99.おっさん漁師
私達はカイ・パゴスの港町、ニサラキの街へとやってきていた。
ドワーフの皆さんの治療を終えた後……。
「ありがとうございます、ほんと、なんとお礼を……あ……」
ぐぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
街長の腹から音が聞こえてきた。
「お腹すいているのですね」
「す、すまない……氷付けになって結構立ってて……」
ふむ。凍結していてもエネルギーは消費されていたのだろうか。
「食事にしましょうか。食料をお借りできれば、こちらで調理しますよ」
「そんな! 滅相もないです! むしろ、こちらが食事の準備を……」
と、そのときである。
「大変だ! 街長! 食料庫が空になってらぁ……!」
「なんだって!?」
若いドワーフの後に付いていく。
各家庭、そして商業ギルドの食料庫が、すべてからになってしまっていた。
「干し肉や干し野菜が全部やられてる! ちくしょう、【氷鬼一族】のやつらめ……!」
「ふむ? 【氷鬼一族】……?」
聞いたことのない単語だ。
話しぶりからして、ドワーフと敵対する人たちだろうか。
「すまない、副王様……食料がなくて……」
「問題ありませんよ」
ふむ。一度ネログーマに戻って食料を支援してもらった方が良いか。
しかし、急に用意して欲しいといっても、向こうにも迷惑がかかってしまうだろうし。
「こちらで取ってきます。古竜、いきますよ」
「え? おれ? なんでだよ……」
「これから魚を捕りに行きます。あなたにも協力して欲しいのです」
「へーん。やなこった」
おや、おや。
古竜が非協力的ですね。
「いいですよ。あなたの足の肉をそいで、それを食べるでも……」
『鬼か!』
ぼんっ! と古竜が竜姿になる。
「鬼か、はあなたのほうです。腹を空かせ、困っている人たちがいるのです。可哀想だとは思わないのですか?」
『全然。あ、やめて、刃をつきつけないでっ。おれを食べないでぇ~……』
ということで、古竜の背に乗って、私達は沖合へとやってきた。
『魚とるってどうするんだよ? まさか素潜りでもするのか。とったどーって……なーんて』
「まあ似たようなものです」
『うえ!? じょ、冗談で言ったんだけど……』
私は古竜に指示を飛ばす。
「ここで翼を広げて待ち構えておいてください」
『わかった……けど、何するんだ、おっさん?』
「魚を捕ってきます」
私は一人、古竜の背から飛び降りる。
ドボォオオオオオオオオオオオオオオン!
ややあって。
ゴゴゴ……。
ゴゴゴゴゴゴ……!
ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
『な、何だ!? 海上に竜巻が……! どしぇえええええええええええええ!』
竜巻が発生し、空中に魚が放り出される。
中心部から私が現れ、ぴょん、と古竜の背に乗っかる。
『何したんだよおっさん!?』
「海底までもぐってで回転切りをしてきました」
『竜巻発生させる回転切りってやっぱおかしいよ!? いや海底まで素潜りしてる時点でおかしいけどよぉ!?』
巻き上がった魚たちが、雨あられのように振ってくる。
「さ、落ちてくる魚を全部回収しなさい。1つでも落としたらオシオキですよ」
『ひぎぃいい! 体切り刻まれるぅううううううううううううううう!』
そんなことはしないのだが、勝手に勘違いした古竜が、頑張って魚を回収するのだった。
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