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3話

 「ここが、王都か」

王都に向かうと決めたその日に準備した。

午後には王都に向かう汽車に乗り込んだ。

住んでいたところから、王都までは一日程かかる。

なので、汽車の中で眠りについた。

地元は本当に田舎なので、汽車に乗ってしばらくは、畑や一軒家がぽつんぽつんと見えるばかり。

森の中に入っていき、夜の間中は暗い森で過ごしていた。

朝になる頃には、森を抜け出して、朝日がまぶしかった。

レンガや木製の家が立ち並んでくるようになった。

そして、駅にたどり着く。

切符を駅員に見せ、改札を抜ける。

そこは、地元と比べほどにならないくらいたくさんの人がいた。

地元の女性の地味というか大人しめの色合いの服よりも、華やかで派手な衣装と思うような服装を身につけている。

屋台もまばらに出ており、活気づいている。

中学校まで田舎から出てなかったから、この違いに圧倒的される。

きっと前世の記憶を思い出さずに、夏休みに友達と行っていたなら、はしゃいでいただろう。

前世の記憶があって、この人だかりを見たことがあるから、こうして落ち着いていられる。

「さて、宿でも取っておくかな」

確か来週にオルテンシアが帰ってくる予定で、終業式のあと数日王都に残ってから帰ると言ってたから、終業式があるのは、今週中。

今日か明日くらいではないかと予想。

あんまり長い期間滞在することになると、お金に余裕はなくなる。

そうなったときのために、どこか働き口でも見つかるといいけど。

そうして、街中を歩いていき、宿を見つけた。

やはり、王都の宿なだけ高く、一泊分しか余裕がなかった。

それでも泊まることができた部屋に荷物を置き、街に出て、学校がどこか散策。

パッケージの背景に目立つ建物があったから、目にすれはすぐに分かると思うのだが。

まあ、それはすぐに見つかった。

「でっか」

見上げすぎて、首が痛い。

門の横は、俺の背丈より高い柵があって、簡単には入ることはできなさそうにない。

これじゃ、中の様子は探れそうにない。

「さて、どうするか」

「アズライト?」

門の前で頭を抱えていると、誰かが声をかけてくる。

この声にはとても聞き覚えがあった。

1年前に家を出るまで毎日聞いていた。

「やっぱり、アズだ!」

「オルテンシア」

俺の姉、この乙女ゲームの世界のヒロインがそこにいた。

「何でアズがここに?」

オルテンシアが俺のところに駆け寄る。

「シアの様子が気になって」

「来週家に帰るって手紙書いたのに。あ、まだ届いてないのかな」

カラカラ楽しそうに笑う。

母と同じ茶色のふわふわした肩に届くか届かないくらいの髪。

美人というより可愛いタイプで、よく見るヒロインのタイプ。

そんな中オルテンシアという名前のようなきれいな紫の瞳が宝石みたいで目が離せない。

年は一つしか違わないのに、俺の面倒を見てくれた、俺の大好きな姉。

「そういうシアは?俺のところはもう春休みだけど、制服着ているなら、まだ学校なんだろ」

貴族の学校らしく、あまり見かけない華やかな白い制服。

学校に向かうときはまだ制服がなかったので、これが初めてだ。

まあ、パッケージでは見たことあるが。

「ええ、うらやましいなあ。まあ、ここも今日が終業式。夜のパーティーが終わったら、春休みだよ」

タイミングのいいときに俺は来たようだ。

今日このあとのパーティーで、オルテンシアが誰を恋人にするか分かるのか。

「終業式終わったばかり?」

「そうだよ。それでこのあと、予約していたドレスを友達と取りに行くんだ」

後ろにはオルテンシアの女友達らしき人が二人ほどいた。

「男手はいないのか。ドレスって、けっこう重いだろ」

「ああ、考えてなかったなぁ」

どうしよう、とオルテンシアは悩む。

こういうとき、攻略対象たちは手伝ってくれないのか。

まあ、王子も含まれるから、気軽に街に行くのに声をかけるのは難しいのか。

それに、乙女ゲームのヒロインって、攻略対象から贈られるものじゃないのか。

まあ、他人に借りを作るのが苦手なオルテンシアなら、断ったのかもしれないけど。

「そのドレスって、どうやって買った?」

「ギルドのクエスト達成した依頼料かな。ほら、私珍しい治癒魔法使えるから、引っ張りだこだし」

「…無理してないよな」

「大丈夫大丈夫。そんな危険な場所に行ったりしてないし」

まあ、乙女ゲームの世界だし、RPGみたいに魔物相手と戦うことなどそうそうないだろ。

大変なのは人間関係。

乙女ゲームの攻略対象なんて、イケメンで高い位の貴族が多いから、妬み嫉みを抱かれるだろうし。

悪役令嬢なんていう、ヒロインをいじめる筆頭とかいるって話だし。

まあ、オルテンシアなら跳ね返すだろうけどな。

「それで店って、どこなんだ?」

「ここからちょっと歩いたところだけど」

「なら、持つの手伝ってやる。そっちの人たちもシアが世話になっているんだろ」

「え、いいの?」

「まあ、何にもすることないしな。王都でも案内してくれよ」

「うん。いろんなところ見てほしいな」

友達も呼びこんで、俺たちは街へと向かって行った。

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