4. やばい村 1
目的: 人間として快適な暮らしを送る。
そのための開拓には、魔物手だけではなく人手もあったほうがいいだろう。マヴロス大陸には人間がわずかばかり暮らす集落があるはずだ。まだ、日本に置き換えると弥生時代のはじめくらいの文明度だと思うが……。
アサナシアに人間が住んでいる場所を知っているかを聞く。
「はい! でも、私と一緒に行かないほうが良いと思いますよ、マスター」
「なんで?」
アサナシアは俺が作った荒削りな木の皿に木苺を集めたものを抱えて、歩きながら食べている。
なんかいっつも食べているな……よく太らないな……? NPC特権か?
「私が追い出されたところなので……」
アサナシアはしゅん、とした。
マヴロスは、ヒロインの設定がしっかりと深掘りされているゲームではない。魔王ルートは開拓がメインで、恋愛要素は開拓を有利に進めるためのオマケだ。
ただ、ドット絵で表現される小物や状況証拠から推測だけは成り立つ。そのためヒロインの過去考察は盛んで、二次創作も盛んだった。
アサナシアの場合は『魔王の生贄に捧げられたハイスペックな女の子』という考察が通例。
だから最初から『ご主人様』と慕ってくる。生き延びようとして……と、マヴロスファンはそう思っている。
『マスター』って呼び方なのは、はじめてだな。
「……マスター、その……」
「……いや、アサナシア、話したくないなら……」
「た、食べ過ぎで追い出されてしまって……」
「は?」
そんな理由?
手の中の木苺が説得力を増している。
アサナシアは木苺で濡れた唇を手の甲でごしごしとこする。こするな。
手の甲が土で汚れていたのでアサナシアの口のまわりに土がついた。ああもう……。
先んだって歩き、アサナシアを振り返る。
「…… 一緒に行くぞ」
「えーっ 私、戻るつもりなんて」
「俺はしばらく村に滞在するつもりだ。だから、お前も村と和解しろ。俺がとりなすから」
「は、恥ずかしい……」
なんで?
アサナシアを川に連れて行き、顔を洗わせる。
その後、しぶしぶ……といった様子でアサナシアは村の入り口へと案内してくれた。
でっかい獣の牙や骨が刺さりまくりの、やたらと厳つい門構えを見た俺の感想。
(縄文時代かあ……)
しかし、そうではなかった。
村長は、オークだった。