09.美人エルフの呪いを解く
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
私は女王の病を治療した。
数時間後。私は女王の部屋に居た。
部屋にしつらえたソファに私達は座っている。
正面に座るのは、アビシニアン陛下。
……そして対面に座るのは私。と、左右にミーア姫と戦神バーマン。
「すごいです、宮廷医長さまが、もう完治不可能とされた病を治してしまうなんてっ!」
ミーア姫が、私の右腕にしがみついてる。
「いやぁ、さすがだぜ先生! 【エルザ】のやつ、女王陛下を見てびっくりするだろうなぁ!」
バーマンが私の左腕にしがみついている。
……どういう状況だこれは。
「剣聖様。どうか、ミーアを娶ってくださりませんか?」
「だから、それは無理だと言ってるのですが……それに、こんなおじさんと、若い子が付き合うなんて。ミーア姫が不憫です」
ねえ、と私はミーア姫に同意を求める。
するとミーア姫はニコッと笑って言う。
「愛に、年の差なんて関係ありませんっ!」
「…………」
のりのりだった。
どういうことだ……。若い子とおっさんの恋愛は成立しないのではなかったのだろうか?
「そのとおりだぜ姫!」
ずいっ、とバーマンが顔を近づけてくる。
「なあ先生……頼むよ。アタシを嫁にしてくれ」
「それは……私に勝ったらという話ではなかったのですか、バーマン?」
「それは、そうなんですが……で、でもよぉ! もう……辛抱たまらないです! 強いオスに、メスの獣人は強く惹かれてしまうんですよぉ!」
獣人は獣の習性を強くその遺伝子に残してる、らしい。
「アレクさん、どうか……わたしをめとってくださいまし」
「先生! たのむ! アタシを抱いてくれ!」
……困った。
非常に困った状況だ。
バーマンはこの国の守護神だし、ミーア姫は一国の姫。
どちらも、気軽に手を出していい相手ではない。
だというのに、向こうから、ガンガンアプローチしてくる。
断っても、引き下がるつもりも二人はなさそうだ。どうしたら納得して、手を引いてくれるのだろうか……。
と、そのときだった。
「失礼します。アビシニアン陛下! 宮廷医長さまが、お帰りなられました」
獣人の兵士が部屋にノックして入ってくる。
「エルザが帰ってきたのですね」
「エルザ……?」
「宮廷医長であり、ネログーマ二大守護神の一人です」
とアビシニアン陛下が説明してくださる。
「二大守護神……?」
「わが国最高の剣士と治癒術士のことです。四方を森に囲まれ、魔物の脅威に常にさらされてるわが国が、こうして平穏をたもてているのは、二大守護神、戦神バーマンと治癒神エルザのおかげなのです」
なるほど、凄腕の治癒術士がいるのか。
だから、兵士たちは怪我を恐れず、魔物と戦えるというわけだな。
「治癒神エルザは凄いのですよっ。瀕死の重体を負った兵士を、たちどころに、治癒してしまうのです!」
「それは凄い」
ちっ、とバーマンが舌打ちをする。
「確かにすげえエルフだけどよぉ、あいつのスカした態度が気に食わないんだよなぁ」
バーマンはエルザ様のことを、あまり好ましく思ってない様子。
……ん?
エルフ?
「エルザ様はエルフなのですか?」
エルフの、エルザ……。
いや、まさか……。そんな偶然が起きるわけがない……。
ガチャリ。
「…………」
扉が開くと、そこには、これまた目を見張るほどの美女がいた。
白い魔法使いのローブ身を包んだ、二十代前半くらいに見える女性だ。
顔は小さく、手足は驚くほどに長い。
細身だが胸はしっかりと大きい。スレンダーな美女、といえばいいだろうか。
そして、特徴的なのは左目を黒い眼帯で覆っていたことだろう。
「よぉ、エルザ。生きてやがったか」
「…………」
こつこつ……と靴を慣らしながらエルザが女王に近づいてくる。
「ちっ。無視すんじゃねえよ」
バーマンが苛立たしげに舌打ちをする。
エルザは女王……ではなく、私の前までやってきた。
「……アル」
「「アル!?」」
私は言う。
「エルザ。久しぶりだね」
「「先生 (アレクさん)が、フランクに話しかけてる!?」」
驚愕する二人。
一方で、エルザは……微笑んだ。
「!? し、信じられねえ……あの、氷みたいに冷たい女が、わ、笑ってやがる!」
冷たい女……?
