Ep.104 その辺をうろついているタイプのラスボス
◇灰裏界———アステリア
表世界のユニークモンスター、それも今日湧く分は狩り尽くした。
こういうの、他の人たちの分を奪ってるってことで普通はぶっ叩かれるんだろうけど……まぁまだバレてないからセーフ。
というかさっさと見つけない方が悪い。
「ま、そもそもこのやり方がまだバレてないからってのもあるんだろうけど……」
今のところ、世間のイメージ的には『ユニークモンスター=会えたらラッキー』みたいな感じだからね。あんまり自分から血眼で探してる人は……まぁ私たちくらいだろう。
そもそも100レベル達成した後はまずオリスキ取りたくなるからね、そっちに視点向いてる人多いんだよね。
さて、話が逸れたから戻そう。
現在地は【灰裏界】……私たちが過ごしている世界の裏側に位置する世界。次元的な裏側じゃなくて、本当に『裏側』ね。コインの裏みたいな。
ここに来た理由はひとつ。日本サーバーで今日湧く分は狩り尽くしたので、今度はこっちでユニークモンスターを狩ろう……という、ただそれだけ。
海外サーバー行くのもいいなとは思ってたんだけど、アメリカはアレだし、それ以外は地形よく分からないし……
それなら、暗いけど地形がシンプルな【灰裏界】で探してみよう、という感じでこっちを選んだ。
視界は普通に独自コマンド使った魔法で照らせばいい。今回はグレイを連れてきてないけど、まぁ別に1人でも問題は、な……
『……? ……!』
おっと、なんだかヤバそうな影がいるねぇ……オーラ邪悪すぎない?
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『アノマリー・エンカウント!』
『キング・シャドウ【“狂天魔王”サナルガリクの幻影】Lv.9600』
『かつての大敵が牙を剥く……!』
『Tips:キング・シャドウ』
『キング・シャドウは圧倒的な力を持つ、古代に存在していた【大敵】です。見つかった場合、逃走を推奨します。』
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「【限界突破】……【根源解放】!」
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『アノマリー・アセンション!!!』
『【“淵月魔人、神蘇の吸血鬼・星霊”アステリア】Lv.2110』
『“⬛︎⬛︎”⬛︎⬛︎⬛︎。』
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私の体が薄く輝き出し、背中から白い触手八本が生える。
【アセンション】とかもう使わないでいいようにしてくれたアップデートに感謝だね!
「ドミノ、サポート」
『ハイハーイ!久々にこういう感じで戦いますねぇ!』
なんか雰囲気的にユニークモンスターどころじゃない奴が出てきたので、少し本気でやることにする。
なんか気迫がノクセスと同じくらいあるような……!?
『オル……ダ……リウ、ス……お前、だけ……は……』
「しのごの言う前に敵を見なよ」
『〔超過・複写・イレイズキャノン〕』
八本の触手を【杖】として扱うことにより威力が増幅されたエネルギーの奔流が、人型の影を呑み込む。
イレイズキャノンを放ちつつ、私はそのまま触手を動かし……
「【コトゥーグ・ラッシュ】」
八本の触手によるラッシュを叩き込む。このスキル、説明テキスト的にはあんまり強くないはずなんだけど……なんか明らかに威力高いんだよね。なんでだろ? 相性的な?
『オォ……ォォォォ……【ゴースト・インパクト】』
「遅いよーん」
不気味な闇の魔力が奴の拳に一瞬で収束し、そのまま前へと拳が振り抜かれた。
まぁ最近は【挙動補正】とか【視界補正】とか上げるパッシブ多めに取ってるからね! こんなん見てから避けるの余裕です^^
かかってこいよ〜! あ、ちょま……範囲攻撃はやめてね。
『【サナルガース・エリア】』
瘴気が周囲に広がり、ここら一帯が赤黒い魔力で覆われる。元々雰囲気暗いから違いが分からんね。
「〔超過・超暴走・複写・独自・ギャラクティック・フォース〕」
カッ!!と青白い閃光が私の目から放たれた。
焦げたような匂いがするけど、私にダメージはないので問題ないです。
『オォォ……オォォォォォォッ!!!』
「ふはは、服……?焦げてやんの。あともっと他方を警戒するべきだね」
影が疑問の表情を浮かべるが、もう遅い(追放モノ)
【赤月の天軍】(なんかいつの間にかクソ弱体化されてて、ほぼ一体しか分身を生成できなくなった)による赤い分身が、アストライアを手に奴の背後をとった。
『【キリング・ドロー】』
「ばーんっ!」
ヒバナが改良した銃を撃つ。彼女は常識に囚われることをやめたらしく、撃ち出すのは弾丸でなく『小さな剣』である。これ仕組みどうなってんの?(n回目)
背後からの黒雷の一撃……そして前方からの意味不明な銃による一撃が、同タイミングに放たれたことにより連携攻撃へと変化する。
私の顔二つがカットインし、影の腹あたりから黒いエネルギーが弾け飛んだ。
『コ、ココ……コロ……』
「【金が剣を創り、剣は百万で束ねられた】……え?なんだって?」
無数の剣が影へと向き直り、体制を崩した影が再び立ちあがろうとしたその時……追撃を放つ。
「敵が1匹だと血が全然回らなくて最悪だね。最近自分の弱さを実感するよ」
『え?でもご主人様、多分渡り人の中でも一番強いんじゃないですか?』
全然足りないって言ってるんだよドミノくん。もっと世界を破壊できるぐらいの力が欲しいんだよ、私は。
その為には基礎スペックが足りなすぎる。こんなの邪魔ゴミできるくらいの強さが私には必要なんだ、分かるか?
『なんらかの強迫観念を感じますが……なるほど、それならワタシも本気でそれを助けましょう! それがワタシの務めですのでね!』
おー、久々にドミノがちゃんと元々のスタンス思い出してる。いっつもただのカスメイドロボだったのに……
『カスってなんですか!カスって!』
「まぁまぁ、演算補助。〔超過・超暴走・複写・独自・ヘヴンズエンド・メテオ〕」
隕石は連打すると巻き込まれてヤバい。散らばりすぎて地形も壊れる。それに複写まで使うと全弾ヒットがほぼしない……というか8割関係ないとこに降り注いでしまう。
システム的に強すぎるから対策してたんだろうけど、生憎私はそういうのが嫌いだ。なので“絶対に”一列に隕石が降り注ぐように改造した〔プライマル・メテオ〕を開発した。
またもや起き上がりかけていた影が、突然空を見上げる。
空は赤く染まり、そして裂けていて———そこから百を超える隕石が一列に影へと降り注いだ。
◇
『オォ、ォォォォ……オォォォォォォッ!!!』
バキバキと音を立てて、影が実態を得ていく。灰色の肉体が復活していく。
「変身シーンでも攻撃できるのがこのゲームのいいところだよね」
スマホをぽちぽち、座標を設定しながら私はそう呟く。
『オォ……オォォォォォッ!?』
パキッ!ピキキッ!(次元の裂け目が生まれる音)
ガチャン!ガチャン!(裂け目の奥から見える機械が動き出す音)
ピッ———ギュガッ!!(ビームが放たれる音)
「やっぱこれ良いなぁ……」
主に見た目が。
【豆知識】
根源解放とかいうぶっ壊れシステムを全プレイヤーに解放したので、バランスを取るために強敵の強さが跳ね上がっている(主に大敵とか一部のユニークモンスターとかドラゴンとか)
あ、よかったら☆☆☆☆☆くださると嬉しいですね




