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三角の蜜  作者: キョウカ
1/1

1.再開

春。制服の新しい香りと、桜の花びらが舞う朝。


高校入学式。新しい環境に胸を弾ませる生徒たちの中に、ひとり、眼鏡の奥で静かに周囲を観察する少年がいた。


──充希みつき


小柄で色白、華奢な身体つき。整った顔だちはふとした瞬間に見る者の視線を惹きつける。けれど、地味で静かな性格なため、そのことに気づく人はは1人もいなかった。


そんな充希は、姉の影響で小学生の頃からBLの世界に魅せられ、二次創作小説を読むのが日課。周囲には絶対に言えないけれど、妄想癖だけは高校生になっても健在だった。


「腐ってますけど、何か?」


そんな自虐的な言葉を脳内で唱えながら教室へ入ったその瞬間、充希の身体がピクリと硬直した。


──そこにいたのは。


「……嘘、でしょ」


教室の一番後ろ、窓際の席に座っていた二人の男子。

一人は、金髪に近い茶髪で、爽やかに笑うチャラめの美少年。もう一人は、鋭い目つきで背が高く、どこか刺すような存在感を放つ無口な男。


「……空翔、海翔……?」


小学生の頃、毎日のように遊んでいた双子の幼なじみ。引っ越してしまい、それきり音信不通だった彼らが、まさか同じ高校の、同じクラスにいるなんて。


驚く充希の視線に気づいたのは、茶髪の空翔だった。


「──っ、充希?」


その瞬間、椅子が音を立てて倒れた。空翔は椅子を放り投げるように立ち上がり、一気に駆け寄り距離を詰めてきた。


「本当に……充希? まって、え、ほんとなの 」

動揺を隠しきれていない顔の空翔の後ろから、ゆっくりと立ち上がった海翔が、無言のまま一歩、また一歩と充希に近づく。


「お前、充希か.... 」


低くて掠れた声。でも、どこか懐かしくて優しい。


充希は唇を震わせながら、こくんと頷いた。


「う、うん……二人とも、大きくなったね また会えて嬉しいよ!」


「そっちこそ、昔と変わらず小さいまんまだな」


思わず出た海翔の一言に、充希は嬉しくなり思い出に浸っていた。




──あの頃からずっと好きだった。


その想いを、今でも抱えたままだった二人。ようやく充希との再開を遂げた。



「ねぇ、充希」


空翔の声が、ふと低くなる。


「高校生活、ちゃんと覚悟してる?」


「……え?どういう意味....?」


「僕と海翔、充希をずっと探してたんだよ。今さら“幼なじみ”で済ませるつもりはないよ?」


「── 俺らは、本気だ」


左右から距離を詰めてくる二人に、充希は気づく。これが、ただの再会ではないということに。


彼らの目は、獲物を見るような、それでいて熱を帯びた──明らかに、充希を「男」として見ている目だった。


──ここから、三人の関係が変わっていく。


それは、優しくも激しく、そして少しだけ歪んだ、欲望のはじまりであった。

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