の触手部分が弾け飛び、真っ黒な本当の姿を解放した。



『オォッ!』

「うおっと」


 今度はチャージ時間ほぼゼロで口からビームが放たれる。まぁ見て避けるで全然間に合うね。



「舐めてもらっちゃあ困るぜ」


 剣、剣、剣、剣、剣……無数の黒剣が背後に創造され、それらがひとつに合成される。



「新技行こうか……【創造せし金の一剣(ひとふり)】」


 いつの間にか解放されていた、新しい百剣天帝スキル。タイミング的にはアルテルト撃破したあたりかな?


 黒の百剣がひとつに集まり、黄金の一振りへと変貌する。

 私はそれを左手で掴み取り———



『オァァ!』

「【桜吹雪・惨劇(【桜吹雪・白氷華】)】」


 セルフ連携攻撃。やってみれば意外にも簡単だったね……


 無数の斬撃が影を切り刻み、その身を粉々に砕く。

 さて、まぁまだ第三形態が……



『オ、オォ……』




—————————————————————

『魔王の幻影が霧散した。』

『キング・シャドウ【“大狂天魔王”サナルガリクの幻影】Lv.10990撃破。』

『シャドウスキル獲得:【サナルガリクの加護】』

『特殊称号獲得:【狂天魔王を打ち破る者】』

『スキル獲得:【魔王の鍵・狂乱の天月】』

『スキル獲得:【魔王の鍵・破滅の剣身】』

—————————————————————



 ……あ、第三形態はないと。まぁそれならそれでいいや。



『ご主人様、最後の方ワタシを忘れてません?魔法使ってないですよね?』

「……魔法はBloodの消費量多いからね、敵少ないと使いづらいんだよ。ちなみにこれは建前で、本当は忘れてた。ゴメンネ!」

『うーん……まぁ仕方ないので許してあげます』


 優しくて助かるなぁ……









◇裂かれし魂の魔神殿———アステリア




「キング・シャドウ思ったよりいっぱい居たな……」


 ユニークモンスターはいなかったんだけど、かわりにあの魔王の影みたいなモンスターがいっぱいいたんだよね。見つけたのは8体くらい?

 おかげで結構スキルを稼げた……探し回るのと戦闘とで時間は溶けたけど。



 今は最後の探索中。怪しげな神殿を見かけたから、ここだけ探索して帰ろうかなぁ……とか思っているところ。



「おや、アステリアじゃないか。奇遇だね」

「……なんでここにいるの、アチコチ」


 赤と青で分けられた髪、そしてなぜかどんなゲームでも目隠しをしているアバターを使うのが特徴のプレイヤー、名前はアチコチ。特徴は『早口』


 “星斬りの物語”ファンということで意気投合、その後も交流を続け……今でもたまに“星斬りの物語”について一緒に考察したりする。


 最近はオリジンズ・ウォーについても一緒に話すことが増えたが、しかしゲーム内では会っていない……そんな彼女が、なぜか【灰裏界】にいる。ここ来るのにめちゃくちゃ苦労しない?どうやって来たの?

 


「オイオイ……アステリアちゃんは私が戦闘能力皆無のエンジョイ勢だと思っているのかな?」

「うん」

「御明瞭。大正解だ」

「いや、だからここまでどうやって来たの?」


 敵がアホほど強い大穴をめちゃくちゃ時間かけて攻略しなきゃ辿り着けないはずなんだけど……



「まぁ私が弱いのは事実だけどね、それでも【根源解放】を使えばそこそこ戦えるんだよ。あとスキルは選り好みして、そしてちびモンも使っている……それぐらいすれば80レベル前後でも攻略できるのさ。理論値で言うなら50あればいいんじゃないかな?」

「うーん、まぁ確かにそんなものか……」

「そんなもんなんだよ、アステリアちゃん……まぁ、時間はかかったんだけどね」


 ゲーム内でまで棒状の菓子を咥えながら、彼女はそう語る。



「ちなみにこの神殿にいる理由は?」

「気になったからってだけだよ。多分大悪魔関連……もしかしたらサナルガリクかも」

「お、サナルガリクってやつはついさっき倒したよ。ずっと呻いてたぐらいしか印象残ってないけど」

「へぇ、あれ戦えるんだ……キング・シャドウの一種かな?」

「うん。ところで大悪魔って?」


 私がそう質問すると、彼女は少し驚いたような表情を浮かべ……ため息をつく。



「はぁ……これだから攻略勢は……」

「一応自認は考察勢だよ。まぁ今は攻略の方が力入れてるけど」


 “星斬りの物語”の時はかなり熱があったからねぇ。今はちょっと落ち着いちゃったかも?



「一言で表すと『めっちゃ強い悪魔』だね」

「情報が無に等しい……!」

「だから調べてるんでしょうが。9割がたここは大悪魔関連……」

「いや、まぁもう別に教えないでいいよ」

「……」


 しゅん、と下を向いていじけだすアチコチ。あぁもう、面倒だなぁ……!



「じゃあ気になることがあるんだけど、アチコチは“百剣天帝”についてなんか知ってる? 考察とかでもいいよ」

「……!」


 お、食いついた。



「——————アズド、ルナリエ? ちょっと待った。アズド・ルナリエっていうのは、たしか古代オーヴァの英雄の名だ。起源教における最大の人物であり、人間の悪性を守護する夢創神、あるいは終末神と九千年間戦い続けるという、悪性の否定者。あるいは“百剣天帝”。起源教はこの二柱の悪神と英雄による確執が主軸になる物語で、この世界で終末と英雄の二元論を形にした最初の宗教だ。」

「その流れ私がもうやったよ!!!」

「ふーん、なら普通に喋ろうか……と思ったけど」


 けど?



「きみにとっては重大なネタバレになりそうだからやっぱり言わない」

「よし、血を搾り取って殺してあげよう」

「きゃあー。わるいきゅうけつきにころされるー」


 そんな、タチの悪い考察勢みたいな……そういうのやめろよ! 気になっちゃうだろうが!


【世界の構造簡易版】


        地上

———————————————————

       R・C基地

———————————————————

        灰裏界

地上と灰裏界は各地のオリジンホールまたは世界樹で繋がっており、R・C基地内部には【オリジンズ・インフィニティ】が厳重に保管されている。



【“狂天魔王”サナルガリク】

キング・シャドウの方だと黒すぎてよく分からなかったが、頭部は豚のようなものになっている。

見た目で差別されたけど成り上がったみたいな背景があるのかもしれないし、ないのかもしれない。なんにせよ最終的には気が狂ってしまったことだけが確か。


【“百剣天帝”アズド・ルナリエ/“⬛︎⬛︎”⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎/“⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎”⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】

既に死んでいるが、ゲーム開始時点ではまだ生きていた。リアリティ・カオスの邪魔者お掃除担当。


【アチコチ】

お菓子大好き!煙も大好き!

アステリアとは長い付き合い


【起源教】

リアリティ(R)カオス(C)が定めた『この世界を自然に統治するための』宗教。聖書に描かれた神話は捏造だが、オリジンズ・ウォーのストーリーとは偶然(・・)リンクしている。





面白かったら☆☆☆☆☆していただけると嬉しいな!


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