92.また舎弟げっと
海底にて、私は海王と相対してる。
巨大な龍は私を見て、完全に萎縮してしまっているのが、闘気から伝わってくる。
『認めん! 生物の頂点たる竜種が、人間ごときに負けるなんて! あり得てはいけないのだぁあああああああああ!』
海王の体が青く光り輝く。
体の周りに闘気の球体が無数に浮かぶ。
「いかん! 副王よ! 敵は先ほどのビームを乱発するようじゃ!」
『ドワーフのおっさんよぉ……。焦る必要なんてねーよ』
古竜がどこか、諦め、そして憐憫の表情を浮かべていた。
『追い詰められて放つめちゃくちゃな攻撃だ。あんなのが、おっさんに通用するわけないだろ』
『黙れ黙れぇえええい! 死ねぇええええええええええええええええ!』
放たれる無数のビーム。
私は木刀を顔の前で構える。
ちゅどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!
『ははははぁ! 全弾命中ぅう! やつは粉々に消し飛んだぁあああああああ!』
『おめでたいやつ……』
『あぁ!?』
『見ろよ』
『なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?』
そう、私は無傷で立っていた。
それどころか……。
『な、なんだ!? やつの闘気量が増えてる……だと!? どうなってるのだぁ!?』
おや、おや。
彼は知らないようですね。
「あなたの闘気を吸収させてもらいました」
『闘気を吸収だと!? どういうことであるか!?』
私は説明してあげることにした。
「文字通りです。あなたの放った外力系衝気を、私が受け止め、私の体の中に取りこんだのです」
「相手の闘気技を、己の闘気にしたということか……?」
ガンコジーさんの言葉に、私はうなずく。
『ば、バカな……バカなそんな、バカな……ありえない……相手を殺すビームなんだぞ……?』
「ええ、ですが闘気であることには変わりありません。闘気で他者を治療するのを応用すれば、敵の闘気で己を治療することも……可能」
秘中の秘を打ち破られたからか、海王は呆然とした表情のまま動かない。
私が木刀を構え治すと。
『すみませんでしたぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』
海王は海底に腹を付けて、平伏した。
『もう悪さはしませんので、どうか! 命だけはお助けくださぁいい!』
おや、おや。
海王は反省してるようですね。
『おっさん、おれからも頼むわ。こいつを許してやってくれねーか?』
「おや、他者を庇うなんて珍しいですね、古竜さん」
『ん。まあ、こいつも一応同族だからよ』
「ふむ……まあ、あなたに免じて、許してあげましょうかね」
ぱぁ……! と海王が表情を明るくする。
『ありがとうございます、姐さん! 兄さん!』
『あ、姐さん……? え、ええ……なに、おまえも舎弟になろうってのか……?』
『はい! 兄さん、姐さん、どうかあっしも舎弟に! どうかぁ……!』
まあ、海王も反省したようだし、許してあげよう。
「いいですよ」
『ありがたきしあわせぇええええええ!』
こうして、私はまた古竜種を舎弟に加えたのだった。
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