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76.トカゲじゃないよ、ドラゴンだよ



 ゲータ・ニィガ国境付近にて。

 私は兵士達とともに遠征へとやってきた。


 少し離れたところにある、小高い山にトカゲが住み着いてしまっているのだ。

 それを兵士達に退治させているところ。


 と、そこへ……。


「バーマン、エルザ、どうしました?」


 ネログーマ三大守護神、バーマンとエルザが私のそばへとやってきたのだ。

 だいぶ前から近づいてくるのはわかっていた。


 二人は結構なスピードで走ってきた。だから、何かあったのだろうと言うことは事前にわかっていた。


「先生こそ、こんなとこで何してるんだ?」

「兵士達の訓練として、遠征に来たんです」


「マジかよ! 先生、ヤバいぜ。今すぐ兵士達を避難させた方が良い!」


 ……おや? 

 避難?


「どういうことですか?」


 エルザが深刻そうな顔で私に言う。


「ゲータ・ニィガから救難要請があったの。あそこの山に、ドラゴンが住み着いていると」


 ふむ……?

 ドラゴン……?


「いや、居ませんよ、ドラゴンなんて」

「「え?」」


 バーマンとエルザの二人が目を丸くしている。

 おやおや、気づいてないようだ。


「あの山にいるのは、ただのトカゲです。その駆除に兵士達がすでに向かってますよ」

「え、え? と、トカゲ……?」


「はい。……ああ、そうか。バーマンは闘気探知が苦手でしたね。エルザはそもそも闘気初心者で、探知ができないと」

 

 だから、あの山にいる敵の強さを、はかることができないんのだな。


「安心してください。あの山にドラゴンなんて強い魔物はいませんので」

「そ、そ、そうなんだ……」


 エルザが首をひねる。


「……じゃあ、ゲータ・ニィガからの救難要請ってなんだったのかしらね」

「誤報ではないですか?」


「誤報……そんなことありえるのかしら……」


 そんな風に話し合っていると……。


「訓練を終えて、皆が帰ってくるようですよ。兵士達は全員無事です」


「そんなこともわかってしまうのね。ここから全く兵士達見えないのに」


 エルザが目をむいてる。


「ええ、闘気をマスターすれば、離れている人たちの体調だってわかります」

「闘気……万能すぎない……?」


 ほどなくして。


「「「「ただいまかえりましたー!」」」」

「お帰りなさい」


 兵士の皆さんがニコニコしながら、私の前に集まっている。

 全員怪我ひとつしていない。よし、合格と言っていいだろう。


 ……おや?


「「…………」」

「どうしました、バーマン、エルザ?」


 二人は兵士達が持って帰ってきたトカゲの死骸を見て絶句していた。


「あ、あのよぉ……先生」

「……アル。兵士達が倒したトカゲ……」


 二人が声をそろえて言う。


「「ドラゴンじゃん!」」


 ……おや?

 何を言ってるのだろう。


「どう見ても、緑のトカゲですよ」

「いや先生! こいつは緑竜グリーン・ドラゴン! A+ランクの、なかなか強敵だぜ!?」


 緑竜グリーン・ドラゴン……?


「ただのトカゲじゃないですか」

「だーかーらー!」


 するとエルザがバーマンの肩をたたいて止める。


「ちなみに、アルにとってのドラゴンってどういうもの?」

「まずしゃべります。次に体長は最低でも50メートルはあります」

「OK。わかった、わかったわ……」


 げっそり、とした表情のエルザ。

 おや、どうしたんだろう。


「アル……。あなたがドラゴンと呼んでいるそれは、【古竜】。長い年月をいき、すさまじい力を身につけた竜のことよ」

「つ、つまり……なにかい? 先生にとっては、ドラゴン=古竜ってことなのかい!?」


 ……何を言ってるのだろう?


「古竜はドラゴンでしょう?」

「いや、アル。古竜はドラゴンの【一種】よ。=でドラゴンじゃないわよ!」


 ふ、ふむ……。

 なるほど……。え?


 私がドラゴンだと思っていたのって、全部古竜だった?


「ドラゴンって……古竜以外にもいるんですか?」

「「いるよ!!!!!!!!!!!!」」


「どれ?」

「「それぇええええええええええ!!!!」」


 二人が指さす先に居るのは、体長たった10メートルの、弱っちそうなトカゲだ。


 そんな……。


「こんな弱そうなのが、ドラゴンだなんて……」


 バーマンとエルザが頭を抱えていた。

 どうやら私はとんでもない誤解をしていたようだ……。


「あ、あのワンタ君。トイプちゃん。兵士の皆さん……。実は……」


 すると兵士達が、キラキラした目で言う。


「副王様! このトカゲ、めっちゃ弱かったっす!」

「このドラゴンっぽいの、トカゲだったんだねー!」


 ああ、なんてことだ……。

 兵士の皆さんが、誤解してしまっている!


「あ、あのですね……皆さん。これは、ドラゴンらしいんです……よ?」


 すると……。


「「「うっそだぁー」」」


 兵士達が笑顔で言う。


「ドラゴンがこんなよわーいわけないですよっ!」

「そっす! おれなんてこのトカゲ、一人で10匹も倒しちゃったっす!」


 とワンタ君。


「あたしなんて100体たおしちゃいましたもん!」


 とトイプちゃん……。

 なんてことだ。私が皆さんに。間違った価値観を植え付けてしまった……!


「み、皆さんドラゴンってみたことないんですか……?」


 するとバーマンが言う。


「まともに見たことは、ねーだろうな」

「それはどうして?」

「外に居る強い魔物は、あたしが全部やっつけてたしよ。兵士達は基本、街の中の警備だけやらせてたし」


 なるほど……。

 バーマンが強すぎるせいで、兵士達は外の強い(?)魔物と戦ったことがない(見たことがない)ようだ。


「兵士達……ちょっと、強くなりすぎじゃない……?」


 エルザが呆然とつぶやく。

 トカゲ……否、緑竜グリーン・ドラゴンの死体が山のようにこんもりできあがっている。


 というか……。


「もしかして、ゲータ・ニィガからの救難要請って……」

「これのことでしょうね……」

 

 なんということだ……。


「こんなのに手こずってしまうんですね」


 ゲータ・ニィガの国防力は、大丈夫だろうか。不安になる。


「アル……。このドラゴン、ほんとは強いのよ。それがこの量、住み着いていたのよ。普通に国が滅びるレベルの危機だったのよ……」

「そ、そうなんですね……」


 我が兵士達はそんなレベルの危機を、対処できるくらいにまで強くなっていたのか……。


「兵士達をここまで強くしちまうなんて、さすがだぜ、先生!」

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱドラゴンだった。 そんでアレクの教え子みんなドラゴンに勝てるレベルか。 もう周辺国間違っても武力侵攻できんな、
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