「エルザ。君はここにいたんだね」
「……ええ。村を出て、ここで今宮廷医長をやってるわ」
「そうか。女王があれだけ深刻な病状でも、いまだ生きながらえていたのは、君の治癒術があったからか」
「……そんな。アルに比べたら、ワタシなんてまだまだだわ」
エルザが微笑みながら答える。
「お、おいエルザ! どーゆーことだよ!」
バーマンが慌てた調子でいう。
「エルザと先生は、一体どう言う関係なんだよ!?」
「彼女とは、昔馴染みです」
「む、昔馴染み!?」
「ええ。同じ村で暮らしていたことがありました」
私がまだ10にも満たない頃、エルザはデッドエンド村に、やってきたのである。
「つ、つまり……アレクさんの昔の女、ということですかっ?」
「違います」
私とエルザはそんな関係ではなかった。
確かに村では仲良くしていたが。
「……さぁ、どうかしら?」
「エルザ。子供をからかわないでおくれ」
ふと、私はエルザの違和感に気づく。
「左目、どうしたんだい?」
エルザの左目にはバイキングがつけてるかのような、ごつい眼帯がはめられていた。
先程まで笑っていたエルザだが、一点、暗い顔になる。
「……呪いを、受けてしまったの」
「呪い?」
エルザが眼帯をとる。
顔の左側が、石化していた。
彼女の左目は完全に石になっている。
目の周りも石化していた。
せっかく美しい顔をしてるのに、それを隠さないといけないなんて、不憫だ。
「メデューサとの戦闘でね、呪いを受けてしまったのよ」
「メデューサ?」
聞いたことがない。
「蛇の魔物よ。石化の呪いを使う、やっかいな敵だったわ。メデューサを退ける際に、石化の呪いを受けたの」
「そうだったんだね。それは、辛かったね」
村の魔法使いは、エルザにはすごい魔法の才能があると言っていた。
そんな彼女でも、解けない呪い、か。
「どうして、村に帰らなかったんだい? 困ったら、頼ってくれてもよかったのに」
彼女がメデューサから呪いを受けたのは、村を出て行ったあとだろう。
デッドエンド村には、どんな呪いでも解いてしまう呪術師がいたのだ。
「……だって、あなたと顔を合わせづらくて」
「エルザ……」
エルザが村を出て行ったのは、ハイターが村に帰ってきたときだ。
あの時、エルザは一方的に別れを告げると、出て行ってしまったのである。
おしあわせに、と一言だけを残して。
特にケンカをしたわけではないと思ったのだが。
まあ、もう過去のことはどうでもいい。
「エルザ。目を閉じて」
「え!? ……は、はい」
エルザはなぜか頬を赤らめながら、目を閉じる。
そして「……ん」となぜだか、唇を窄めて、顔をむけてきた。
私は木刀を手に持つ。
エルザの左顔面から、邪悪なる闘気が感じられた。
半透明の蛇がへばりついてる。
「極光剣。【黄の型】破魔」
私は木刀で、エルザの左顔面を軽く突く。
半透明の蛇が私の木刀に貫かれて、消える。
びき、ばき!
パキィイイイイイイイイン!
「エルザの左顔面を覆っていた石化が、解除された!?」
「すごいです! 治癒神ですら直せない呪いを、解いてしまうなんて!」
極光剣、黄の型。破魔。
闘気は生命のエネルギー。ようするに、プラスの力。
一方で呪いはマイナスの力。
そこに闘気をながすことで、マイナスを打ち消す(プラマイゼロにする)。
エルザが目を開ける。
ああ、と感嘆の息をついた。
「すごいわ、アル。あなた、また一段と剣の腕をあげたわね」
「ありがとう、エルザ」
ぽろぽろ……とエルザが涙を流す。
「……本当はね、何度もあなたのもとに戻ろうと思った。でも、こんな顔じゃ、あなたに嫌われちゃうって思って」
ああ、だから会いに来なかったのか。
「どんな顔をしていても、エルザはエルザですよ。私にとって大事な、昔馴染みです」
「アル!」
エルザは涙を浮かべながらも、それでも、笑ってくれた。
やはりエルザは笑っている方がいい。
そのままエルザは私の頬に手を添えて、そして、唇を重ねてきた。
「「な!?」」
驚くバーマンたち。私も、さすがに動揺した。
「アル、ワタシ、ワタシは、あなたのことが……やっぱり好き。言いたくても、ずっと言えなかったの。あなたには婚約者がいたから……」
「そう……でしたか」
「ええ……ごめんなさい。あなたには婚約者がいるの」
「いえ、あの。もう、いないですよ」
「……は? ど、どういう?」
「あとで、説明しますね」
「え、ええ……そうね。部屋で、待ってるわ。二人きりで、じっくり」
すると私の前に、バーマンおよびミーア姫が割って入ってくる。
「おいおい、抜け駆けはずるいぜ。先生は今夜あたしの部屋にくるのが決まってんだ」
いつの間に?
「いいえ! アレクさんはわたしの部屋にきてくださると、約束してくださりました!」
いつ、約束を?
「……そう。あなたたちも、彼を愛してるのね」
「「それはもう、心から!」」
……なんていうことだ。
転職したら、一気に、モテだした。
これが俗に言う、モテ期というやつなのだろうか。
38にして。なんとも遅い、モテ期の到来に、私は困惑するしかなかったのだった。
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