表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マヴロス大陸開拓記  作者: おおらり
1. アサナシアとリョー
5/29

5. やばい村 2


 俺は洞窟のなかでオークとゴブリンにもてなしを受ける。黄金色(こがねいろ)の液体の入った土の器が目の前に差し出され、何かと思って少し口をつけたら果実酒だった。

 6歳に! 酒を! だすな!


 グルーニと名乗った村長(むらおさ)オークはひときわでかい。立つと洞窟に頭がつきそうなほどだ。座っても、俺は見下ろされるかたちになる。


「陛下、高いところからすんません」

「いや、いい。別に……」


 グルーニは薄茶色のブタに似た顔に、ブタに似た耳に、牙を持つ巨体だ。装飾品は腰蓑と、獣の牙がいくつか連なるネックレス。石の剣を帯剣している。


 俺とグルーニのみが向かい合って座り、アサナシアは、澄ました顔で俺のうしろに立っている。



 洞窟に来るまでに、オークとゴブリンが管理する広い放牧場のような場所を見かけた。柵に囲われた広場に人間の男たちがいて、武具を作ったり獣の解体・調理をしたり、もろもろの仕事をしていた。

 女と子どもはどこへ行ったのだろう。


 洞窟は枝分かれして、さらに奥まで続いている。この奥に人間の女がいて、えっちな同人誌みたいなことになっていたらどうしよう……と心配していると、それを察したようにグルーニは言った。


「安心してください陛下、今、女たちも帰ってきますから」

「どこから?」

「え、森ですけど」

「森?」

「女と子どもは、木の実をとる仕事をしているんで……ウチのカミさんもですけど」


 全年齢向けな答えが返ってきた。

 だが俺はこの村長、グルーニが信頼できるやつなのかどうかを探らねばならない。



「村人に、痩せている者がひとりもいなかったな」

「はい、陛下。『人間は財産だ、がはは、大事にしろ』と陛下が仰ったではないですか」

「俺が? そうなの?」


 魔王、そんなキャラだったの?


「じゃあ、食べるために肥えさせているわけじゃないんだな?」


 グルーニも、あたりに控えるゴブリンも、俺の後ろのアサナシアまで(ひえっ……)という顔をした。


「ななななにを仰るんですか陛下!? オレたちをなんだと思ってるんですか!?」

「そうですよマスター、人間を食べるなんて!」

 周囲にどよめきが広がる。


「じゃあ、女は犯して男は殺して……ないんだな? オークなのに?」

「ちょっ 陛下! 偏見やめてくださいよ! やだなあ」

 グルーニは焦りに焦っている。


「マスター……?」

 アサナシアにドン引きされている。

 やめろアサナシア、その顔は俺に効く。



「陛下がちゃんと人間が人間らしく過ごせるようにしろって言ったんじゃないっすか!」


 そうだったのか。もともとそういう設定なのか。でも……。


 俺は人間の男たちの顔を思い出す。

 言われた仕事をただ淡々とやっているだけの感じ、隠すことのできない社畜感。

 

 グルーニをはじめ魔物たちは精一杯やってくれていたようだが、俺は元人間の魔王として、これから変えていかねばならない。

 魔物と人間の間に上下なく、お互いに協力していくというかたちに。



 グルーニに、しばらく村に滞在し、俺が直接指揮をとることを伝え、滞在場所を用意するように頼む。

 話をするうちに気の良い村長(むらおさ)のように感じられて、俺は疑問に思う。アサナシアのことだ。


 グルーニに何故アサナシアを追い出したか聞くと、追い出していないと言う。これはアサナシアの勘違いだったようで、アサナシアは「えっ!?」と飛び上がるほど驚いていた。


「この女、人間にしては強すぎるんで魔王陛下の部下になるように言ったんですよ。そしたら自分で出て行ったんすけど、戻って来なかったんすよ」

「私は口減らしのために追い出されたと思って……私のマスターを探していました。

 でも、どこにも見つからなくて……そしたらマスターが私を呼んでくれました!」

「じゃあ、アサナシアも滞在しても問題ないってことだな?」

「もちろんです、陛下」


 振り向いて「よかったな」と言おうとすると、アサナシアは変な顔をしている。口をぎゅっと結んで恥ずかしそうな顔だ。

 なんだその顔。



 グルーニは『村人に魔王陛下の滞在を知らせても良いか』と聞き、俺は許可する。


 俺たちが洞窟から出たそのとき、ちょうど女、子どもが森から帰ってくるのに出くわした。

 オークの女も人間の女もいる。そして子どもたち。だが。


「パパ〜!」

 グルーニに走り寄ったのは、あきらかに人間とオークの混血と思われる男の子だった。となりに母親らしき、長い黒髪の美しい女性が。

 俺はグルーニを睨む。


「なんでそんな顔で見てるんすか!? 愛し合って生まれた子っすよ!!!」

「そうなの?」


 美しい黒髪の女性がクスクスと笑う。

「ええ。私、逞しいオークの男性好きなんです」

「そうなんだ……」

『蓼食う虫も好き好き』とはいえ、好き好きすぎないか……?

 困惑する俺の後頭部にアサナシアのジトーっとした視線が突き刺さっている。


 もしかして、マヴロスは異種婚に偏見のない世界なのか……? 俺だけが偏見を持っているのか……?

 確かにマヴロスのヒロインにはエルフとか異種族がチラホラいるけど……でもオークと人間は……『どうやって?』って思うじゃん。

 え、俺だけなのか……?


 アサナシアに弁明の視線を送るが、冷ややかな視線しか返ってこない。かなしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