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マヴロス大陸開拓記  作者: おおらり
1. アサナシアとリョー
6/29

6. やばい村 3


 グルーニは俺の紹介のために、人間の放牧場?に村の全員を集める。人間もオークもゴブリンも他の種族もいる。全部で30〜40名ほどの小さな集落だ。


 人間たちが、アサナシアを見つけて叫ぶ。

「アサナシアさま!」

「アサナシア様だ!」


 アサナシアは身長110cmほどの俺のかげに屈んで隠れようとする。

 いや、無理があるだろ! なぜ隠れる!


「神の如き美しさ、アサナシア様!」

「人の身でありながら不滅のアサナシア様。我らを見捨てずに戻ってきてくださったのですね! なんという麗しさ!」

「永遠の命という名にふさわしい輝きです、アサナシア様!」


 アサナシアは真っ赤になっている。


 う、うわ〜〜 これは恥ずかしい。

 アサナシアが村を恥ずかしがっていた意味がわかった。


 ……不滅? 不死の魔王にずっと付き添ってくれるお助けNPCだからそういう設定でもおかしくはないのだが、それが原因でアサナシアは村人たちに崇拝されているようだ。


「おまえたち、うるさいぞ! 魔王陛下の御前だ!」

 グルーニが吠える。


 魔物たちは俺が出てきた瞬間から全員跪いているのだが、人間たちは俺をただの黒髪の子どもとしか思っていなかったようで、慌てて跪く。

 魔力のない者が多いようだ。



 人間の長老らしい男が声をあげる。

「グルーニ様、魔王陛下の御名(みな)はなんと仰られるんですか?」


 俺にもスポットライトが当たってしまった。


 グルーニは、困ったように俺に視線を送る。

 アサナシアは屈んで、俺に耳打ちした。

「マスターが嫌なら、名前を教えなくてもいいですからね」


 だが俺は、名を教えることは信頼関係を築く上で必須だと思った。それで、俺は村人たちに名乗ろうとした。


「俺の名前は、カタマ……」


「カタマヴロスさま!」

「え?」


 人間の長老が涙を流して叫ぶ。

 まわりの人間たちもそれに同調する。


マヴロスの大地に降り立ちし、漆黒カタマヴロス……闇より深き闇と名を授かりし、神のこどき力を有する、我らが魔王陛下! カタマヴロス様!

 どうか我らにご加護を!」


 くっっそ!!!! はずかしい!!!!!

 なんだこの 話聞けよ おい!!!!!

 はずかしい名前つけやがって 取り消せよ!!!! BボタンBボタンBボタン!!!!


 しかし魔物も人間も、マヴロスの生き物たちは大変良い名だと感じたようで、瞬く間に広がっていく。


 魔物も人間も「カタマヴロス様」「陛下の御名はカタマヴロス様」と囁き合うさざなみのような伝言ゲーム状態だ。

 あまりの恥ずかしさに悶え苦しむ。


 村人たちが大いに盛り上がっているのを眺めながら、俺は震える声でアサナシアにのみ告げる。


「こ、こんな村 出ていってやる……」

「マ、マスター さっきと言ってることが違……」

「この村は大事な拠点に違いない。

 でも!! なる早で魔王城を建設して、こんな村、俺は出て行ってやるからな!!!」


 かくして俺は勝手に「魔王 カタマヴロス」と命名を受け、妙に信仰心の厚い、恥ずかしい、やばい村で開拓を進めることとなったのだった。


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