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マヴロス大陸開拓記  作者: おおらり
3. 最悪の選択
23/35

23. ダイアログ


 アサナシアが攫われた。


 マヴロス大陸の海にはじめて敵船が現れ、それをルーキスたちと殲滅した日に。敵船の殲滅ののち、遠方にもう一隻。偵察船のようなものが見えた。

 俺とルーキスは、わざと偵察船を逃す。


 意気揚々と村に戻り、勝利を分かち合う場に。村の子どもとその親が駆け込んできた。

 村から海へと向かう道で、見知らぬ不審な者がアサナシアの手を掴んだまま転移魔術を使い、消えるのを見た、と子どもは言う。



 アサナシアは共に戦いたがったが、俺は「初戦では絶対に負けないから、城に居ろ」と言い聞かせて、さらにアサナシアを魔術で眠らせてから城を出た。眠ったのを確認してから、戦いの場に赴いた。


 急いで城へ転移し、寝室に行くもアサナシアの姿はなく。アサナシアは俺が眠らせるのをわかっていて、なんらかの対抗打を用意していたのかもしれなかった。


 子どもの話が本当だとして。

 直観で、転移先は見逃した偵察船ではないかと思った。



 俺は走り、アサナシアを追う。

 崖から海に飛び降りて。

 海の上、上空で、目視できる限界まで転移を繰り返す。転移先に飛んでは重力で落ちる。落ちながら飛び上がる。ぐわんぐわんと揺れる景色に酔い、吐き気を堪えながら転移を繰り返す。


 アサナシアを追って。

 海の向こうへ――



 豆粒サイズの偵察船が、見えた。

 転移する、そのとき。



 ピコン、と。

 聞き慣れた、ずいぶん懐かしい音を聞いた。


 目前に、真っ黒な長方形のダイアログが立ちはだかった。ドット絵風の黒いシステムダイアログが、白のドットで書かれた文字で告げる。



 『これより先には行けません』



 俺は、システムダイアログに、その先に、魔法をぶちかます。しかし、壊れない。

 どんな大魔法でも、システムの壁は壊れない。


 豆粒ほどの大きさに見えていた船は、もう、見えなくなってしまった。

 代わりに、また違う敵船が向こうからやって来るのが見えた。


 船は、システムの壁を破ってこちらにやってくる。


 俺は、システムの壁の先には行けない。


(は、)


 俺は、理解する。



 魔王ルートなんて、最初からなかったことを。

 このマヴロスで進行しているのは、ずっと、宗教ルートであることを。


 デフォルメ姿の、マヴロス大陸に転生した魔王は。チート能力も持たず、ステータスを見ることもできない。自分の手足を使ってすべてを築かなければならなかった魔王は、アサナシアと、村のみんなと、同じ存在だ。つまり。


 プレイヤーは、俺ではない。


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